表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/90

第34話 決戦①

「おやおや、どうしましたか? 攻撃が当たっていませんよ?」


 一体どうなってるんだ!?

 急にあいつの身体がスライムみたいな水になって、攻撃をすり抜けたぞ!?

 

 人とは思えない現象に動揺しつつも、俺は”鑑定”で遥斗の能力の詳細を探った。


【液状変化】

自身を液状のスライムのような身体に変化させる。

このスライムはコア以外でダメージを受けない上、攻撃を吸収する。

液は複数の毒で構成されており、霧として噴射する事で状態異常を与える事も可能。

推定ランク:S


「Sランク……!?」


「私の潜在スキルを見ましたね。ですが、対処は不可能だと思いますよ?」


 スライム化した遥斗が自由自在に飛び回る。


 速度は俺の方が上だが、防御面では相手の方が圧倒的。

 物理も魔法も全て無効化する。

 そんな相手にどうダメージを与えれば……


「考え事をしていては勝てませんよ」


「っ!!」


 反射で”神速”を発動させ距離を取る。

 しかし、その行動を先読みされてしまい、遥斗はスライム化した身体から霧のようなモノを噴出した。


「ゲホッ……なんだこれ」


「”パラライズミスト”」


「っ!! 身体が……」


 どうやら麻痺効果のある霧らしい。

 遥斗の魔法は状態異常系のミストが中心みたいだ。

 

 この密室……モタモタしていたら部屋中が霧で充満してしまう。

 既に身体が痺れ始めているし、早めに対処しなければ。


「”エアストブラスト”!!」


 無属性魔法で霧を全て吹き飛ばす。

 ひとまず安心、と言ったところか……


「そう来ると思いましたよ」


「っ!? また近づかれ……」


 が、そのミストを煙幕に遥斗は俺へ急接近していた。


「”ミックスミスト”」


「ぅ……ゲホゲホッ……!!」


「からの……オマケです」


 カラフルな色の霧が俺の顔面目掛けて勢いよく噴射される。

 そして俺が怯んだ隙に……ダァン!! と銃声が響き渡った。

 

 腹部に弾が命中し、俺の体は勢いよく吹き飛ばされた。


「っ……ピストルの次はショットガンかよ」

 

「番崎さんにいい物を渡すワケないでしょう? ま、彼は音梨さんを倒す上で、十分な情報を与えてくれましたが……」


「最初から戦わなかったのはそういう事か……見殺しにするつもりで」


「人を知るのは大事なことですよ?」


 不意の突き方、気配の消し方、潜在スキルの効果的な利用方法……


 モンスターとは違う、対人戦に特化した戦い方に俺は苦戦していた。

 経験の差でここまで開くとは……力任せでは勝てない相手だ。


 だったら……


「俺も”学ばせて”もらおう」


「ほお?」


 新しい手を試し続けるだけだ。


「”剣山”!!」


「地面から剣が……ですが、当たらなければ意味はありませんよ?」


「地面にはいられないだろ?」


 剣の地面をわざわざスライムで動く理由はない。

 埋め尽くされている剣に、コアが当たる可能性があるからだ。

 

 最も、どれがコアなのかは全くわからないが……


 とりあえず、移動先は制限出来た。


「”跳剣”……”複製”……」


 跳剣を大量に展開する。

 そして、


「いけ」


 空中に漂う遥斗に向けて一斉に射出された。


「何をしてるんですか? 弾幕だろうと私には通じませんよ」


「数打てば当たるって言うだろ」 


「無策ですか……限界が近づいてきましたね」


 ズバババババッ!!

 ”跳剣”によりスライムがバラバラに刻まれていく……が、効果はない。


 いくらばらまいた所で当たるワケではない。

 魔力の無駄遣い。

 誰もがそう思うだろう。


(右、左……ん? 右斜め下が怪しいか?)


 俺は遥斗の動きをじっくり観察していた。

 弾幕の効果がないとはいえ、弱点であるコア付近のスライムを守らない筈がない。


 ヤツの動きから”違和感”を見つけ出すんだ……


「何か考えがあるみたいですが……そうはさせませんよ」


「くっ!! 相変わらず魔銃は厄介だな……!!」


「あらゆる武器の頂点に君臨していますから。当然です」


 ダァン!! ダァン!! ダァン!!


 じっくり立ち止まらせてくれる程、戦場は甘くない。

 遥斗はスライム化した身体を生かして再び急接近し、ショットガンを連射し続けた。


 ギリギリ”神速”で回避は出来るが……時間の問題だな。

 後もう少しなんだけど……!!


「見えた!! ”影隠し”!!」


「っ!? 姿が……!!」


 高速ではない、本当の意味で”姿を消す”

 ”影隠し”により、気配も魔力も全てシャットダウンし、目標の場所へと近づいていく。


 効果時間は約5秒。

 その間に次の一手まで準備を整える。


「逃げたワケではないでしょうし……まさか!!」


「わかったんだよなぁ!! ”双演乱舞”!!」


 大量の”跳剣”を解除し、二刀流魔法へと移行する。

 2つの剣が眩い光を放ち始め、刃が遥斗の身体の元へと連撃を喰らわせる。


 狙うは……細かく刻まれたスライムの中で、僅かに逃げる姿勢を見せた一つのみ!!


「はぁああああああああああああ!!」


「ぁああああああああああああ!!」


 ズババババババババッ!!


 斬り裂かれる度に遥斗が悲痛な声で叫びをあげる。

 振れば振る程、速度が増す斬撃が、たった一つの小さなスライムを斬り刻む。


「はぁ!!」


 やがて攻撃に耐え切れなくなり実体化した遥斗の身体に、俺は渾身の一撃を与えた。

 二つの斬撃が身体を斬り裂き、その勢いで地面へと叩きつける。


「ぎゃあああああああっ!!」


 オマケに吹き飛ばした先の地面には”剣山”がびっしり敷いてある。

 剣と追加ダメージで更にマシマシだ。


「はぁ……はぁ……」


 流石に疲れたな……

 効果が分からない状態異常の霧と、ショットガンのダメージ。

 

 過酷な状況に慣れているとはいえ、かなり堪えたぞ。

 懐からポーションを取り出してぐいっと飲み、”剣山”の上に倒れ込んだ遥斗に話しかける。


「降参するなら今の内だ。勝負はもうついただろ」


「かなり堪えましたね……あまり美しくないので、奥の手は使いたくなかったのですが……」


 懐からリモコンのような物を取り出し、ボタンを押す。

 一体何を……


「真のフィナーレは私のものですよ?」


「っ!?」


 ドォン!!


 突如、轟音が鳴り響いたかと思えば、


「は……?」


 俺の腹部が何かに貫かれ、勢いよく血を流していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ