第23話 VS神速のミミック①
「ぐおっ!? な、なんだ!?」
「ダーリン大丈夫!?」
「あぁ……今、俺の前方から舌が伸びて……!?」
態勢を立て直し、下が伸びた方向に視線を向ける。
そこにいたのは、
「キョエエエエエエ!!」
「ミミックか!?」
宝箱を模したモンスター。
ミミックはBランク帯にも出現する割とメジャーなヤツだ。
だが……こいつの姿は少しおかしい。
「やーな装飾。ギラギラしてる」
「けど魔力は本物……かなりやばい」
全身をギラギラしたアクセサリーで身をまとい、中心にある紫色の魔石から禍々しい魔力を放っている。
まさかこいつは……俺は”鑑定”を行う。
名前:アダマイトミミック
推定ランク:S
詳細:宝箱のアイテムを200年以上蓄えた事でとてつもない魔力を得た特殊なミミック。
使用魔法:不明
潜在スキル:不明
「やっぱSランクか……」
カオスドラゴンと同じく、底知れない力を感じたから察してはいた。
やっぱ渋谷ダンジョンは出るよな……あまりにもSランクが出るから、度胸試しとして探索者が使うくらいだし。
短剣を取り出し、構えを取る。
ミミックは箱をカタカタ揺らしながらこちらに近づき、俺が少し動いた瞬間勢いよく飛び出した。
「”エアストスラッシュ”!!」
ガキィン!!と刃と固い箱がぶつかる。
くっ……やっぱ強いな。
もうこちらが押されかけている。
「キョエ……!?」
「……ダメージが入ってる?」
とはいえ、全く効果がない訳ではなさそうだ。
ミミックもあの攻撃でダメージを受けると思っていなかったのか、声や動きに動揺を感じる。
やっぱ無属性魔法はSランクに効果的なのか……!!
コメント欄
・あの一撃でダメージが!?
・相手Sランクなのに!?
・無名さんやべー……
・がんばれ!!
コメントの応援を背に、俺は再びミミックへと斬りかかった。
「おらぁ!!」
「キョエエエエエ!!」
すかさずミミックを蹴りで打ち上げると、空中に放り出され自由が奪われた。
そして、後方にいたれなが魔法を放つ。
「”スタンショット”!!」
電撃の弾がミミックに襲いかかる。
あれはダメージではなく、スタンで動きを封じる魔法。
Sランクには純粋な攻撃は効かないと判断したか、考えたな。
「え!? 消えた!?」
だが、れなの攻撃は命中しなかった。
”スタンショット”がミミックにあたる瞬間、姿が消えたのだ。
「いや違う!! あいつは”神速”を使ってるんだ!!」
「アイテムを保持してたから使えるの!? って確かに素早い残像が……」
ヤツの説明文にアイテムを長年蓄えたことで魔力を得たと書いてあった。
つまりアイテムのスキル等も得ているのは間違い無いだろう。
問題は”神速”というぶっ壊れ魔法を得た事なんだがな!!
「キョエエエエエエ!!」
「もう後ろに!? あぶなっ!?」
「れなは真白とくっついて援護を!! ”神速”!!」
寸前の所でれなは攻撃をかわし、俺はミミックに追いつくべく”神速”を発動させる。
「この野郎っ!!」
「キョエエ!!」
「ちょっと速すぎじゃない!?」
「全く見えない……」
ガキン!! ガキィン!!
高速の世界で剣と宝箱の身体がぶつかり合う。
クソッ……相手も同じ速さか。
これでは体力勝負に持っていかれる。
この高速戦闘に持ち込んだ場合、不利になるのは俺の方。
”神速”を会得したばかりの俺と、ずっと保持していたミミックとでは練度に差があるのだ。
少しでも戦局を変えるべく、俺は剣に無属性の魔力を込めた。
「”無影斬”!!」
音も気配もない無属性の剣を高速で放つ。
威力重視の”エアストスラッシュ”とは違い、”無影斬”はスピードに特化させた技だが……
「ッ!? これをかわすのか!?」
なんとミミックは更にスピードを上げ、”無影斬”を振った場所から一瞬で消えてしまった。
「どこだ!?」
集中して周囲の気配を探る。
かすかに音は聞こえる。だが姿は見えない。
少しずつ焦る中、目の前にミミックが出現したのだが……
「キョエエエ!!」
「か、身体が……!?」
「ッエエエエエ!!」
「ぐはっ!?」
身体が動かない!?
唐突に体が動かなくなったと思えば、ミミックの高速突撃が腹部に命中する。
「キョエエエエ……」
や、やばい……魔力を貯めてる。
さすがにあれを喰らったら、ヤツのスピードについていけなくなる。
身体の中心部に貯まる紫色の魔力を防ぎたくても、俺の身体はピクリとも動かない。
「キョエエエエ!!」
ミミックから紫色の光線が放たれる。
もうダメだと思った時、後ろから光の魔力を感じた。
「リフレッシュ!!」
「っ!? はっ!!」
光が自分の体を包んだと思えば体が一瞬で軽くなり、俺は急いで”神速”を発動させてミミックの放つ光線を避けた。
「サンキュー真白……危なかったよ」
「バフや回復は任せて。さっきのはミミックの目を見ると発動するみたい」
「なるほど、目を見ると身体が固まるのか……」
高速移動に加えて、かなしばりまで行えるとは。
いくら素早く動けても、動けなくなればひとたまりも無い。
ヤツのスピードに追いつきつつ、かなしばりを封じる方法はないのか?
真白の解呪にもラグはあるし、一気に攻められたら流石に耐えられない。
どうすれば……
「……目を見なければいいんだな」
「え? う、うん……」
「なるほど……なら、少しハードだが……」
俺は懐からタオルを取り出すと……
「やってみるしかないよな」
「え……?」
「ダ、ダーリン!?」
自らの目を隠すように巻いた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
よければ、ブックマークと☆評価をしていただけると励みになりますので、よろしくお願いします!




