第26話 れな視点・質問に答えます!
「んふふ〜……今日のダーリンもかっこよかったなー♡」
今日の配信アーカイブを開き、ダーリンの勇姿を何度も見返す。
危ない場面も多々あるのに、ダーリンはいつでも頼もしくてどんなピンチも解決してくれる。
そんなダーリンの姿が凄く愛おしい。
「……嬉しいな、好きになった人と付き合えるなんて」
ベッドに身を任せて、仰向けになる。
亜人という存在は、まだ完全に受け入れられていない。
『ば、化け物……!!』
『なんでモンスターがここにいるの……?』
『怖いから、距離を置いて欲しいんだけど……』
「……」
アタシ達亜人に向けられた冷たい言葉の数々。
異質な存在というのは、受け入れられるまでが難しい。
特に幼少期の頃なんかは、それが顕著で……
嫌なことを思い出しちゃったな。
「配信しよ」
気分転換も兼ねて、スマホでゲリラ配信を開始する。
あ、暗い話はしないよ?
楽しい話をして、気持ちを切り替えたいだけ!
「やほーい!! オトプロの夢街れなだよー!! みんな元気してたー?」
コメント欄
・やほーい!!
・ソロ配信だ!!
・きたあああああ!!
・ゲリラたすかる
「くふふ、喜んでくれてありがとう!! 今日はそうだねー、雑談しながら質問にでも答えていこうかな?」
コメント欄
・質問!!
・質問系は久しぶりじゃない?
・れなちゃんのお話好きだから嬉しい
・wktk
配信を始めた途端、大勢の視聴者が見に来てくれた。
ゲリラでやっても、人が来てくれるって嬉しいね。
コメント欄
・音梨無名さんがオトプロに入ったのは何故?
「いい質問だねー。一応アタシが誘ったんだけど、皆にはあまり話してなかったかも」
足をパタパタさせながら、コメントの中から良さげな質問を見つけていく。
「えっとねー、話題性がありそうだったからかな? ダーリンに助けられた切り抜きが滅茶苦茶バズってたし、後はそろそろ男性の配信者も欲しかったからね」
コメント欄
・はえー
・男のライバーさん欲しいって前から言ってたもんね
・確かにめちゃめちゃ拡散されてたよなー
・正直、無名くんが入ってくれて嬉しい
「くふふ、ありがと♪」
オトプロはアタシ達姉妹の為に作られた事務所。
ずっと2人だけで活動しても良かったけど、やっぱり新しい人が来た方が話題性や新鮮さがあっていい。
そんなことをリゼさんと話していた時、ダーリンというピッタリの人材を見つけてしまった……
と、それっぽい説明はしてみたけど
「まあ、それはちょっと建前が入ってて……本当はダーリンともっと関係を持ちたかったからなんだよね」
やばい。自分で言ってて恥ずかしくなっちゃう。
ダーリンに助けられた時、ダーリンがアタシ達亜人を差別せずに受け入れてくれた時。
アタシはもう、ダーリンの虜になっていた。
この人ともっと話していたい、もっと色んな事がしたい。
そう思って、やや強引にダーリンを事務所に誘ったわけだ。
コメント欄
・乙女だねぇ
・顔赤くしてて草
・かわいい
・きゃわわ
「ねえー弄るのやめてよー!! もう質問答えないぞー!?」
冗談半分で言われてると分かっていても恥ずかしい。
話題を切り替えるべく、次の質問へ。
コメント欄
・無名くんと一緒に住んでるの?
「そうだよー!! アタシと真白ちゃんとダーリンは一緒に住んでるよ!! あっ後あまり家に帰らないけど、飛鳥さんも!!」
コメント欄
・社長も一緒に住んでるんだ
・二人にとっては親みたいな存在だからな
「そうそう、飛鳥さんが幼いアタシ達を育ててくれたからね。アタシ達の為に事務所まで作ったのは流石にびっくりしたけど……あはは」
幼いアタシ達を拾ってくれたのは親戚だった八重樫飛鳥さんという人だ。
飛鳥さんはアタシ達にまるで親のように接してくれて、物凄く可愛がられた。
最近は飛鳥さんの仕事が忙しくて連絡も取れてないけど、元気にしてるかなー?
「あ、そうだ!! ダーリン呼ぼ♪」
みんなもダーリンの事、気になってるみたいだしちょうどいい。
真白ちゃんも呼びたいけど、今はお風呂に入ってるから後で呼ぼ。
というわけでダーリンにチャットを送信。
『今からアタシの部屋に来て、少しだけ配信に顔出して欲しいなっ♡』
それから5分後。
コンコンとノックが鳴り扉が開いた。
「なんだなんだ? 俺あんまり話すの得意じゃないんだけど……」
「ダーーーーーリンッ!!」
「うおっ!? いきなり飛びつかれたらバランス崩すって!?」
「えへへ♪」
シトラス系の爽やかな匂いを放つ、固い筋肉で構成された身体がアタシを優しく包み込む。
んー……抱き心地最高♡
ぬいぐるみとか真白ちゃんとかよく抱きしめているけど、ダーリンは特別だなぁ。
コメント欄
・うおおおおおお!!
・てえてえ
・無名くんキター!!
・待ってました!!
「うおっ、かなり盛り上がってるな……」
「ダーリンが来たんだもん。当然だよ」
くふふ、カップル需要はあるみたいだね。
ダーリンは今、話題性の塊みたいな状態だし、盛り上がるのも当然だと思う。
「ありがとね、ダーリン。部屋に戻って大丈夫だよ」
「ん? もういいのか?」
「うんっ、ダーリンも住んでますよってみんなに紹介したかっただけ!」
「そういえば言ってなかったもんな……」
よく炎上しないよなぁ……と苦笑いのダーリン。
困ってる所も可愛くて好き……
せっかくだし、もっと困らせちゃお。
「あ、でもー? せっかくだし、恋人らしい事をして欲しいかなー?」
「はい? それは例えば……」
「くふふ、女の子に言わせないでよー? へーんたい♡」
「まだ何も言ってないんだが……」
困ってる困ってる♪
ダーリンはウブだから、女の子からエッチな話題を振られると動揺してしまう。
弄りがいがあって楽しいなぁ。
さてと、収集がつかなくなるしこの辺に……
「……わかった」
「へ?」
気の緩んだアタシの顔に、ダーリンが近づく。
そして
「っ!?」
アタシの唇に柔らかい物が重なった。
「……おやすみ」
扉が閉まる。
残されたのは、何が起きたのか分からず、口をはくはくさせているアタシの姿だけ。
「ダー……リン……?」
閉まる扉に背中を預け、ゆっくり腰を下ろす。
自身の唇に指をそっと触れると、先程までの出来事が鮮明に蘇る。
アタシ、ダーリンにキスされたんだ……
うるさく鳴り続ける心臓を抑えるのに必死で、逃げるようにその日は配信を終えた。
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