第87話 いざ決戦へ……?
「ヤツらの狙いは国会議事堂だ」
「国会議事堂? 政府の人間を拉致しようって感じですか?」
「うむ。拉致もしくは殺害し日本中を脅しにかかるとみている。一応、この情報を流しはしたのだが」
「聞き入れてくれなかったのね」
「警備を増やすとは言っていたが、それだけで足りるとは思わん。最低でも自衛隊の兵器かAランク以上の探索者が欲しい」
「つまり、俺達だけでやるしかないって事か」
「その通り」
政府の平和ボケした対応に呆れるが仕方ない。
むしろ民間人に「敵が来ますよ!!」と言われても聞き入れる方が難しいだろう。
ま、無茶をやるのはいつもの事なんで慣れてますけど。
「で、作戦は……正面で迎え撃つしかないか」
「いくつか小細工は用意する……が、悪あがきにしかならんじゃろうな」
「全裸で止められない? 実験部隊には上手くいったし!!」
「無機物が発情するかよ」
「にぃに、突っ込むところ違う」
俺は真面目なんだが?
全裸で破壊兵器を止められるなら安いもんだと思うのだが……
あーセリアが凄い睨んでる、ごめんなさい。
「まあ全裸はBプランとして、メインの計画を練っていこう」
「やるんだ……」
使える物は使うといった所か。
俺達七人は決戦に向けて、作戦を練り始めるのだった。
そして、決戦の日が訪れる。
◇◇◇
「来たか、無名」
「父さん……」
襲撃予想地点の国会議事堂前に父さんは確かにやってきた。
だが、規模が違いすぎる。
実験部隊はもちろんの事、背後にはレギオンを何十体も稼働させており、俺たちに狙いを定めていた。
「父さんは何かを奪うことしか出来ないのか? その争いの果てに、一体何があるっていうんだ?」
「生存競争は人間の本能だ。強いものが勝ち残り、弱いものから消えていく。ただ、それだけの事」
「他人の命を奪ってでも、強い兵器を作ろうとするのは生き残る為か?」
「非情にならなければ……この世界は生きていけないのだよ」
切り捨てる事しか考えていない。
何かを手に入れるために、何かを犠牲にする。
それが当たり前で成し遂げられるからこそ、ケイゼルインダストリーという会社は成り立っているのだろう。
だけど……俺は違う。
「何かを守るために奪うのは間違ってる」
幸せとは意外と簡単に手に入るものだ。
「今の俺は少し騒がしくて、愛し合えて、幸せを分かち合える日々……それら全てが幸せで、守りたいものなんだよ」
俺にその幸せを与えてくれたのは間違いなく家族の皆。
その家族を守るために戦う。
「俺はここでケリをつける。この先の幸せを掴み取るために」
刃を抜き、自らの父親に突きつける。
宣戦布告。
子供が親に刃向かうという幼稚なものではない。
自分の”生き方”を証明するための、決戦だ。
「やれ」
レギオンが起動し、ゆっくり前へと進軍する。
『『『ピピピ……』』』
数の暴力の前に立ちはだかるのは……たった一人の探索者。
あれ、他の六人はどこに?
そう思っただろ。
実際父さんや周りの実験部隊もしらみつぶしに探していたし。
『準備OK、いつでもいけるよー♪』
「了解」
その答えをお教えしよう。
「っ!?」
ドガァアアアアアアアアン!!
突如、上空から降り注ぐ弾幕が実験部隊を包み込む。
急な敵襲に実験部隊やレギオンの陣形は崩壊し、体制を整え直そうと情報の整理に入る。
「甘いな!!」
爆発を合図に俺も無属性魔法を発動させる。
正面には敵。
だけど探知できない場所からの奇襲にも対処しないといけない。
二重の脅威に、敵は総崩れとなる。
慌てる実験部隊、混乱するレギオン。
その中で冷静さを失わない一人の男がいた。
「ケイゼルのヘリを盗んだのか?」
「その通り。テロ行為に夢中なおかげで、本社のセキュリティがガバガバで助かったよ」
実はリーダーのツテで兵器工場に侵入し、ステルス性の高いヘリを入手していた。
おまけに朝日の”遮音”で気配は消せるし、なぜかリーダーが持っていた電波をかき乱す装置のおかげでレーダーにも探知されなかった。
で、俺以外の全員はそこに乗り込んで攻撃というわけ。
「ヘリの一機くらい落とすことなど容易い……」
「残念、もうみんな降りてるんだよね」
「ほう?」
探知されないといっても、時間の問題。
いくら高性能でもヘリはヘリなので、見つかれば即大破は免れない。
だから最初の奇襲で敵陣をかき乱して、後はパラシュートで降りてくる……というのが俺達の作戦だ。
さーて、ここから第二ウェーブに行きますか。
『おや? 何やら操作が……あっ』
「どうしました?」
「リ、リーダー!? レバーが壊れてる!! 真っ二つに折れてる!!」
「え?」
一体何が……そう思った時には既に遅かった。
ヒューン……
『お、落ちるううううううう!?』
『きゃああああああああああ!!』
通信から叫ぶ声が響きわたるのと同時に、上空からヘリが勢いよく落ちてくる。
なんでこんなことに!?
と、思ったが原因に一つだけ心当たりがある。
『ヘリの操縦はだいぶ昔の事だが、まぁなんとかなるだろう!! ハッハッハ!!』
なんとかなってないじゃん!!
リーダーが自信満々だったから任せたけど、さては何にも考えてなかったな。
幸いにも中にいた皆はパラシュートで脱出しており、最悪の事態は避けられ……ん?
あのヘリ、こっちに向かってね?
「はああああああああ!? なんでこっちに来るんだよ!?」
ドカアアアアアアアアアン!!
高速落下したヘリが俺のいた場所目掛けて着地し、勢いよく爆発した。
「……」
「私は何もしてないぞ」
あっぶねぇ、ギリギリで回避できた。
父さんも俺達のおマヌケ具合に若干呆れてるし……まぁいい。
ここからが本番だ。
本当に本当の本番だ!!




