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第66話 ダンジョンブレイクの正体

『で、今回のダンジョンブレイクは全く予知が出来なかった珍しい事例としてーーー』


 不意に付けたテレビを見て一瞬で消す。

 どこもかしこもダンジョンブレイクの話題ばっかりだ。

 昨日の出来事だからしょうがないけど、もう少し明るい話題が欲しいなぁ。


 猫とか食べ物とか。


「仕方ないよー、話題性バツグンだし」


「そりゃあそうだけど……れなは大丈夫なのか? 色々思い出したりとか」


「んー、辛くないと言えば嘘になるけど、皆やダーリンもいるし大丈夫!!」 


 ニコッと笑いながら、俺の腕に抱きつくれな。 

 不意に味わう事になった柔らかさに一瞬ドキッとしてしまうが、すぐに冷静になって彼女の頭を撫でる。


「真白もー」


「あーしも〜」


「え!? じゃ、じゃあウチも」


「はい?」


 おっと? 大所帯になってきたな。


 もう片方の腕に真白。

 背中には朝日。

 そして俺の前にセリアが座る。


 恥ずかしそうにしてた癖に一番いい所座ってんな。

 という訳で美少女(一人男の娘だけど)おしくらまんじゅうが完成した。


「お、おお……」


 柔らかさと体温と甘い香り。

 そのどれもが俺の精神を狂わせる。

 

 幸せすぎる。

 こんな可愛い子達に囲まれてバチが当たらないのだろうか?

 いや、でも多分いつか天罰くだりそう。


 だったら今の内に楽しんじゃお。


「んえ? 物騒っすね……」


 と、スマホを弄っていた朝日が何かを見つけたらしい。


「どうした?」


「えっと、ダンジョンブレイクの話なんでスルーしてもいいっすよ?」


「あー、俺は大丈夫だぞ? 朝日の話だし」


「……ふへへ」 


 分かりやすいくらいニヤけてんな。

 テレビやネットニュースにいるようなジャーナリストやむさ苦しいコメンテーターじゃなくて、好きな人の話なら大歓迎だ。 


「アタシもだいじょーぶ!!」


「真白も」


「ウチも全然構わないわ」


「分かりました。では……」


 画面をスワイプさせ、最初から記事を確認する朝日。


「池袋ダンジョンの近くで闇配信者がウロウロしてたらしいんすよ」


「闇配信者? 遥斗らとは別のグループか?」


「恐らくは」


 まーたきな臭いニュースだな。

 俺と摩耶さんがかなり暴れたおかげで、最近は大人しくなっていたというのに。


「で、とある探索者が不審に思ったので声をかけた所、何故か襲われたので返り討ちにしたとか」


「つっよ」


「ちなみに返り討ちにした本人は宝石のようなギラギラした鎧を着ていたらしいっす」


「随分と派手な探索者だな……」


 宝石みたいな鎧って実用性はあるのだろうか。

 闇配信者も、そんな奴が声をかけてきたら怪しいと思っても仕方がない気がする。

 襲いかかるのは流石にどうかしてるけど。


「その探索者が話を聞いたらしいんすけど、なんでもダンジョン内に爆弾を仕掛けていたとか」


「爆弾?」


 闇配信者がダンジョン内に爆弾を?

 一体何のために?


 探索の為なら魔銃とかもっと便利なアイテムがあるし、そもそも今は目立たないように行動しているヤツらが派手な行動を取った理由が分からない。


 ……いや、待てよ。


「魔素爆弾……」


「「「っ!!」」」


 俺の発した単語にれなを除いた三人が反応する。


「魔素爆弾? 何それ」


「爆発すると魔素を周囲へ一気に散布する爆弾だ。主に毒ガスのような兵器として運用されていた」


「されていた? あれ、魔素ってダンジョン内に溜まるとマズいんじゃ」


「その通り」


 魔素をダンジョン内で放出するのはダンジョンブレイクの危険性がかなり高くなる。

 その為、魔素爆弾は兵器の強力さというより、ダンジョンブレイクを引き起こすという危険性を警戒して全世界で製造禁止になった。


 が、闇配信者を始めとした裏組織の人間がちょこちょこ作っているとウワサにはあったけど。

 やりやがったな。


「派手な話題性を生むために魔素爆弾を使ったか。あーもう、どこまで腐ってるんだよ」


「という事は、今回のダンジョンブレイクは人為的に引き起こされた可能性が高いんだ。何それ酷すぎ!!」

 

「らしいと言えばらしい。最低」


 池袋ダンジョンの近くでウロチョロしてたのも撮影していたからだろうな。

 ダンジョンブレイクで逃げ惑う人々を撮るだけでなく、騒動に紛れて人殺しだって余裕で行える。


 ネタとしては美味しいけどさぁ、人間捨てなきゃこんな事出来ないだろ。


「これが首謀者の顔写真っす」


「あー、誰一人として分かんねえ。少なくとも俺が戦ったヤツらとは違う派閥だな」


「配信者って色々いますしねー」


 画面に映し出されたのは三人の青年。

 二人は目付きが悪く、刺青も入れていて如何にも悪人といった顔。

 もう一人は割と普通に見えるが闇配信者だと分かった今は危険なオーラを写真越しでも感じる。

 こいつが一番ヤバくてもおかしくない。


 ま、知らないやつだし逮捕もされたからしばらくは平和に、 


「え……?」


 セリアが普通そうな三人目の顔を見た瞬間、声をあげた。


「嘘……でも見間違いじゃ……え?」


「どうしたんだ?」


 明らかに様子がおかしい。

 顔を青ざめさせ、全身をカタカタと震わせている。

 恐ろしさと、信じられないといった感じだ。


 彼とセリアに一体何が?


「ウチ、この人に荷物を運んだの」


「荷物を? そんな仕事があったのか?」


「ケイゼル上層部から直々に。周りに言っちゃダメだけど、簡単だしボーナスも出すからって引き受けたのよ」


 【荷物整理】の潜在スキルがあるからか?

 力持ちかつ荷物の管理に優れているセリアならその役割も問題なくこなせる。


 だけどセリアに頼む必要はない。


「不思議。運送会社に頼まずセリアに直接お願いしたなんて」


「そうなんだよな……」


 物が少なくても、運送会社に頼んだ方が安心安全に荷物を運んでくれる。

 ケイゼルは運送費をちょろまかす程ケチな企業か?

 いや、セリアには秘密かつわざわざ”ボーナスを付けて”まで依頼をしている。


 運送会社ではダメ。

 ケイゼル社員であるセリアになら大丈夫。


 そこまでして運ばせた荷物の内容。


 嫌な予感がする。


「引き渡した場所は……池袋ダンジョン近くのビルだった」


「っ!!」


 ああ、クソッ。

 何か繋がってそうな感じじゃねえか。 

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