第13話 VS影の騎士
『shuuu……』
影の騎士が影をまとい、姿を消す。
奇襲のつもりか?
僅かな気配を感じ取るべく、精神を集中させる。
右……左……正面……後ろ……
「右斜め後ろだよ!!」
「っ!! はぁっ!!」
咄嗟のれなの指示通り身体を動かし、剣を振るう。
剣は見事に影の騎士の剣とガキィン!!とぶつかり、そのまま両者の距離を離した。
「よくわかったな……ありがとう」
「こう見えて気配を察知するのは得意だからね~♪」
そういえば、れなの【狙撃手】にそんな説明文があったような。
何にせよ、これで厄介な動きを一つ潰せた。
と、少し安心していた時、影の騎士が前に大きく出て剣の連撃を放った。
『uuuuu!!』
「くっ……はっ……!!」
キィン!! キィン!! ガァン!!
互いの剣がぶつかり合う。
奇襲から正面の突撃への切り替え。
あの一瞬で、姿を消す事に意味がないと理解したのか?
何という学習能力。
モンスターにしては賢すぎるな……
『ッ!!』
数十秒ほど斬り合った後、影の騎士は再び距離を取り、漆黒の魔力を手に集め始めた。
「させないっ!! フレイムショット!!」
隙を見つけ、後方のれなが影の騎士に向けて炎の弾を発射する。
だが、
「uuu……」
「や、やっぱり効かない?」
「いや……効かないというよりすり抜けたな」
「影には実体がない。恐らく、コアか別の場所に触れられる場所がある筈」
真白の言う通り、いくら上位モンスターといえど必ず実体はあるはず。
問題はその実体をどう捉えるかなんだが……
「Suuuu!!」
ブォン!! と巨大な影の渦がこちらに回転しながら迫る。
もう魔力を貯め終わったのか!?
何もかもが規格外な影の騎士の攻撃に動揺する中、今度は真白が俺の正面に飛び出した。
「ホーリーシールド……!!」
コォオオオ……っと神々しい光が盾を包み、邪悪な影を打ち消そうと反発し合う。
基本的に影などの闇属性は光属性に弱い。
この戦闘において、真白の存在はかなり心強い。
「ふぅ……」
少し経った後、影が完全に打ち消されたのを確認すると、真白は魔法を解いた。
が、
「うっ……」
「大丈夫か!?」
「あの影……触れるだけでかなり気持ち悪い」
「気持ち悪い?」
ガクン、と真白は地面に膝をついてしまった。
気分的な問題ではなく体調的な意味か?
俺は影に向けて鑑定魔法を使う。
【謎の影】
触れた者に”弱化(強)”を与える。
”弱化”
属性魔法の力が減少し、動きが鈍くなる。
「”弱化”……これが原因か」
「そんなデバフが……長期戦になればかなり厳しくなりそう」
「まずいね……無名くんは大丈夫そう?」
「俺は今のところ何ともない……だが油断はできないな」
俺は真白と違って、影魔法を直接喰らったりはしていない。
だが連続して喰らえば、俺も全力を発揮できなくなるだろう。
学習力の高い影の騎士は、今の状況を見て影魔法を連発してくるに決まっている。
「エアストブラスト!!」
『Suuuu!!』
「影の騎士は俺が前線で対処する!! 二人は後方から支援してくれ!!」
「わかった!!」
「了解」
エアストブラストで影の騎士を遠くへ吹き飛ばす。
二人が影魔法のデバフを喰らい続けるのはマズい。
ここは素早い動きができる俺が前で戦う方がいいだろう。
「そらいけっ!!」
まずは”複製”した”跳剣”で影の騎士の実体を探す。
短剣が壁や地面を飛び跳ねるように動き、影の騎士の体へと迫る。
スカッ
スカッ
スカッ
頭、身体、足
そのどれもに命中したはずだが、全てが通り抜けた。
どこだ……ヤツの実体は。
(待てよ……あいつ剣を握る時に……)
足はあるけど足音はない。
壁にぶつかっても、金属が当たったような音はしない。
だけど剣を握った時は……
「……」
ググッ……
影の騎士が剣を握りしめると、わずかにきしんだ音が聞こえた。
「そこかっ!! ”操演”!!」
”跳剣”にさらに魔法をかけ、動きを制御させる。
”操演”はある一定の大きさまでのものを自由自在に動かせる無属性魔法。
『uuu?』
ゆらゆらと不規則な動きを始める”跳剣”が影の騎士に迫る。
これを使って狙うのはただ一点……ヤツの手元だ。
ドガァン!!
『Suuuuu!!』
「よし!!」
狙い通り!! 影の騎士の実体は手だ!!
「ナイス無名くん!!」
「流石!!」
「弱点はわかった!! 後はそこを集中攻撃すれば……」
希望が見えた、その時だった。
『uuuuuuuuuu!!』
「「「!?」」」
影の騎士が体をパーツのようにバラバラに分裂させ、ヒュンヒュン!!と高速で攻撃を仕掛けてきたのだ。
しかも、大量の影魔法の弾と共に。
「”無砲弾”!! 更に”複製”!! ”操演”!!」
既に発動させた”跳剣”と無属性の弾である”無砲弾”を展開し、それら全てに”複製”をかける。
連撃には連撃。
大量展開した弾に”操演”をかけ、影の騎士の猛攻を防ぐべく発射した。
「くっ!!」
ドガガガガガガガガガガッ!!
いくつもの魔法が空中でぶつかり合い、爆発する。
「やばっ!?」
しかし、手数を増やしても限界はある。
俺が作り上げた弾幕をすり抜けて、後方で支援している二人の元へ弾が飛んでいく。
まずい、このままだと攻撃が……!!
「アタシも落とすから安心して!! ウィンドガトリング!!」
「ガードと回復は任せて。ホーリーフィールド」
と、少し焦っていたのだが、れなと真白が撃ち漏れの対処をしてくれた。
流石Aランク、非常に助かる。
「よし……後は倒すだけだな」
これで俺は影の騎士を倒すことに専念できるのだが……問題はその倒し方だ。
影の騎士は現在、弱点である手を含めて高速で自由自在に動いている。
縦横無尽に飛び回る手に攻撃を命中させるのは非常に困難。
スピードを重視して攻撃した所で、致命傷にはならない。
長引けが長引くほど影のデバフが俺達を蝕み、いずれ状況は不利になっていくだろう。
どうしようか……
「……そういえば」
俺の潜在スキルにこんな説明があったな。
”組み合わせて新たな魔法を創造することも可能”
こいつを使えば……もしかして影の騎士に?
「試してみる価値はありそうだな」
シュウウウ……
連射し続けている最中に一つの魔法を創造する。
「これは……」
その魔法は、俺が見たこともないような輝きと力を秘めていた。
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