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第33話 VS番崎

「盛り上がってきましたね……っと、その前に」


「っ、壁が……」


 遥斗が手下にくいっと合図をすると、     

 ゴゴゴゴ……っと地面が揺れ、周囲を囲うように魔力の壁が形成された。


「逃げ出されては困りますからね……魔防耐性のある壁を用意させて頂きました」


「最初から使っておけよ……俺達に侵入されたらダメだろ」

 

「いえいえ……獲物が増えるのは喜ばしい事ですので」


「……そーいうことか」


 どうやら心の底から殺人を楽しみたいらしい。

 二人を殺すという目的より、敢えて俺達を招き入れて皆殺しにしようとする辺り性格が悪い。


「いくら魔防って言っても限度はある。さっさと終わらせるぞ」


「随分と自信があるみたいですね……番崎さん!!」


「おうよぉ!! さっきはよくもやってくれたなぁ!?」


 威勢のいい声と共に炎の鞭が襲いかかる。

 右足辺りを狙って伸びる鞭を俺はジャンプでかわし、”神速”を利用した空中ジャンプで逆に距離を詰める。


「いっ!? そ、空を飛んだぁ!?」


「”無影斬”」


「斬撃もはええ!! 避けられ……」


 断末魔すら許さない高速の斬撃が、番崎の腹を切り裂いた。


「が……はっ……」 


「ふむ、その速さは厄介ですね」


「番崎は倒せるな……けど問題は」


 先程から冷静に戦況を分析している、遥斗だ。

 番崎がいうことを聞いてる辺り、あいつの実力はそれ以上であることは間違いない。


「よそ見してんじゃねぇ!! ”操炎”!!」


「はぁっ!!」


 自由自在に動き回る炎の鞭がいくつも伸ばされる。

 【炎帝】による炎操作は高度なもので、意識さえあれば獲物をどこまでも追いかける。

 だが、かわせないスピードではない。


「ふっ!!」 


「なっ、また消えた!?」


 俺は”神速”でフェイントを仕掛け、番崎の”操炎”を振り切ると、番崎の元へ急接近する。


「このぉ……!!」


「っ!!」


 バァン!!


 二度も同じ手を喰らう程、番崎も甘くないらしい。

 腰元のピストルを素早く取り出すと、俺が攻撃を仕掛けた正面へ弾丸を放った。


「へへへ……ようやくかすったぜ」


 危うく回避したとはいえギリギリだった。

 高速の銃弾が頬をかすめ、赤い雫が下にこぼれ落ちていく。

 

 なんだあの速さは。

 魔法や弓とは段違いのスピード。

 すり抜けた先にあった、魔防耐性の壁に深い弾痕をつけるほどの威力。


 これが禁止された魔銃の力って事か。


「いいだろぉ? 遥斗がプレゼントしてくれたんだ。威力もスピードも最高だぜ」


「そこまで手を汚してでも、力が欲しかったか?」


「あったり前だろ!? 力があればみんな俺様に従う!! 俺の力に怯えているヤツらを見るのが大好きなんだよ!! 勿論、お前もな?」


 完全に腐りきってる。

 自らが追い詰められてもなお、根本にある愚かな考えを捨てる事は出来ないらしい。


「この銃でさ、あの亜人共に試し打ちしたんだ。そしたら鞭より痛がってよ!!」


「……」


「身体をプルプルさせて可愛かったぜ……まるで子犬みたいでさぁ!!」


 この感情をなんて表現したらいいのだろうか。

 怒り、憎しみ、嫌悪、軽蔑、殺意……


 あらゆる負の感情が心に溜まっていく。

 二人が苦しむハメになったのは何故だ?

 

 誰が?

 何のために?

 

 ……そうか、分かったよ。

 全てをぶつけるべく一歩を踏み出す。

 

「どうだ? アーカイブに残ってるから後で……」


「……な」


「あ?」


「もう……動くな」


 刹那、無属性の拳を番崎の顔面に喰らわせた。


「がっ……こ、ここここいつぅ!!」


「まずは顔……」


 俺は決めた。

 徹底的に番崎を痛めつけると。


 二人が受けた仕打ち以上の痛みを、こいつに与える。


「次は足……」


「はっ!? あああああああああっ!!」


 番崎の両足を短剣の二刀流が襲い掛かる。

 ズババババッ!! と切り裂く音が響く度に、大量の傷と共に出血を引き起こす。


 やがて番崎の足は使い物にならなくなり、強制的に地面へと倒れ込んだ。


「全身……」


「ぐぎゃあああああああああっ!!」


 攻撃は終わらない。

 先ほどの斬撃を全身に向けて放つ。


 終わらない斬撃。

 止まらない叫び声。


 番崎はもう限界だろう。


「おい遥斗!! こいつ全然動きが遅くならないぞ!?」


「”身体抑制剤”は周囲に散布していますが……注射じゃないと効果が出ないのですかね?」


「身体抑制?」


 動きを止めるとか言ったが……

 

 そういえば、れな達は妙に身体が動いていなかった。

 重傷を負っているから、と言ってしまえばそれまでだが、やられ方があまりにも一方的すぎる気がしたのだ。


 恐らく、遥斗が何かを仕掛けたのだろう。

 じゃあ俺に効果がないのは何故かって話にはなるが……


『なーに、元気になる薬じゃよ』


 あぁ……そういう事か。

 あの時、摩耶さんが飲ませたのは薬物耐性を得る為の薬だ。

 

 対人戦に特化した探索者殺しとの戦いに向けて、魔法以外の対策をしてくれたのか。

 謎は解けた。


「最後は……」


「クソザコカッスにやられてばかりじゃねえぞおおおおおお!!」


「っ!!」


「”過剰爆炎”!!」


 最後の狙いを定めて攻撃を仕掛けようとした時、番崎が広範囲の炎を展開した。


「どうだぁ!? 炎の渦と弾と鞭の総攻撃!! 避ける場所は一ミリもねぇ!!」


「……」


「オマケに銃も全弾発射してぇ!! 終わりなんだよなぁ!?」 


 正面は大量の炎弾。

 その炎弾を囲うように高温の渦と鞭が配置されている。

 

 前は弾幕、後ろは壁。

 逃げる隙はどこにもない。


 だが、

 

「”無砲天撃”」


「……は?」


 全て、吹き飛ばせば問題ない。


「がぁあああああああああ!? な、なんで……!?」


「腕……これで全部」


 俺はすかさず懐に入り込み、両腕の関節部に突きを入れる。


 これで番崎の動きは止めた。

 後は……終わらせるだけ。


「ま、まてまてまて!? 何も殺すことはないだろ!? 亜人共は生きてんだからよ!!」


「……最後は殺すつもりだったんだろ?」


「あんなの冗談に決まってるだろ!? 俺、嘘つきだからさ!! は、ははは……」


「番崎」


「へ?」


 深呼吸をした後、番崎に向けて哀れみの感情と共に吐き捨てる。


「お前も覚悟を決めろ」


「ひっ……!?」


 普通の短剣を鞘に納め、【竜影剣】に無属性魔力を集中させる。

 やがて7つの刃が生成され、【竜影剣】の中心部に集まり、1つの巨大な剣へと変化する。

 

 これは先ほどダンジョン内で放った、手加減の一撃ではない。

 正真正銘、本気の一撃だ。


「やだ……やだやだやだやだやだやだあああああああ!!」


「”連装・竜撃斬”」


「ア……!!」


 巨大な剣が番崎の身体を切り裂き、跡形もなく消滅させた。


(疲れた……)


 死体すら残っていない。

 番崎が生きていた地面を見て、俺は複雑な感情を抱く。


 いくら憎いヤツだったとはいえ、殺人である事に変わりはない。

 殺しに対する拒否感だけは、忘れないようにしなければ。

 

 気持ちを入れ直し、事件の首謀者へと向き直る。

 無属性魔力も込めながら。


「次はお前だ……”エアストシュート”!!」


 無属性の弾を遥斗に向けて放つ。

 やや不意打ち気味な攻撃。

 弾は真っすぐ飛んでいき、そのまま遥斗へ命中すると思っていたのだが、


「ふふふ……私は番崎くん程、甘くはありませんよ?」


「っ!? 弾が……すり抜けた!?」

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