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第21話 武器屋にやってきた

「はいダーリン、お味噌汁」


「あ、あぁ……ありがとう」


 朝ごはんが食卓に並んでいく。 

 白ご飯に塩鮭、ほうれん草のおひたしに納豆まで。

 王道のラインナップだと思う。

 

 姉妹の食事にサラッと俺が混ざってるのもアレだが、一番ツッコミたいのはそこじゃない。


「その、れな……」


「んー? なーに?」


「ダーリンって……どういうこと?」


「ダーリンはダーリンだよ?」


「深く考えない方がいい」


「なるほど?」


 ダーリンはダーリンと言われたらそこまでなのだが……

 俺が知りたいのは、何故恋人になってから急に呼び方が変わったのかという点であって。


 まぁ、嫌な呼び方じゃないし、凄い気にしてる訳じゃないんだけどね。

 ただただ、引っかかっただけ。


 疑問をシュッと頭の中に引っ込め、並べられた朝ごはんに対し、手を合わせて食べる事にした。


「いただきます……うまっ」


「でしょー? やっぱり朝からちゃんとしたもの食べないと」


「これだけ美味しい朝ごはんなら毎日食べられるよ……感動した」


「えへへー」


 朝から暖かいご飯が食べられるとは……


 冷たいパンとヨーグルトもすっかり慣れてはいたが、しっかりした物を食べると新鮮な気持ちになれる。


(まさか、れなと付き合うとは……)


 それにしても、だ。

 こんな美少女と俺が付き合えるなんて、少し前の俺が聞いたら驚きそうな事実だよ。


 夢みたいだなぁとれなの方を見ながらモグモグ食べていると、ニッコリ笑いながらこちらに近づいてきた。


「これからもアタシといっぱいラブラブしよーね、ダーリン♡」


「気持ちはありがたいが待て待て。真白もいるんだからさ」  


「あ、そだったね……あはは」


 そう、ここには俺とれなだけじゃなく真白もいる。

 真白からすれば、自分の姉と最近知り合った男がイチャイチャしてるんだから、気まずいったらありゃしない。


「真白は平気。仲がいいのは良い事」


「そうなのか……まぁ、真白がいいなら、いいけど」


「んふー、ありがとう真白ちゃん♪」


「気にしないで」


 意外と気にしないんですね……

 メンタルが強いのか、興味が無いだけなのか。


「むしろヤッてるところ見たい」


「きゃー♡」


「朝からシモはやめてください」


 結局シモに落ち着くんかい。


――――――――


「とりあえず影の騎士の素材を剣にしたいんだけど……真白、いい場所とか知ってる?」


「武器加工なら弓月武器道具店が一番」


「弓月武器道具店か、ありがとう。さーてMAPで調べて……」


「その必要はない。ちょうど真白も用があるから一緒に行こう」


「いいのか? 助かるよ」


 ということで真白の言う店に向かうことにした。

 店の場所は最寄り駅から三駅先らしい、意外と近い。

 

「じゃーん、ここが弓月武器道具店」


「随分高級感ある店だな……」


「高級な物しか取り扱ってないから当然」


 駅を降り、近くの狭い路地を抜けた先に店はあった。

 綺麗な木で中心に作られた和風の建物。

 建物の素材一つ一つが綺麗な艶を出しており、素人目でも高そうな佇まいである事が分かる。


「さ、入ろう」


「あ、あぁ」


 ドレスコードとか無いよな?

 気持ち程度にシャツの襟を整えながら、店の中に入る。


「おお真白か。よくきたのぉ」


「ん、頼んでいた道具を取りに来た」


「エリクサーか。お主の素材のおかげでよく……ん? こやつは誰じゃ?」 


「真白の知り合い。超高級素材を武器にして欲しいって」


「初めまして、音梨無名です」


 店内の奥にある座布団へ座る、緑髪の幼女。

 この子が店主? 随分と古風な喋り方をするんだな……


「弓月摩耶じゃ。こう見えても還暦はとっくに過ぎておるから、舐めるでないぞ?」


「還暦ってことは60歳以上!? 若々しすぎでは!?」


「ふふふ、魔力や今まで触れた素材達の影響で老化がちいと遅くての。見た目だけはピッチピチじゃ」


「だから手を出しても大丈夫」


「出さねえよ!!」


 クスクスと楽しげに笑う摩耶さん。

 悪いがロリは対象外だ。


「で? 例の素材とやらを見せてみい」


「えっと、これなんですけど……」


「ふむふむ……ほーこれはまた」


 テーブルに置いた【影結晶】を摩耶さんが手に取ると、ほんほんと言いながら四方八方眺め始めた。


 たまにツンツンと軽く叩いたり。

 魔力の波動を当ててみたり。

 ”鑑定”魔法で詳細を確認したり。


 五分くらい色んな事された後、再びテーブルに【影結晶】が置かれた。


「長生きするもんじゃのう。ここまで面白そうなモノに出会えるとは」


「加工出来るんですか?」


「あったりまえじゃ。見たことなくても、素材の特徴で加工方法はだいたい分かる。ま、じゃじゃ馬である事には間違いないがの」


「じゃじゃ馬、ねぇ」


 それだけの力を秘めていると言う事だろう。


「短剣でいいのじゃな? これはS……いや、それ以上の武器になるかものう」


「あ、はい……え? 短剣がいいって言ったっけ……」


「お主のクセや手のタコで短剣かなーと思ったのじゃが……くすくす、わらわの目も衰えてないようじゃのぉ」


「す、すげぇ……」 


 店に入っただけで見抜けるものなのか……?

 まだ心の声を聞いた、とかの方が信憑性があるが。


「まーさんは50年前から最前線で活動してた探索者。スーパーれじぇんど」


「え!?」


「昔の話じゃ。今は引退して大人しくしておる」


 50年前と言えばダンジョンが現れたばかりの頃だぞ!?

 何もかもが手探りの時代に探索者として前線を張っていたとは……


「ま、わらわに任せておけ。最強の武器を作ってやる……くすくす」


 これは……とんでもない人と出会ってしまったな。

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