第56話 コラボのお時間です
「いよいよだな……」
今日は待ちに待ったコラボの日。
緊張……というより、無事に終わるかという不安の方が大きいが。
ま、なんとかなるだろ。
機材や武器の準備を整えながら、俺達五人は配信開始時間になるまでダンジョンの入り口近くで待機する。
「ウチらがAランクダンジョン……かなりハードルあがったわね」
「でもオトプロはSSランクダンジョンに行ってたっすよ……マジヤバい」
「その辺はダーリンのおかげかな?」
「ん、パパは強い、最強」
配信慣れしている二人は割とリラックスしているようだ。
一方で宣伝部の二人はレベルの高さに驚いており、早くも顔に青さを出している。
普段は潜るとしてもBランクダンジョンが中心らしいからな……いきなりAランクというのは少し酷だったかも。
まぁ二人の潜在スキルを見た感じ、Aランクでも通用するだろうし俺達のサポートもある。
別に全てを一人でやるわけじゃないのだ。
皆でやれば大丈夫。
「よし、配信時間になったな……行こうか」
「「「「うんっ!!」」」」
こうして俺達はAランク……池袋ダンジョンへと足を進めた。
ーーーーーーーーーーー
「やほーい!! オトプロの夢街れなでーす!!」
「やほーい。オトプロの夢街真白だよ」
「やほーい。オトプロの音梨無名でーす」
ダンジョンの中に入り、配信開始ボタンを押すと俺達はカメラの前でいつも通りの挨拶をする。
「今回の配信だけど、なんとゲストが来てくれたよー!! ではどうぞっ!!」
バッと手を動かし、カメラが宣伝部の二人を映し出す。
そういえば、二人ってどんなあいさつをするんだろう?
前見た時は大体が切り抜きだったし、よく知らないんだよな。
「水嶋セリア、ここに参上!!」
「夕暮朝日、ここに見参」
まさかの名乗り口上!?
配信だから、派手で目立つ方がありなのか……?
「「せーのっ」」
タイミングを合わせ、二人同時に空中へ飛び上がりくるくる回転する。
そして地面に着地したと同時に、
「「我ら、宣伝部!!」」
全身を使ってポーズを決めた。
「「「おおー」」」
思わず拍手。
名乗りというのはやや幼稚なイメージがあるが、堂々とした姿によって凛々しい印象を与え、むしろ二人の魅力を引き立てているようにも見える。
俺も男だからか、素直にかっこいいと思った。
「これ毎回やらないといけないのよね……」
「リーダーの発案ですから仕方ないっすよ〜実際好評ですし」
あ、やっぱあの人が絡んでいたのね。
もしかしてリーダーが登場したら後ろが爆発とかするのだろうか?
ありそうなのがリーダーの凄い所で俺は実際に見てみたいと思った。
そんな考えをセリアは察したのか、目を細めてじとーっと睨みながらこちらに戻ってきた。
経験済だったのね、残念。
コメント欄
・おおおおおおお!!
・セリアちゃんと朝日ちゃんだ!!
・いつもの名乗り助かる
・このコラボ神すぎ!!
コメント欄を見る限り、今回のコラボ相手は好評みたいだ。
普段の配信とはまた違う雰囲気のコメントが流れてきており、まるで違う場所に来たかのような感覚だった。
・今度は魔法少女バージョンも是非!!
「魔法少女?」
「そ、それだけは絶対嫌!! もうやんない!!」
どうやら別バージョンもあるらしい。
気になるなあ……後でこっそりアーカイブを確認しよう。
「今回は宣伝部の二人がアタシ達のダンジョン配信に密着するよ!!」
「たまに戦闘に出すから、楽しみにしてて」
「やっぱウチらもやるのね……」
「俺達がカバーするから大丈夫だって」
そんなこんなでダンジョン配信が始まった。
最初は軽くトークや質問に答えながら、ダンジョン内を散策する。
人数が多いせいか、音や声がいつも以上に反響している。
ピクニックにでも来たみたいだ。
「そ、そういえばにぃにってSSランクダンジョンに潜ったらしいけど、怖くなかったの?」
「んー……ない事はないけど二人がいるしな。俺が前で頑張らないと、二人を守れないし」
「お、おぉ……流石パイセンっすね」
実際、役割的にも俺が前線で戦わなければあっという間にパーティは崩壊する。
俺が”神速”などでかき乱しつつ、後ろかられなと真白が援護をし、隙を見せたら一気に畳みかける。
一応タンクなら真白もいるが、本職ではないのであくまで補助的なもの。
基本はれなに対する攻撃を守るのが主だし。
で、色々考えた結果、俺が前に出るのが一番なんだよね。
「コォオオオ……」
「クォオオオ……」
「お、早速出たな」
話しながら進んでいると、目の前に二匹の狐型モンスターが現れる。
バーニングフォックスか。
全身から炎をメラメラと出し、俺達に向かって鋭い睨みを効かせながらジワジワ迫ってくる。
確か三匹まとめて相手したこともあったなぁ……懐かしい。
「バ、バババ……バーニングフォックス!?」
「流石Aランク……恐ろしいっすね」
ふむ、二人にとってはこの威圧感が恐怖になるらしい。
バーニングフォックス達も、明らかに実力が劣っているだろうと宣伝部の方に狙いを定めているし。
どうすれば俺達をかいくぐれるか。
どうすれば素早く二人を倒せるか。
Aランクともなると本能のままに暴れるだけでなく、知能を使ってずる賢い戦いもする。
「なら……」
二人を安心させるべく、俺が相手をしよう。
手元に無属性の魔力を集め鋭い短剣にした後、バーニングフォックスに向かって軽く投げた。
「”跳剣”」
ヒュンヒュン!!
ズバズバッ!!
手元を離れた瞬間、”跳剣”はバーニングフォックスの首元へ瞬時に近づき、悲鳴を上げる間もなく首を斬り落とした。
「「え……?」」
「二人ともそこまで身構えなくていいよ。さ、いこっか」
落ちた魔石と素材を回収した後、再び前に歩き出す。
うーん、昔に比べてかなり手短に倒せるようになったな。
俺の魔法は殲滅が得意だし、更に磨き上げる事で後方の負担も軽くできるだろう。
ふと、足音の数が少ない事に気づいた俺は後ろを振り向く。
「え、Aランクってあんな簡単に倒せるものなんすかね……」
「わっかんないわよ……これが今のダンジョン配信の普通かもしれないし……」
バーニングフォックスが倒された所でぶつぶつ呟いている。
二人ともカメラの録画を見つつ、これが現実か夢かどうかを確認する為、お互いの頬をつねり合っている。
Aランクが秒殺だもんな……二人からしたらありえない光景なのだろう。
一方のコメ欄でも
・慣れた
・慣れるな
・冷静に考えておかしい
・やっぱイカれてんだろ
うん……常識外れなんだね。
「ねぇ、ダーリン」
「ん、どうしたれな?」
「このままだと、取れ高まずいかも?」
「え? ……あ」
そうか、俺達のレベルからするとAランクは少し弱い。
秒殺しまくるのは最初ならいいが、時間がたつにつれて視聴者も飽きていくだろう。
どうしよう……れな達を前に出すとか?
それだと俺のすることがなくなるし、うーん……
配信映えについて頭を悩ませていると、真白が俺の服の袖をちょいちょいと引っ張った。
何か策があるらしい。
「パパの攻撃魔法と”神速”を縛るのは?」
「「「「え?」」」」
その発想はなかった。




