第28話 SSランク武器
「200万人とは随分ハネたのう……絶好調ではないか、無名よ」
「内心バックバクですよ……って摩耶さんも配信見るんですね?」
「気に入った相手としか、わらわは相手にせんからな。どういう人柄か知る為にもネットは大事じゃ」
クスクスと笑いながら、店の奥へと向かう摩耶さん。
今日は依頼していた武器を取りに来た。
まさか二日ちょっとで終わるとは思わなかったけど……
「ほれ、これが例の素材を使った短剣じゃ。相当バカげた能力を持っておる」
「そんなにですか?」
「鑑定魔法で見てみぃ」
テーブルに置かれた黒い短剣に鑑定魔法をかける。
すると、武器の詳細がウィンドウに表示された。
【竜影剣】
選ばれし者が使える、影の力が込められた竜剣
使用者の属性に応じて力が変化する。
推定ランク:SS
付与ボーナス
攻撃した相手に弱化(強)を与える
武器が自分の手元を離れた時、自らの意志で手元に戻すことが出来る
武器の元に転移することが出来る。
魔法”影隠し”を取得
魔法”影竜召喚”を取得
魔法”連装・竜撃斬”を取得
”影隠し”
影に身を包んで影状態となり、一定時間姿を消す。
影に包まれている間は視認されず、魔法によって感知することも出来ない。
影状態になっている間は攻撃が出来ないが、相手からの攻撃を無効化する。
”影竜召喚”
使用すると影の竜を複数体召喚でき、使用者の思うがままに操る事が出来る。
”連装・竜撃斬”
魔法の刃を7つに増やし、竜属性+使用者の属性が込められた斬撃を与える。
斬撃は7つを横に広げた”範囲斬り”と7つを1つに集約させた”単体斬り”の二種類に使い分けることが出来る。
「……竜属性とか知らない能力が増えてるんですけど」
「試しにSランク素材の【龍脈結晶】と合成したのじゃ。そうしたら、まぁとんでもないモノが生まれた」
「とんでもないってレベルじゃないですよ!? SSランクって何ですか!?」
「あっはっは!! こーれは規格外すぎて笑いが止まらん!!」
恐る恐る【竜影剣】を手に持つと、その秘められた力が内に流れ込んでいくのを感じた。
なんて力だ……今まで俺が使っていた剣がおもちゃに見えてしまう。
付与ボーナスにも魔法にも【影結晶】から進化&追加されており、どれもが汎用性の高い非常に強力な内容。
うおぉ、強いのは分かるけど実際に試してみたいなぁ……
「使いたいのは分かるが外でやっておくれ。ここで暴れられたら困る」
「そんな暴れん坊に見えますか?」
「探索者なんて、みーんな同じようなもんじゃ。戦いに飢えている野蛮なヤツらよ」
「まぁ、否定はしませんが……」
「くっくっくっ。この【竜影剣】は相当な暴れ馬でお主にしか使えん。他の者だと、剣に魔力を吸い取られて死ぬからな」
「はい!? そんな危ない物なんですかこれ!?」
「だーから”暴れ馬”なんじゃよ」
【竜影剣】の説明文に”選ばれし者しか使えない”って書いてあったけどデメリットがあるのか……
「ま、お主は能力的にSSランクはいけるじゃろうから問題ない」
「SSは盛りすぎでは……?」
「いやぁ? これでもだいぶ過小評価じゃよ?」
SSランクってSランクの上ってことだよな?
つい最近までBランクが限界だと思っていたのに……
「はは……でも、ありがとうございます。真白が紹介してくれたとはいえ、俺の武器を作っていただいて」
「そんな事か、気にするでない……そういえば、真白は元気か?」
「え? まぁ、結構楽しそうにやってると思いますけど」
「そうか……ならよかった」
「何か気になることでも?」
「ん? れなから何も聞いておらんのか? まぁ、あの子が勝手に真白の事を話すとは思えんか」
「俺がれなから聞いたのは、両親を亡くした事と差別を受けていた事だけですね」
「あぁ、親を亡くした事は知っておったか。なら丁度良い」
楽しそうな表情から一転。
どこか遠くを見つめる寂しげな目で摩耶さんは語り始めた。
「真白はのう、父親の事が本当に大好きでな……この店にも父親と一緒に楽しそうに遊びに来てた」
「お父さんもこの店の常連さんだったんですね」
「あぁ、あやつは危なっかしいが腕の立つ探索者じゃった……だが」
一呼吸おいて、再び語り出す。
「ダンジョンブレイクに挑んで、母親と一緒に死んだ」
「……」
ダンジョンのモンスターが突然、地上に溢れ返り暴れ回る現象。
それがダンジョンブレイク。
対策が練られた今でも大勢の死者を出す悪魔の災害だ。
「それ以来、真白はあのような落ち着いた性格になってしまってな……」
「昔は明るかったんですか?」
「明るかった……というよりかは甘えん坊か?」
「へぇ……あの真白が」
「今は滅多なことで心は開かんし、れなと違って周りに好かれようともせんしな。お主、一度でもあの子に名前で呼ばれたことはあるか?」
「そういえば……」
真白は優しいし、俺の事を何度もサポートしてくれた。
だけど名前で呼ばれたことは一度もない。
れなの詰め方が凄かっただけで、真白はまだ俺に心を開き切っていないと言う事か。
「まぁ嫌いな人をわらわに紹介したりはせんよ。あの子達と今後も仲よくしてやってくれ」
「勿論です」
別に塩対応ってワケでもないし、時間が解決してくれるだろう。
俺はいつも通り和気あいあいとやっていけばいい。
まあ、いつか名前で呼んでほしいなー
「そういえば今日は二人で配信じゃったな」
「えぇ。案件配信なんですけど、俺は入ったばかりなので」
「クライアントとの都合か。どれ、少し拝見して……ん?」
スマホを操作する指が止まる。
「もう配信が終わっておるぞ」
「え?」
2人の配信を確認すると確かに終わっており、アーカイブ化されていた。
配信時間はわずか16分。
おかしいな……ダンジョン配信はいつも1~2時間くらいはやるのに。
「おい……アーカイブの最後の場面を見ろ」
「……これは!!」
配信が終わる1分前までシークバーをさかのぼり、何が起きたか確認する。
最初は機材トラブルか何かだと思っていたのだが……
『ギャハハハ!! 美人な亜人が二人もいるぜぇ!!』
『……真白ちゃん、配信止めて』
「番崎……!?」
かつて俺を下に見ていた番崎が、夢咲姉妹の前へ自信満々に現れていた。
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