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第20話 れなの思い

「ふあー……楽しかった」


 パーティーが終わり、来客用のベッドに寝転がる。

 来客用にベッドを用意されるとかスケールやばぁ……しかも羽毛だし。


「……現実じゃないみたいだ」


 あの後再びれなや真白と大盛り上がりして。

 後は今後の探索や配信について語り合った。


 もっと強いモンスターを倒そうとか、色んなダンジョンに潜ろうとか。

 一人でいた時には考えた事もないアイデアの数々に心が躍った。

 

「夢ならそろそろ覚めそうだよなぁ」


 それくらい今の俺は幸せだった。


「夢じゃなーいよ♪」


「うおっ!?」


 突如、客室の扉が開いたと思えば、れなが布団の中に侵入してきた。


「一緒に寝るのはやめようって話したよな?」


「えー? それはアタシのベッドの話でしょ♡」


「……1本取られたよ」


「ふふっ♪」


 フローラルな甘い匂いに包まれ、彼女の豊満な柔らかさがダイレクトに伝わる。

 おまけに夜という静かで暗い世界が、この状況をよりいかがわしい雰囲気系と変貌させた。


「れなって普段からこんなにスキンシップ激しいのか? 正直、心臓が持たねえんだけど……」


「んーん、異性にこんな事するの、無名くんだけだよ?」


「え」


 おい待て。その言葉は勘違いを産むだろ。

 

「動揺した?」


「滅茶苦茶した」


「素直だねー」


「正直な感想を述べただけなんだが……」


「そーいう所がいいんだよー?」


 寝返りを打つと、れなの顔が目の前に現れた。

 闇夜の中でわずかに輝くエメラルド色の瞳が、パチパチと瞬きをしている。

 綺麗だ……悪魔のような容姿と相まって、彼女の元へ吸い込まれていきそうだった。


「アタシね、無名くんにいっぱい感謝してるんだよ?」


「俺に?」


「うん。カオスドラゴンから助けてくれたし、事務所に入ってくれーなんて無茶ぶりにも答えてくれたよね?」 


「それは……成り行きというか、特別な事をしたつもりはない」


「アタシにとっては特別だったんだよ。それに……アタシ達の見た目を気にせず受け入れてくれた」


「見た目? あぁ……亜人の」


 亜人化症候群。

 人間が突如、亜人になる病気でいいのかな? 


 亜人化症候群というのは現れてまだ二十年しか経っていない。

 原因も不明だし、法律も保護する仕組みも不十分。

 酷い場合、不当な差別も受けていたのだとか……


「アタシ達って小さい頃に親を亡くしちゃって……誰も守ってくれない中、ずーっと腫れ物か見世物のような扱いをされてきたからさ……」


「……もしかして、普段から過激な言動が多いのも?」


「察しがいいね。その方が楽だったし、いっそ振り切った方がみんな構ってくれたんだよ」


「変態キャラっていう部分をアピールして目立とうとしてた訳か……」


「別に重く捉えなくていいよ? 今のアタシは大好きだし、目立つのも嬉しいからさ」


 その瞳はどこか切なそうだった。

 親を亡くし、周りからも不当な扱いをされて。

 辛いことを思い出させてしまったのかもしれない。


「れなにとっては、ダンジョン配信が居場所だった訳か」


「うん!! 亜人の美少女なんてバズの塊だし、お金も稼げるからね!」


「貪欲なのは良いことで」


「んふふ、後ね……」


「っ……!?」


 突然言い止めたと思ったら、れなが俺の身体に思いっきり抱きついてきた。


「れ、れな……?」


「無名くんに出会えたから……運命だなって……」


「れな……その言葉は……」


「かっこよかったよ。アタシ達を守ってくれるその後ろ姿」


「……ありがとう」


 鈍感で臆病な俺でも、ここまでされたら選択肢は間違えない。

 彼女を優しく抱きしめ返し、耳元で優しく囁き始める。 


「……俺もさ、ここが居場所なんじゃないかって思い始めてるんだ」


「そうなの?」


「ああ。今まで生きる為とか、才能がないとかふざけんなって意地みたいな感じでダンジョンに潜ってた。

 けど、今は二人がいて、リスナーがいて、オトプロがあって、色んな支えを手に入れる事が出来た」


「それが無名くんにとって、幸せなことだったんだ」


「幸せだよ。後、この居場所を守りたいって決心する事も出来た」


 言葉に熱を込め、思いを語り始める。


「俺は……この居場所を守りたいし盛り上げたい。色んなダンジョンに潜って、色んなモンスターと戦って、色んな景色を二人やリスナーと共有して楽しみたいんだ」


 ここが俺の居場所だって言うんだったら、この居場所を守りたいし、全力で盛り上げたい。


 今までの俺じゃ絶対にたどり着けない。

 俺の夢の全てだ。


「いい!! すっごくいい!! ぜったい楽しいよ!!」


「二人のおかげだよ。本当にありがとう」


「えへへ……」


 分かりやすく喜んでくれる彼女の表情が愛おしい。

 俺の事を特別だって言ってくれたお返し。


 するなら今しかない。


「大好きだ、れな」


「アタシも!! 大好き!!」


 お互いの抱きしめる力が強くなる。

 心臓の鼓動が、ドクンドクンと伝わり合い、生きている鼓動を感じ合った。


「ねーねー? 子供生まれたらどこに行きたい?」


「色々すっ飛ばしすぎじゃね!?」


「くふふ♡ お盛んになる予定だからねぇ♡」


「……ムードも男気もないが、明日以降にしてくれ。今日は色々と疲れた。すまん」


「わかってるよー♪ おやすみ、”ダーリン”♡」


「あぁ、おやすみ……」


 台無しになった気もするが、まあいい。

 新しい幸せを大切にしつつ、今後も頑張っていこう。


 愛を与えてくれた彼女を優しく抱きしめながら、ゆっくり眠りについた。


「ん?」


 まて。

 さっき、”ダーリン”って言わなかった?

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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