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第18話 無名の過去

「「「かんぱーい!!」」」


 俺達が影の騎士を討伐しダンジョンから帰還した後。

 影の騎士の素材と討伐記念、そして俺の歓迎も兼ねてパーティーが行われることになった。

 パーティー自体は嬉しいのだが、その場所というのが……


「なぁ、本当に二人の家に来てよかったのか?」


「全然?」


「問題ない」


「そっか……」


 女子というのは、男を家に入れることを警戒するものだと思ってたが……

 

(しかもすげぇイイ所に住んでるし……)


 お金持ちが住んでいそうなタワーマンションの最上階。

 内装も広さも装飾も超豪華、おまけに配信用の防音室まで完備してある。

 今いるリビングだって、目の前に映画館みたいなスクリーンが出てくるのだから驚きだ。

 

 さっきも映画感覚で配信アーカイブを見返してたし……俺とは別次元に住んでる。


「しかし、影の騎士の素材は凄いねー。アタシ見たことないや」


「真白もこれは見たことない。おそらく初めてドロップしたのかも」


 二人の注目を集めている、テーブルの上に置かれた一つの素材。

 禍々しい魔力を放つ黒い球体で、周りに薄い影が漂っている。


 一応、さっき鑑定で見てみたのだが、


 【影結晶】 

 影に包まれた無の力。

 その力は謎に秘められている。

 全武器の素材に使用可能。

 推定ランク:S+


 付与ボーナス

 攻撃した相手に弱化(強)を与える

 魔法”影隠し”を取得

 魔法”霊兵”を取得


 ”影隠し”

 影に身を包んで影状態となり、一定時間姿を消す。

 影に包まれている間は視認されず、魔法によって感知することも出来ない。

 影状態になっている間は攻撃が出来ないが、相手からの攻撃を無効化する。


 ”霊兵”

 使用すると霊体の兵士を複数体召喚でき、使用者の思うがままに操る事が出来る。


(かなり強いな……)


 三つとも汎用性がかなり高い。


 ”影隠し”は奇襲に持ってこいの技、”霊兵”は召喚魔法としては異例の術師が操る形となっている。

 弱化の恐ろしさも真白で実感済みだし……


 オマケに全武器に使用可能だから、剣に使えるのがいい。

 クリスタルネイルは売ったが、影結晶は俺の武器に使うとしよう。


「ふふふ、これで無名くんも更に強くなっちゃうねー」


「ああ、戦略の幅が広がるし、これから使うのが楽しみだ」


「うんうん!! アタシも無名くんが活躍する所、もっと見たい!!」


「そこまでか? まぁ、ありがとうな」 


 あまり褒められ慣れてないからか、少し照れてしまう。

 そんな照れ臭そうにしている俺を見て、二人がニヤニヤした表情で近づく。


「これは色々と楽しそうですなぁ」


「ですなー」


「人で遊ぶな怖い怖い」


 二人にいじられるとかたまったもんじゃない。


「でもさぁ、なんで無名くんって1人でダンジョンに潜ってたの?」


「いくら才能がないと言っても、最初から一人でなんてあり得ない」


「あー……実は俺、実家を追い出されててな……」


「「え?」」


 あまり楽しい話じゃないがな……

 聞かれた以上は仕方ない。


「ウチはダンジョンで成り上がった家系でさ。両親も兄も優秀な探索者だったんだ。でも俺だけゴミみたいな潜在スキルをもらって……」


「それで才能が無いからって……?」


「ああ、はじめは飯抜きとか陰湿な仕打ちだけだったけど、段々エスカレートしていって……最後にはお前の存在が我々の恥になる!! ってさ」


「何それ……酷い」


 さすがの俺も追い出されるとは思ってなかったよ。

 潜在スキルがわからない幼少期の頃はみんなから愛してもらった分、この落差には傷ついた。


「で、未熟な俺はどうする事も出来なくて。とにかく悔しかった俺はダンジョンに駆け込んだってワケ」


「そこから無名くんのダンジョン生活が……」


「あぁ。後、両親に変な噂を流されたらしくてな。俺のことを雇ってくれる探索者グループは一つもなかった」


「最早いじめを超えてる。訴訟案件」


「ははは……まぁ、だからその……今こうして皆に俺の事を認めて貰えて凄く嬉しい。ずっと否定ばかりされてたからさ」

 

 あの頃に比べたら、今の俺は素晴らしい居場所を手に入れたと思う。

 姉妹に褒められて、リスナーに褒められて、俺の存在を色んな人が求めてくれる。


 三年前、全てを奪われた俺の欲しかったものがすべてここに揃っていた。


「いっぱい褒めるよーーー!!」


「わっ!?」


 感極まったのか、れなが勢いよく俺の方へダイブし、ぎゅっと抱きしめてきた。


「だって無名くん本当に凄いもん!! Sランクモンスターもあっという間に倒すし、魔法無しで防御とかしちゃうし。後、未知のモンスター相手にも冷静に立ち回ってた!!」


「あ、あれは……なんだろうな。無理やり落ち着かせてたっていうか、なんというか……」


「姉さんは事実を言っているだけ。まぁ、凄いというか異次元、バケモノ、神。そんな感じ」  


「いろいろ盛りすぎじゃね?」


 流石に神はないだろ。

 でもまぁ……2人がそれだけ俺のことを認めてくれるって証拠か。


 悪い気はしない。


「後、男子らしく変態な所もいいと思う!!」


「そこはいらねぇだろ!?」


「えー、変態じゃないと夜が大変だよー? ダンジョンだけじゃなくて夜のベッドでも無双しちゃおうよ〜♡」


 色々台無しだよ!!

 という訳で、いよいよ騒がしいパーティーの幕開けである。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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