第52話 これがサービスですか
「真白も洗う」
「あ、どうぞどうぞ〜♪」
真白に椅子を譲ると、朝日は俺がいる浴槽へと入ってきた。
気持ちいい〜とリラックス状態のようだが、今はそれどころじゃない。
隣には妙に色気のある男の娘。
目の前には愛しくてセクシーな彼女。
目のやり場に困る……助けてくれ。
(こう見ると真白って凄くエロいよな……)
朝日と比べると、真白は女の子だからか柔らかな脂肪が多い。
特に胸元は顕著で、丸みを帯びたずっしりとしたものが垂れ下がっており、真白もよいしょと持ち上げながら隅々まで洗っている。
ブラジャーというものがないからか少し動くだけでぷるんと動く。
これが生の……と思わずゴクリと喉を鳴らす。
で、そんな俺をニヤニヤした顔の朝日に見られた。
おいやめろ。
「てか朝日と真白はいいのか? 一応異性同士だろ?」
「ん、なんか異性って感じがしない」
「あーしはそもそも女の子に興奮しないっす」
ていう事は動揺してるのは俺だけか。
朝日くらいは俺の気持ちを分かってくれると思ったんだけどなぁ。
「れなちとセリちゃんはどうしたんすか?」
「二人は喧嘩中。風呂場で行為に及ぼうとする姉さんを絶対許さないと阻止している」
「何してんだ……」
相変わらずだなーと思わず苦笑い。
その隙を見て真白は風呂に入ったとの事。
朝日はスルーなの?
と、心の中で疑問に思ったが一旦保留で。
(あの二人相性いいよなぁ)
れなは一応友人を招いているというのに平常運転で突撃しようとするし、セリアもセリアで振り回されながら彼女に刃向かっている。
この場面を配信で流したら結構盛り上がりそうだ。
下ネタエロネタ大好きなれなに対して、エッチな事は許さないセリア。
オトプロのリスナーはれなが振り回す姿を好んでいるし、二人の絡みは好意的に受け入れてくれるかも。
「んしょ……パパ、隣いい?」
「あ、あぁ……大丈夫だ」
と、色々と考えていると真白が洗い終わったらしく、俺の隣に入ってきた。
この家のお風呂は結構大きく、三人が入っても意外とスペースがある。
ただ身体の密着からは避けられないので……
「パパ……♡」
「うぉ!?」
むにゅ
真白がさらに近づき、豊満な肉体を押し付けてくる。
ここで甘えモードはマズイって!!
朝日もいるのに色々と大変な事になっちゃう!!
「や、やけに積極的だな……嬉しいけど」
「今日はパパ、大変だったから……いっぱい癒したい」
「あぁ……」
ダンジョンと、例の兄貴の件だろう。
真白なりに色々気を使ってくれたんだな。
お礼も込めて優しく撫でると、真白は更に身体を密着させてきた。
「お、おぉ……まっしーも結構大胆なんすね……。」
「真白は結構甘えてくるかな? こう、抱きしめたりとか撫でられるのが結構好きみたいで」
「ん……♡」
喜ばせたい気持ちと気を逸らしたい思いを半々に抱えながら、真白を愛で続ける。
その様子を朝日は顔を赤らめながらじっと見てくる。
人にイチャイチャしてる所を見られるのは、少し恥ずかしいな……
「……」
「へ? ま、まっしー?」
と、何やら真白が朝日に視線を向けている。
何か気になる事でもあるのだろうか?
「朝日はパパに甘えないの?」
「え?」
「は……!?」
真白が会ったばかりの子の名前を!?
って今はそこじゃない!!
何で朝日が甘える話になった!?
朝日もいきなりすぎて、顔を赤くさせながら首を傾げているし。
「ど、どういう事だ、真白?」
「朝日はずっとパパに甘えたそうにしてた。だから朝日はパパに甘えるべき」
「い、いやいやいや? あ、あーしは別にそういうのは……」
どうやら真白は朝日の願いを叶えたいそうだ。
甘えん坊な者同士、何かを感じとったのかもしれない。
朝日も顔を俯かせながらチラチラと俺の方を見てくる辺り、あながち間違いじゃなさそうだし。
「パ、パイセン? 男の娘のあーしに甘えられて嬉しいんすか……?」
作り笑いをしながら俺から少しだけ距離を取る朝日。
「ふむ……」
改めて朝日を確認する。
女性的な顔立ちに毛先までつやつやの赤い髪。
身体つきこそ女性に比べたら少し細身だが、タオルで隠れているのでそこまで気にならない。
オマケに恥ずかしそうにすると手で口を抑えたり、長い髪を指先でかき分ける仕草が、男性らしさを微塵も感じさせなかった。
あれ、気にする方がおかしくね?
男なのに……!! とか最初は思ってたけど、よくよく考えれば女性のように可愛い子がたまたま男だっただけであって……
「いいぞ?」
「へ?」
俺が朝日を受け入れるのに、迷う理由はなかった。
「ほ、ほんとにいいんすか?」
「勿論」
自信たっぷりに答える。
可愛いは正義であり、全てを超越する。
何故か暇つぶしに読んでいたネット記事の内容を思い出す俺。
あながち間違いでも無さそうだ。
「こ、こんなの……嬉しすぎますよ……」
目をうるうるさせながら俺の肩にぽんと頭を乗せる朝日を俺は優しく撫でた。
途中、真白が甘えたアピールしてきたので、空いた手を真白の頭に乗せる。
両手に花とはこの事か……
「流石パパ。口説きの達人」
「その不名誉な二つ名はやめてもらおうか」
そんなつもりは無い。
ただ素直に伝えているだけだ。
「じゃ、じゃあ……」
上目遣いで俺を見ながらゆっくり身体を俺に近づける。
(あれ?)
この時、俺は大事な事を忘れていた。
待って、今の俺たち裸じゃん。
真白にくっつかれただけで昇天しそうになったんだよ?
この状態で朝日も甘えてきたら……
「し、失礼するっす……♡」
あああああああああああああ!!
真白とは違う硬さと柔らかさの混じった感触が、俺の腕に!!
ヤバい!! 刺激が二種類になった!!
けどもう遅いぞ!!
「パパ……♡」
そして真白も再び俺に身体を!!
左右で違う感触を堪能する中、理性を保とうと身体を震わせながら必死に耐える。
確かに幸せだ。
でも姉妹と付き合って日が浅く、刺激への耐性はそこまでついていない。
身体を重ねてはいるが、今は朝日やセリアを客として招いている最中。
本能で淫らな行為に及ばないよう、必死に自分を抑えつけていた。
「パパ苦しそう……もっと甘えないと」
「え? そ、そこまでするんすね……じゃあ……」
ポチャッ
ポチャッ
ん? 何か水に落ちる音がした?
この辺で水なんて、風呂しかないよな?
俺は頭を下げて浴槽全体を見回す。
するとタオルが二枚、水面に浮いていた。
何故タオルが?
最初からこんなのあったかな?
ていうか、何故か両腕に当たる感触が少し変わったような……
待てよ?
「まさか二人……」
今、顔を上げたらダメな気がする。
正確にはダメじゃないけど、意識がほぼ確実にアッチに飛んでしまうだろう。
二人がやらかした事を察しつつも俺は頭を下げ続け、知らないフリでこの状況を乗り切ろうとしたのだが。
「パパ?」
「パイセン?」
「あっ」
俺の視界に二人の姿が映る。
この風呂は入浴剤なんて入れておらず、透明な水を通して二人の身体を隅から隅まで映し出していた。
肌色一色で隠された所までが俺に……
知ってた、うん。
二人が多分裸になったんだろうなっていうのは。
だけどね……お兄さんには少し刺激が強すぎるんだ。
「ガクッ……」
「え?」
「パパ……?」
そこから先の記憶はない。




