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無自覚で【無属性】持ちの俺は最強みたいです~外れスキルを3年間鍛え続けていたら、ダンジョン配信中の亜人姉妹に襲い掛かるS級モンスターを偶然倒してしまいました~  作者: 早乙女らいか
第二章・因縁とは突然に

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第60話 ダンジョンブレイク

「待たせたわね、いつでも行けるわ」


 セリアのポーション数えが終わったらしいので、再びダンジョン内を探索する。

 とはいっても、今日の見所はだいたい終わった気がする。


 俺の縛りプレイも大体見せ終わったし、次の戦闘があっても戦い方に新鮮さを出すのは難しい。 

 

「パパ、ぎゅー」

 

 おねだりしてきた真白を優しく抱きしめ返す。


 そういえば真白がまだ戦ってなかったな。

 次は真白の番か?


 どう立ち回ろうかなー

 盾からハイジャンプして、かかと落としでもしてみようか。

 奇襲と組み合わせたら派手だし、面白そうだ。


 ゴゴゴゴ……


「ん?」


 再び物音が聞こえる。

 音だけじゃない。ダンジョン内が大きく揺れ、天井から砂埃を舞わせている。

 

 大型モンスターでも現れたか?


 でも何も感じないし、感知が得意なれなの方を見ても、首を傾げながらうーん? と唸っている。

 一応、警戒しておくに越したことは無いか。


 周りを警戒するよう全員に呼びかけ、ゆっくり前に進もうとした時、

 揺れと音が一気に大きくなるのを感じた。

 

 ドガアアアアアアアンッ!!


「「「「「ッ!?」」」」」

 

 突然、ダンジョン内に爆発音が響き渡った。


「何!? リーダーのドッキリとか!?」


「あの人は本社で会議っすよー」


「誰かが爆裂魔法でも使ったのかなー?」


「この音量で爆裂魔法なら熱風が来るはず」


 真白の言う通り、爆裂魔法を使えば音だけでなく周囲に高温の熱風が飛んでくるはず。

 この爆発も別の階層ではなく、見えない奥の方から響くように聞こえてきた。


 なのに熱風どころかモンスターの声すら聞こえない。

 爆発が起こっているのに、ダンジョンがあまりにも静かすぎやしないか?


 ズオオオオオッ!!


「っ!!」


 何だあの煙!?

 突如、奥の方から紫色の煙が現れ、風と共にこちらへ迫ってくる。

 毒性にしては紫色が鮮やかすぎるし、毒ガス系の爆弾であんな広がり方をする例は見たことがない。


「”無砲天撃”!!」


 確実に言える。

 あの煙は絶対ヤバい。


 過剰な警戒心に身体を動かされ、俺は”無砲天撃”を煙に向かって放った。

 とてつもない力でダンジョンの地形を巻き込みながら前方へ飛んでいき、正面一体を更地と化す。

 同時に殆どの煙を”無砲天撃”が巻き込むことで、俺達の周りに謎の煙が到達するのを防ぐことが出来た。


「ダーリンありがとう!!」


「あぁ、しっかし何なんだあの煙は?」


 僅かな煙がこちらに向かう。

 俺は最大限警戒しながら、手で仰ぐようにその煙を嗅いだ。

 

 匂いは無い。

 ただ一瞬だけ頭がくらっとして、同時に魔力が回復したかのような感覚があった。


 ん?

 魔力が回復?


 ということは、


「魔素……?」


「えっ?」


 魔素とは魔力をまとった空気の事だ。


 人間が呼吸する時に二酸化炭素を排出するように、モンスターは呼吸をすると魔素を吐き出す。

 魔素自体は基本的に人体への害はないが、一気に過剰な摂取してしまうと魔素中毒に陥ってしまい、錯乱状態や暴走を引き起こしてしまう。


 ダンジョン内の魔素は人間が入って呼吸をしたり、モンスターを倒して数を抑制する事でバランスが保たれているのだが、


 コメント欄

・魔素が爆発!?

・おいおい、ダンジョンブレイクかよ

・はあああああああ!?

・今すぐ行かないとなぁ、だるぅ


 爆発するレベルで魔素が広がっているという事実。


 魔素が過剰に溜まると爆発を引き起こし、その爆発によってダンジョン内のモンスターは暴走してしまう。

 そのモンスター達は過剰な魔素から逃れる為にダンジョン外へと溢れ出してしまい、街中で本能のままに暴れ出す。


 これがダンジョンブレイク。

 探索者がいる理由であり、最も避けなければいけない災害だ。

 

 あの煙の感じから、モンスターが溢れ出すのも時間の問題だろう。


「全員外へ戻るぞ!!」


 やれやれ、と頭を抱えながら来た道をUターンする。

 今日は平和なコラボで枠を閉じたかったのに、予想外のトラブルに巻き込まれてしまった。

 

 ダンジョンブレイクは余程の事情が無い限り、探索者が対処に協力すると義務付けられている。


 リーダー主催のパーティもだいぶ後回しになりそうだなぁ。


――――――――

 

「探索者の皆さんは武器を出して待機を!! 武器や道具が足りなければ協会で一部お貸しするので!!」


「おーい!! こっちだこっち!! 早く来い!!」


「くっそ!! 爆炎石がこれだけかよ!! 代わりはねぇのか!?」


 入口に戻れば、協会内がパニックに陥っていた。


 探索者達が慌てて武器や道具の手入れをしていたり、足りない装備を求めてダンジョン協会の窓口は混雑状態。

 普段見ないようなお偉いさんまで前に出て、探索者の対応に追われている。


 俺達は邪魔にならないようダンジョン協会から出て、比較的人の少ない物陰へと移動した。


「大変な事になったっすねー」


「もう少し平和に終わりたかったんだがなぁ」


「仕方ないわよ、ダンジョンブレイクは地震や台風みたいなものなんだし」


 短剣を研ぎつつ、スマホでダンジョンブレイクに関する情報を流し見する。


 俺達より奥へと潜っていた探索者曰く、既にモンスター達が入口に向かって進んでいる。

 添付されていた動画も見ると、モンスター達が興奮状態で暴れながらダンジョン内を駆け抜けており、時折弱いモンスターが巻き込まれてグチャグチャに潰されていた。


 本能というリミッターが外れている。

 モンスターが来るまで後、十〜二十分って所か。

 

「パパ……」


「ダーリン……」


「二人とも大丈夫だ。俺や皆がいるからさ」


 身体を震わせうつむく二人を胸元へ引き寄せ、そっと抱きしめる。


「えと、どうしたんすか?」


「二人はダンジョンブレイクで両親を亡くしているのよ」


「えっ、それは嫌な事を思い出させたっすね……」


 二人にとってはトラウマを呼び起こされ、大事な人が失われる喪失感が蘇ったのだろう。


 義務さえ無ければ、二人を家に返して休ませたかったのに。

 大切な二人を苦しめてしまう現実に嫌気が差し、拳に少しだけ力が入る。

 

「……ん、もう大丈夫。ありがと♪」


「怖いけど、真白もパパや皆のために頑張る」


 五分程抱きしめた後、二人は俺の元から離れ元気そうなアピールをしながら立ち上がった。

 やや無理をしている感はあるが、覚悟を決めた目付きだ。


(……俺も頑張ろう)


 必ず全員無事で家に帰る。

 二本の短剣を腰元の鞘にしまい、いつモンスターが来てもいいよう準備を整えた。


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