第30話 真白視点・闇配信者による拷問
※今回は胸糞回です
ちゃんと希望も存在し、次話以降から主人公の逆転が始まるのでご安心ください。
「……ここは?」
目を覚ますと、何人もの男達とカメラ型ドローンが真白達を囲っていた。
男達は目付きが悪く、鼻息を荒くして真白達を吟味するように見つめている。
気持ち悪い。
早くこんな所から抜けて……
「力が……入らない?」
手錠で拘束されているのは、手首の感覚でわかる。
こんなの真白達なら簡単に壊すことが出来るハズなのに……全く力が入らない。
それどころか全身が重だるく、眠気も凄まじい……
「……そういえば」
ついさっきも同じ現象に襲われた。
番崎と名乗るガラの悪い大男が、真白達に喧嘩を売ってきた時だ。
『ごほぉ!? や、やっぱつええな……』
炎魔法を操る番崎という男は中々の強敵だった。
まるで生き物のように襲い掛かる炎魔法の数々に、真白達も始めは苦戦を強いられた。
だけど所詮、Aランクレベル。
Sランク程の理不尽さはない。
真白の回復と姉さんの【狙撃手】で完全に動きを読み切った後は、完全にこちらのペースだった。
勝てる、そう確信していたのに……
『……!? 身体が……』
何故か真白は動けなくなった。
始めは指や足にしびれを感じる程度だったのに、やがて動けなくなり地面へ倒れ込んだ。
ヒールやリフレッシュ等の癒し魔法を発動させても効果はない。
そして倒れ込んだ真白を心配して、駆け寄ってきた姉さんまで一緒に力尽きて……
「おい!! 亜人の天使が起きたぞ!!」
「ふうー!! やっぱ可愛いねぇ!!」
真白が目を覚ましたのを見て、連中が騒ぎだす。
余りにも耳障りな声だったからか、姉さんも遅れて目を覚ました。
「ん、ここは……」
「おはよう姉さん。どうやら捕まってるみたい」
「真白ちゃん……って何これ、力が……!?」
「ようやく目覚めましたか」
「……誰」
青髪の男が真白達に近づく。
整髪料を使ったであろうトゲトゲした髪に、顔には至る所に付けられたピアスがギラリと光る。
一目で柄が悪いと判断できる男が、目を覚ました真白たちを見てニヤリと舌なめずりをした。
「申し遅れました。私の名前は遥斗……彼らのリーダーみたいなモノです」
「で、そのリーダーさんはアタシ達に何をしようってワケ?」
「おやおや。この状況を見てまだ察することができないんですね」
分かっている。
分かっているが、答え合わせのようなものとして聞きたかった。
遥斗は一瞬だけ後ろを振り向くと、静かに語り出した。
「これはショーです。亜人姉妹が絶望という絶望を重ねた後に……命を落とすという」
「「っ……!!」」
背筋が凍る。
噂には聞いていた。探索者をダンジョン内で襲い、死ぬまでの一部始終を配信し楽しむ者がいると。
”探索者殺し”
SNSで活動を再開したとチラッと見てはいたが……もう少し警戒しておくべきだった。
「私は人の最期をカメラに収めたい。絶望の果てに命を散らす人間の姿……美しいと思いませんか?」
「趣味が悪い」
「くくくっ……真白さんは私の幸せを分かってくれませんか、そうですか……」
バッサリと切り捨てた真白に対し、遥斗が近づいてくる。
「では、その身を持って体験してみましょう」
「ぐっ……!?」
瞬間、勢いのつけられた拳が真白の腹ににめり込んだ。
「ゲホッ……ゴホゴホッ!!」
「真白ちゃん!! あんた、何してんの!!」
「おやおや、体験は大事じゃないですか? しかし、”身体抑制剤”は効果がありますねぇ。丈夫な探索者の身体が弱々しく見えてしまう」
「身体……抑制剤……」
「えぇ。番崎さんと戦っていた時、こっそり打ち込んでいたんです。回復も私の”回復阻害”で防げますし」
ようやく原因がわかった。
身体抑制剤は身体能力を低下させ、最終的に身動き一つ取れなくする薬だ。
モンスターにはあまり効果がないから、探索者の間ではあまり広まってなかったのに……
真白の魔法や【自動回復】の効果がなかったのも、”回復阻害”で妨害されていたから。
この人達、殺人に特化しすぎている。
「なぜ……番崎と……」
「彼は居場所を奪われ、力と地位を求めた。私は彼に人員と魔銃を与えることで、Aランクという優秀な人材を”演者”として迎え入れることが出来る」
「演者って……あいつが?」
「えぇ……拷問にレパートリーは必要ですから。闇配信者の数なんて、たかが知れていますし……さて」
パンパンと二回、手拍子が叩かれる。
「ショーの第一演目といきましょうか。番崎さん!!」
「おうおうおう!! 主役の登場だぜぇ!!」
奥の影からドスドスと足音と立て、再び真白達の前に現れる番崎。
既に炎の鞭を手元に出しており、準備万端といった感じだ。
「は……なして……!!」
「……いったいなにを」
一方、真白達は周りの男たちに抱えられ、天井からぶら下がる紐に繋がれた。
天井の紐に吊り下げられ、無理やり立たされるような形になった真白達に
「徹底的に痛めつけて、その後無理やり犯して殺すんですよ……やれ」
炎の鞭が勢いよく打ち付けられた。
「あああああああああああああああっ!!」
「がっ……あっ……!!」
「ヒャハハ!! 結構たのしーなこれ!!」
「弱り切った身体に痛々しく鞭が打ち付けられる……いい悲鳴ですねぇ」
鞭の衝撃と焼けるような炎が一度に襲い掛かり、身体に激痛が走る。
身体抑制剤で身体が弱っているせいか、いつも以上に痛みが全身に響く。
「番崎さん、殺してはいけませんよ? 素晴らしい死に様を配信に収めなくてはいけませんから」
「わかってるって!!」
「我慢をさせて申し訳ありませんね。ですが、第二演目での性行為は、番崎さんを含めた皆さんに彼女達を好き放題犯して頂きますので」
「ひゅー!! おい聞いたかお前ら!! 世にも珍しい亜人姉妹とS○Xし放題だってよ!!」
「「「「おおおおおおおおおおっ!!」」」」
冗談じゃない。
こんな奴らに犯されるくらいなら、死んだ方がましだ。
嫌悪感をむき出しにし、最後まで抗おうと力を入れるがピクリとも動かない。
そんな時だった。姉さんの指先に魔力が集まり、光が放出される。
「こ……のっ!!」
「うわっ!? こいつ、まだ……!!」
指から光線が放たれ、番崎の目に直撃した。
最後の力を振り絞ったのだろう。
光線を出した後、姉さんはぐったりと俯いてしまった。
「あ、んた達に……やられてたまる……か」
「やりやがったなこの野郎!! オラァ!!」
「がっ……あっ、うぐっ……!!」
バキッ!! ベキ!! ドゴォ!!
怒りを買った番崎によって、姉さんが一方的に殴り続けられる。
目が虚ろになり、血の混じった胃液が吐き出されてもなお、攻撃の手が止むことはない。
真白はその場面を、ただ静観する事しかできなかった。
「や、めて……」
あの日の、パパが死んだ時の記憶がよみがえる。
パパが徐々に生気を無くしていく所を、真白は何もできずただ泣き叫ぶしかなかった。
大事な人の命が、再び奪われようとしている。
何もできないという絶望が真白を苦しめた。
「絶望というのはですね、重ねれば重ねるほど味わい深いんですよ」
ヒヒッと嫌味な笑い声を後に、拷問が再開される。
何度も何度も暴力を振るわれ、痛みの感覚がなくなっていく。
「……」
そして最後には、僅かな希望という概念が真白から失われた。
ーーーーー
「大丈夫か……れな、真白」
「え……?」
どれくらい痛めつけられたのだろうか。
僅かな意識の中、目を開けると……
真白が好きになりたい人が、そこにいた。
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