第16話 その頃番崎は①
「ちくしょう!! 何だよこれ!!」
バンッ!!と思いっきりスマホをテーブルに投げつける。
「お、落ち着いてください番崎さん……これはフェイクですよフェイク」
「俺たちの最強は番崎さんですから!!」
「はは、そ、そうだよな……」
仲間に諭され、心を落ち着かせようとするが……
(やばいやばいどうしようどうしよう。俺様がSランクの準備をしていた時に、ゴミカス無名が倒すなんてよぉ!?)
完全に想定外。
まさか自分が見下していた音梨無名が、Sランクモンスターを倒すなんて思ってもいなかった。
フェイクだと言うやつもいるが、あれは紛れもない事実。
腐ってもAランク帯で探索者をやっているからこそわかるのだ。
(あんな化け物、準備もしないで倒せるわけねえじゃん!! 俺だったらさっさと逃げるわ!!)
俺様は失敗したくない。
生まれてこの方、挫折なんてしたことないし、俺より強いやつなんて数えるほどしかいない。
て言うか、会わないようにしてたし。
だから確実に余裕で倒せると確信を持ってから向かう。
その為の準備をしてたのに、
「くそっ!!」
なんで落ちこぼれのあいつに、先を越こされなきゃいけないんだよ!!
「ねぇ、あいつ……」
「あぁ……無名さんをイジめてた番崎だろ。クソ野郎だよな」
「あんな凄い人を押し込めてたんだろ? 嫉妬にも程があるだろ」
「は……?」
周りの人間がダンジョン協会のテーブルで騒ぐ俺達に陰口をしてきやがる。
いつもはビビって逃げてたくせによ。
音梨より下だと分かった瞬間、俺様を見下しやがる!!
「う、うるせぇ!! どっか行け!! ぶっ飛ばすぞ!!」
わざとらしく腕を大きく振って人払いをする。
「クソ……」
何もかもめちゃくちゃだ。
俺様の計画が。俺様の人生が。
あいつのせいで崩れ去ろうとしている。
「やっぱ番崎さんって……」
「俺、この人について行ったの間違いだったかもなぁ」
仲間ですら俺の実力を疑問視するヤツが出てきてる。
なんでだなんでだ。
わかんねえわかんねえわかんねえ。
「行くしかねぇのか……」
Sランクモンスターがいるダンジョンに。
Sランクモンスターを倒せれば、俺の名声だって取り戻せるはずだ。
でも失敗したらどうする?
万が一倒せなかったら?
ボコボコにされたら?
俺が強いって証明ができなくなる。
「……そうだ」
いいことを思いついた。
まずSランクのダンジョンには行く。
そしてSランクのモンスターに遭遇したら……一瞬だけ攻撃してすぐ逃げよう。
これだ。これなら俺の威厳も保てる。
Sランクモンスターは恐ろしすぎて、身動きも取れずに死んでしまう奴が多いらしい。
そんな奴から逃げた上に、攻撃も当てるなんて、かっこよくないか?
逃げる方法なんて、仲間を利用すればどうってことはない!!
ふふふ、これだ。これでいこう!!
「お前ら!! 明日は渋谷ダンジョンの下層に行くぞ!!」
「「え!?」」
俺様の名声は、必ず戻してやる。
――――――――
「よし!! いくぞぉ!!」
「あのー、動画とか撮らなくていいんですか?」
「確かに!! せっかくですし番崎さんの勇士をカメラに納めましょうよ!!」
「んなもんいらねえよ!! 隠し撮りとかしたら許さねえからな!!」
「「は、はい!!」」
「おい佐々木!! 勝手にカメラを回した罰でお前は荷物持ちだ!!」
「ええー!?」
渋谷ダンジョンの入り口前で仲間たちを指示する。
本当のところは、万が一失敗し、その場面を晒されたくないからだ。
ダセー姿も隠せば問題ないってね。
「いくぞ……声とか出すなよ、魔法も勝手に使うなよ、いいな!?」
「「「ラジャー!!」」」
意を決してダンジョンの中へと入る。
仲間は全部で10人。役職もバランスよく配置。
俺は仲間達から見て、中心よりやや後ろ目のポジションで待機する。
理由はもちろん、万が一の時は仲間を肉壁にして逃げるため。
「さぁ、いつでも出てきやがれ……へへ」
これで完璧だ。
頭の中で成功するイメージを膨らませる。
そんな時だった。
ザシュッ
「は?」
ブシュゥゥ……ドサッ
俺の目の前にいた仲間の一人の首が、大量の血と共に斬り捨てられた。
「わああああああああ!? 勝人おおおおおお!?」
「どこだ!? 敵はどこにいるんだ!!」
「こんなとこ来るんじゃなかったぁ!!」
「お、落ち着けお前ら!! 敵が近くに……」
動揺して泣き叫び、戦意を失った仲間たちを無理やり抑えようとするも
グサッ!!
ドシャッ!!
ズサァ!!
「あ……」
次から次へと、見えない斬撃によって倒されていく。
『suuuu…』
「な、なんだこいつ!?」
闇に隠れてはいたものの、うっすらと姿が見えた。
黒い鎧と影に身を包み、低い唸り声と共にギラリと血まみれの剣を握る謎の騎士。
まさか……あいつがSランクモンスター!?
『uu……』
「ひっ!?」
こっちを見てる!?
やばい、何とかしないとあいつに殺される!!
「こんちくしょおおおおおお!! バーニングウィップ!!」
やけくそ気味に炎の鞭を謎の騎士に振るう。
鞭は勢いよく謎の騎士の方へと向かって行き、今にも強烈な一撃が与えられるかと思っていた時だった。
「へ? 消えた!?」
鞭が当たる瞬間、謎の騎士の姿が消えた。
「どこだ!? どこにいやがる!?」
四方八方に振り返り、謎の騎士の姿を探す。
あいつの隠密能力は群を抜いている。
早く見つけなければ、あいつに多くの時間を与え、より有利な場所まで移動されてしまう。
「いやだ、いやだいやだいやだ!!」
俺が死ぬ……
自らの終わりを実感したその時、わずかな冷静ささえも失われてしまった。
だがここはダンジョン。
油断した者から死んでいく。
『uuu!!』
「わああああああああ!?」
次の瞬間、謎の騎士が俺の懐まで迫っていた。
終わった……そう思い、思わず目を閉じたのだが。
「が、は……」
「え?」
謎の騎士が剣を突き刺したのは、俺ではなく近くにいた仲間だった。
仲間の首元がドクドクと大量の血と共にズタズタにされ、剣を抜くとドサッと地面に倒れ込んだ。
「うわあああああああああああ!!」
その隙を見て俺は全力で逃げた。
名誉とかそんなもの知らない。
今はただ、この化け物から必死で逃げたかった。
例え仲間を犠牲にし、みっともない姿を晒したとしてもだ。
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