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無自覚で【無属性】持ちの俺は最強みたいです~外れスキルを3年間鍛え続けていたら、ダンジョン配信中の亜人姉妹に襲い掛かるS級モンスターを偶然倒してしまいました~  作者: 早乙女らいか
第二章・因縁とは突然に

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第57話 魔法無しでの戦闘

「パパがチートなのは無属性魔法と”神速”があるから。二つを縛ればパワーバランスもよくなる」


「いやいやいや!? 二つともにぃにの生命線じゃない!? 死ねって言ってるの!?」


「死ねとは言ってない。真白達もいるから大丈夫」

 

 慌てながら危険性を熱弁するセリアに対し、何故か自慢げな様子の真白。


 セリアが反対するのも分かる。

 ダンジョンにおける攻撃魔法とは生命線であり、通常攻撃は牽制や互いの距離を離す時くらいしか使わない。

 近接攻撃でも魔力を込めるのが当たり前だし。


 その攻撃魔法を封じるというのは、罰ゲームか死ねと言っているようなものだ。

 俺の場合は”神速”という攻撃、回避、フェイント……様々な用途に使える万能魔法まで封じられたが。

 

 低ランク帯ならともかく、”一応”上級ダンジョンであるAランク帯での鬼畜縛りに俺は、


「ありかもな……」

 

 意外と前向きだった。

 

 実力の上がった俺なら通常攻撃でもダメージを与えられるだろうし、受け流したり受け止めたりと魔法無しで柔軟な防御も行える。

 Sランク以上なら流石に厳しいと思うが、Aランクまでなら二人のサポート込みで何とかなるだろう。


 それに探索者殺しと戦った時、魔力を消費しすぎていたしなぁ。

 この辺で省エネで戦う事も訓練した方がいいだろう。


「パ、パイセン? 考え直してもいいんすよ?」


「いや、いけそうだからやるわ」


「あぁもう……オトプロって想像以上にヤバいわね」


 心配してくれてありがとうな、とセリア達の頭をぽんぽんと撫でる。

 さて、そうと決まれば早速準備だ。


 【竜影剣】もぶっ壊れだから封印した方がいいだろう。

 いやー、久しぶりに普通の短剣だけで戦うな。

 どこまでいけるか楽しみだ。


 コメント欄

 ・こいつ、楽しんでね?

 ・死ぬのが怖くないのか?

 ・流石はべ太郎

 ・これがハーレムの力か


 何やら不名誉な力で俺が活気づいてると勘違いされてるがな。

 ただの好奇心ですよ。 


「ではでは、ダーリンはこれまで通り前をお願い!! いつも以上にアタシ達の存在が大事だから、頑張ろうね真白ちゃん!!」


「ん、パパは真白が守る」


「ありがとう。二人というか、みんな俺が守るから安心してくれ」


「縛りまくってるハズなのに、どうして頼もしいのかしら……」 


「不思議っすよね~」


 という訳で再び探索が再開。

 

 俺が前衛。

 真白が俺より一つ後ろに立ち、そこに隠れるようにれながいる。

 宣伝部の二人は更に後ろからついて行きながら周りを警戒していた。


 後ろの方は四人に任せつつ、俺は前衛に集中した方がよさそうだな。

 いつも以上に神経を研ぎ澄まさなければ。

 魔法でゴリ押しという安直な防御も取れない以上、一つの行動が命に関わる。


 Aランク帯でこの緊張感を味わえるのは結構楽しいな。


「笑ってるっすよ……」


「笑ってるわね……」


 っと、いかんいかん。

 好奇心が顔に出ていたようだ。

 気を引き締めねば。


「っ!! 天井にモンスター!!」


「グルルッ!!」


 突然、天井から気配を感じ、素早く後方へと回避を行う。

 すると俺がいた位置を狼型のモンスターが爪を立てて襲っており、ドゴォン!! と激しい音と共に地面に小さなクレーターを作っていた。


「スパイダーウルフか……」


 口や足元からネバネバした液体を垂れ流し、鋭い牙をギラリと光らせる。

 壁を這い、糸を吐き出す、まるで蜘蛛のような特徴を持つ狼だ。

 

 目の前にいるのは一体。

 だが奴らの習性と特徴を考えたら……


 神経を更に研ぎ澄ませ、スパイダーウルフの周辺を探る。


「もう二体隠れてるな……」


 天井に一体。

 奥の岩陰に一体。


 気配と姿を隠し、潜んでいる。


「流石ダーリン♪ アタシでも集中しないと気づけなかったよ」


「え!? 隠れてるのに分かるの!?」


 そんな気配感じないけどなー? 

 と、チャームポイントの猫耳をピクピク動かしながら周りを探るセリア。


 スパイダーウルフは基本、群れで行動する。


 狩りの時は一匹だけ姿を現し、ある程度戦って相手を消耗させた後に残りが奇襲を仕掛ける。

 姿を現しているスパイダーウルフは陽動だろう。


「俺が前線で大きく動き回る。れなは隙を見て射撃で援護、真白は宣伝部の二人を守ってくれ」


「「了解」」


 だったらその作戦にのってやろうじゃないか。

 俺が前方へ駆け出すと、スパイダーウルフは口から糸を吐き出して反撃を開始した。


「はっ!!」


 糸は正面に真っ直ぐ伸びる単調な攻撃。

 俺は身体をひねって回避を行い、更にスパイダーウルフへと近づく。

 

 そして攻撃可能範囲に入った瞬間、短剣を勢いよく前へ突き出した。


「ガウッ!!」


 俺のシンプルな攻撃に対し、スパイダーウルフは素早く後ろへ下がって回避。

 回避した際、スパイダーウルフの身体が一瞬だけ宙に向いたのを確認すると、俺は逃げた方向へ勢いよく短剣を投げた。


 攻撃に次ぐ攻撃。

 モンスターでこの素早い動きに対応出来るヤツはそうそういない。


 だが、流石Aランクと言うべきか。

 高速で迫る短剣に対し、宙に浮かぶスパイダーウルフは口から糸を吐き出した。


 短剣が糸に絡まり速度が落ちる。

 やがてスピードを失った短剣が重力に押され、地面へと落下してしまった。


「にぃにの武器が……!!」


 確かに俺が使っていい武器は短剣のみだ。

 その唯一の武器がネバネバの糸に絡まって地面にくっついている。


 ま、そこまで計算内だ。


「おら!! もっとこい!!」


 スパイダーウルフに声をあげ、煽るように威嚇する。

 獣の本能が反応したのか、スパイダーウルフは怒りと共に咆哮をあげ更に糸を吐き出し続けた。


「ガォオオオオオ!!」

  

 球体状の糸が連射される。

 ほぉ、結構器用な事が出来るんだな。


 俺はなるべくスパイダーウルフから距離を取りながら、球の回避に専念した。

 球は早いが、別に曲がったり加速に変化がついてるわけでもないのでかわしやすい。


 素早くかわし続け、スパイダーウルフとの距離感に気をつけながら戦う事約二分。


 気づけば周囲がネバネバの糸で包まれていた。


「あれ? 炎魔法で焼かないんすか?」


「そう思ってたんだけど、ダーリンには考えがあるみたい」


「え?」


 流石、れなは察しがいいな。


 俺だって防戦一方な訳じゃない。

 ちゃんと対策も考えてある。


 糸で地面が埋めつくされ、逃げ場所を失った俺に対しスパイダーウルフがニヤリと笑う。


 さーて、そろそろ始めようか。


「はぁ!!」


 俺は壁に向かって勢いよくジャンプする。

 壁に着いた瞬間、素早く蹴りを入れることで穴を開け、少しの間掴まれるよう場所も生み出して。


 こいつ、逃げ場所を無理やり作ろうとしたんだな。


 そう判断したスパイダーウルフが俺に向かって飛び込んだ。

 ヤツにとって壁や天井は足場。

 一方で人間の俺にとってはただ滑り落ちるだけの壁。


 圧倒的にスパイダーウルフの方が有利だろう。


「にぃに!!」


 だが、お前の行動は既に読めている。

 逃げ場所が少なくても対処は簡単だ……!!


「ガゥ!?」 


 俺は壁を軸にその場で反転し、宙に浮いた。

 予想外の回避を前に、突進してきたスパイダーウルフの攻撃は外れ、無防備な姿を晒してしまう。


 その隙を逃さず、俺は空中でスパイダーウルフの背中に思いっきり蹴りを喰らわせた。


「オラァ!!」


 ドガァン!!


 強い衝撃と共にスパイダーウルフが地面に叩きつけられる。

 相手はAランクモンスター。

 ただの蹴りだけではダメージは入らないだろう。


 しかし思い出してほしい。

 ヤツが叩きつけられた地面、どうなってました?


「ガゥ……ガゥ……!!」 


「あ!! 動けなくなった!!」


 ネバネバの地面に叩きつけられたことで、スパイダーウルフは身動きが取れなくなってしまった。

 もがけばもがく程、糸は体に絡みつきより強固になっていく。

 狙い通り、上手くいった。


「「ガゥアアアア!!」」


 が、身動きが取れないのは俺も同じ。

 空中という自由のない場所を狙って、隠れていた二匹のスパイダーウルフが姿を現し俺に襲いかかった。


 俺の全身を噛みちぎろうと、鋭い牙が向けられる。

 数秒も経てば俺は大量の血を吹き出しながら身体をグチャグチャにされてしまうだろう。


「任せて、ダーリン♪」


 そんな事は彼女が許さない。

 もう一人の戦闘員が指銃を構え、スパイダーウルフへとターゲットをロック。


「バーニングショット!!」


「「ガゥアアアアアアアア!?」」


 灼熱の火炎弾が二発放たれると、スパイダーウルフの身体は一瞬の内に焼却された。

  

 ミッションコンプリート。

 縛りプレイも案外悪くないな。

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