はじめての吸血鬼
その日は雲一つ無い大空で、涼しい風が吹いていた。
人々が騒がしく動き出す頃、唯一双葉高校1年D組の教室は、静寂が支配していた。
生徒の机には、ついさっきまで生徒が過ごしていたかのような痕跡があった。
ぽっかりと音が消えた教室に、柔らかい風が入ってきた。
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目を覚ました時、俺が始めにトライしたのは、瞼を開くことだった。
……開かないッ、だとォ!!?!
平均的な筋力は持ってたはずだが、俺の瞼はピクリともしなかった。
何で? え?授業中にちょっと目を閉じただけじゃん!?
俺が焦り始めると、急に両脇をグッと掴まれ抱き上げられた。
ギィヤーーーー!!?!
え?俺って50キロはあるはずだよ?
何を軽々持ち上げてんの? は?
俺は驚きで目を開くことに成功し、俺を抱き上げた人物が視界に入った。
そいつは30を過ぎたぐらいの、イケメン男だった。
何こいつ?こいつが俺持ち上げてんの?
「お前の名は……そうだな、アズサにしよう!
お前は今からアズサ·ドーラスカだ!」
……こいつ何言ってんの?
その瞬間、俺はある物語を思い出した。
本屋で気まぐれに買ったラノベの類い。
その本の内容は、主人公が異世界に転生して、チートで無双するという話だ。
読んだ時はファンタジーだなあとか思っていたけど、これは
考えを改めることになりそうである。
もしかしたら俺、転生したかもしんない。
けど俺なんで死んだんだろ……
熱中症? 脳内出血? 心不全とか?
どれも身に覚えがないけど…
さっきまで普通に授業受けてたし。
俺が考えに耽っていると、隣の女性から心配そうな声が聞こえてきた。
「この子全然泣かないけど、大丈夫かしら?」
その声で、俺は目を覚ましてから呼吸してないことを思い出した。
俺は息をおもいっきり吸った。
「オ、オギィャアアアァァア!!!!」
泣き始めると、息がスッと出来るようになってくる。
……ん? なんか周りが静かになったような?
そうすること約3分、絞り出したような声が、隣の女性から聞こえてきた。
「この子……吸血鬼だわ…歯が特徴的だもの、間違い無いわ」
それに続くように、さらに声が聞こえてくる。
「吸血鬼ですって!?公爵様のご子息が吸血鬼だなんて!」
「吸血鬼は不吉の象徴では?」
「これでは跡継ぎが……」
「あの子危険じゃないのかしら?」
どうやら周りのメイドっぽい人たちが喋っているらしい。
イケメン男と隣の女性は、目を見開いて固まっていた。
かくいう俺もポカンとしていたが、少しずつ事情が飲み込めて来た。
今世の俺は吸血鬼らしい。