第10話 初配信からの初戦闘
「こちらのお方こそ、アタシ達を助けてくれた音梨無名くんだよー!! つまり英雄!!」
「盛りすぎ盛りすぎ」
そこまで大きな存在ではないと思うが。
しかし、コメント欄の反応がやけに好意的だ。
新しいメンバーかつ、異性というのは多少は賛否が分かれそうなのに。
「なんか告知とかしてた?」
「新メンバー登場ってトゥイターで告知しただけ」
「それだけか……」
えー? 本当になんなんだー?
俺、オトプロについて何も知らないからマジでわかんない。
疑問だらけの状況に頭を悩ませていると、コメント欄が更に加速し始める。
〜コメント欄〜
・新 た な 犠 牲 者
・下の英雄にキミは慣れるか
・ツッコミで寝込むぞこいつ
・葬式はあげてやるよ
「ん?」
なんかおかしくね?
同情というか妙な応援が多いというか……
どれもこれも俺の体調を心配する声ばかり。
ダンジョン配信というのはそこまでハードなものなのか?
『彼女の生々しいボケに動揺する男性という図が結構人気なのさ』
そういえばリゼさんがこんな事を言っていたような……
「あー無名くん緊張して固まってるねぇ。リラックスしていこーよ? あ、下も固くなっちゃって動けないのかな♡」
「いらん心配をどうもありがとう」
「美少女二人に挟まれて無反応……インポ?」
「まだまだ元気だわ!!」
「きゃー♡ 無名くんのえっちー♡」
「へんたーい」
「あああああああああああ!!」
下ネタセクハラのラッシュで一気にストレスが溜まっていく!!
こーいうことかよ、ちくしょうめ!!
見てる側は楽しいかもしんないが、やられる側はたまったもんじゃねぇな!!
コメント欄
・早速弄ばれてて草
・wwwwww
・頑張れ新人
・生きろよ
・Good luck!!(訳:頑張れよ!!)
「ちくしょおおおおお!! やってやらぁ!!」
配信を開始して約5分が経過。
俺の立ち位置が確定した瞬間であった。
ドガァアアアアン!!
「グオオオオオオオ!!」
「あ、叫んだからモンスターが寄ってきた」
「何してるの?」
「半分お前らのせいだろ!?」
轟音と共に虎のモンスターが岩を突き破って出現した。
入り口付近にはあまりモンスターがいないはずなんだけどなぁ、どんだけデカかったんだ俺の声。
「サーペントタイガーか……生で見るのは初めてだがデカいな」
自らの顎よりも長く、鋭く伸びた2本の牙が特徴的なサーペントタイガー。
推定ランクA+。たった一体でパーティーを一瞬で壊滅させる狂暴なハンターだ。
グルルル……と唸り声を上げながら俺たちの方へじわじわと近寄り、今にも襲いかかろうとしている。
ヤツが出現した瞬間、全員が戦闘態勢に入ったおかげで攻める隙を無くしているが、油断は禁物。
例え相手が格下だろうと、ダンジョンでは常に死が付き纏っている。
「思った以上にヤバそうなやつが来たねー。どうする?」
「俺が前線で戦うから隙を見て援護をしてほしい」
「「了解ー」」
いつの間にか俺がリーダーみたいに指示をしているけどいいのだろうか?
2人が俺より後方に下がり、いつでも支援ができる体制を整えた。
コメント
・サーペントタイガー!?
・いきなりボス級じゃねぇか!!
・逃げて!!超逃げて!!
・わああああああああああ!!
コメントの方をチラッと見れば、リスナーたちが阿鼻叫喚の反応をしている。
……流石にA+は動揺するよな。
俺だって緊張している。
ただ、俺の潜在スキルはSまで覚醒している。
想定以上の実力を発揮できているのは事実だし、未知数な部分だって多い。
後は場数をこなして、戦闘に対する自信をつけるだけ……!!
「”剣山”!!」
牽制用にサーペントタイガー周辺の地面に無数の剣を生やした。
一瞬で現れた剣にサーペントタイガーは動揺し、足に傷を負う。
「グゥオ!!」
「なるほど……”剣山”を喰らい続けるとやばいって本能で察したのか」
ダメージを負いながらも力を込め、剣の地面から安全な壁の方へと飛び上がる。
そして壁に足をつけたと同時に足をグググッ……としならせ、バネのように俺の方目掛けて襲いかかった。
「速すぎじゃない!? 今すぐ狙撃を……」
「いや!! まだ援護は大丈夫だ!!」
「え!?」
サーペントタイガーは今のところ”剣山”を使用した俺のみを狙っている。
なら、その状況を利用して、さらに有利な場面へと戦局を傾けて一気に畳みかけた方がいい。
俺は力を込めて剣を構え、サーペントタイガーの突撃に備えた。
「ガァアアアアアア!!」
ガァン!!
「グオオオオオオ!!」
「ぐぎぎぎぎぎ……!!」
「受け止めた!?」
「亜人でもないのに……」
なんて力だこいつ!?
その辺のAランクモンスターの倍くらいはあるぞ!!
A+の名は伊達じゃねぇな……!!
だけど力は強くても所詮は突撃、要は真っすぐだ。
力の方向は正面のみだし、この程度ならなんとか出来るハズ。
「うおおおおおお……!!」
剣と共に体を徐々にそらし、正面にかかり続ける力を受け流すように防御する。
そして行き場を失って軽くなったところを俺が後ろから……
「はぁ!!」
思いっきり蹴り飛ばす!!
「グオアアアアアアアア!!」
ドォン!! ガラガラガラァ!!
正面突撃と蹴りのエネルギーが合わさり、サーペントタイガーは勢いよく壁に激突した。
「え、A+モンスターを魔法無しで受け切った……!?」
「とどめぇ!!」
防御も出来ない隙だらけの状態に、攻撃を一気に叩き込む。
無属性の魔法が雨あられのようにサーペントタイガーへと襲い掛かった。
ドガガガガガガガガッ!!
「よしっ!!」
サーペントタイガーはピクリとも動かなくなった後、粒子となって魔石と素材に変化した。
「よーし、なんとかなったー」
「無名くんさぁ……」
「ん? なんだ?」
サーペントサーベルがいた場所に近づき、素材を回収している時だった。
れなが後ろから声を震わせながら話しかけてきた。
そんな怖いものを見たような顔をしなくても……と内心思っていたのだが、
「これ、アタシ達いるのかなぁ?」
「姉さんと同じく」
「え……滅茶苦茶ありがたいけど……?」
「そ、そうなんだー……」
え? なんで困惑してるんですか?
俺また何かやらかした?
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
よければ、ブックマークと☆評価をしていただけると励みになりますので、よろしくお願いします!




