上
なろう系小説というものを勉強するために、書いて見ました。
短編にしようと思ったのですが、無駄に設定を盛り込み過ぎて、長くなってしまったので三部作にします。
感想などをお聞かせ願えたら嬉しいです
その日私たちは、三日後に控えた皇太子の婚約者選抜パーティーに出席するため、わざわざ最東の領地から中央の王都まで、馬車を走らせて向かっていた。
私は皇太子の花嫁なんて興味ないってのに、母さんがどうしてもっていうから、仕方無しにだ。
だいたい花嫁なんて、どうせ貴族の間から決めるんだから、くじ引きにでもすればいい。
なんでこちらから、出向かなければならないのか……。
「アールグレイ、なんて顔をしているのです。あなたは元は良いのだから、もっと微笑みなさいな。そんなことでは、選ばれるものも選ばれませんよ?」
馬車の窓枠に頬杖を着いて、窓の外を眺めていたら、母さんに嘆息して窘めてきた。
私が嫌がってるのを分かって連れてきたのだから、道中くらいは許してほしい。
「母さん、だから言ってるでしょう? 私には皇太子妃とか無理だって」
「まったく、あなたは優秀なのですから、その気になればなんでもできるというのに、やる気が出さないのですから……」
母さんはそう言って嘆息した。私だって本当にやらなきゃと思うことなら全力を出すけど、今はその時ではない。
皇太子に見初められて皇太妃になり、やがては王妃になる。母さんはそれを望んでいるようだけど、それは私の生き方ではない。
それなら婿養子を取って、実家の公爵家を盛り上げるほうが性に合っている。
どうして分かってもらえないのだろう。
「まぁまぁ、よろしいではありませんか。お母さま。皇太子さまのお心は、このセイロンが掴んで見せますわ。お姉さまにはご自由に生きていただいたほうが、よろしいかと思います」
私の妹のセイロンが、天使のような微笑みを浮かべて言った。
姉妹なだけに、私と同じに、銀髪に青い目と言う、初対面の人に冷たい印象を与えてしまう外見を持ちながらも、朗らかな表情と人懐っこい性格で誰からも愛される、世界で一番可愛い妹だ。
「セイロン。あなたは、皇太妃になる前にまだまだ学ぶことがあります。可愛いだけでは、乗り越えられないものもあるのですよ」
母さんは、セイロンを見て優しく髪を撫でながら慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、語り掛けた。
「そうして、すぐに私を子供扱いなさいますね。私ももう立派な淑女なのですよ」
セイロンは拗ねてしまったが、仕方がない。五つ離れているから、まだ十二才なのだ。
「はいはーい。私もまだまだ学ぶことはたくさんあります」
私はセイロンに便乗した。
「そうですね。あなたは王室で、みっちりと教育されなさい」
母さんは、冷ややかな視線を私に向けて、王室に入ることを前提に話を勧めてくる。
藪蛇だったか……。
そのとき、馬が高く嘶き、馭者が悲鳴を上げて馬車が急停止した。
私は咄嗟に母さんと、セイロンを抱きしめて衝撃に備える。
三人で纏まっていればそれなりの重量になるが、一人ひとりだと、下手したら投げ出され兼ねないほどに、激しく馬車が揺れたからだ。
私は二人を見た。二人は、軽く脳震盪を起こしているが、それほど深刻な症状はないようだ。
私は二人に状態異常の回復と、打ち身などがあった場合を想定して治癒を掛ける。
「何事か!」
それと同時に馭者に、状況の報告を求める。
「お嬢様! モンスターでございます。すぐに引き返しますので、外に出るような真似ははお控えください」
馭者は慌ててはいるが、取り乱した様子はなく、必死で馬車を制御しようとしているが、我を忘れた馬を宥めるのは難しいらしく、馬の嘶く声と馬車の激しい揺れは止まらない。
「モンスターなど、私が追い払ってやる!」
私は二人の回復を終えると、馬車のゴンドラを開け放ち、揺れる馬車から飛び出した。
「ああ、お嬢様。私が奥様に叱られてしまいます!」
アクシデントが起きてしまったのだ。これは皇太妃のお妃探しのパーティーに行けなくても仕方がない。うん、仕方がない。
馬車から出た私が見たものは、馬車を囲んでいる数人の人狼だった。
「どうやら、知性はないほうのようね」
私は、低く唸りを上げながら近付いてくる人狼を見て、そう判断した。
人狼、人獣と呼ばれる彼らは二種類に別れる。人間と交流を求めるものと、獲物としか見なさないものである。
前者は人獣同士、または人間との生活を得て、高い知性と理性を持つものたちだ。
中には、人間を伴侶に持つものさえいる。
そして後者は、人獣が獣と交配を繰り返し、血脈と一緒に脳が退化していったものたちだ。こっちの人獣は、人間の器用さと獣の身体能力を兼ね揃えた、非常に厄介な野生の獣である。
私は向かってくる人獣を後者と判断した。
理由は簡単だ。服を着ていなかった。
前者の場合、後者のフリをして強奪行動をしても、恨みに駆られて殺戮者になろうと、全裸である前例がない。
私は強い攻撃魔法は使えないから、さっさと眠らせてしまおう。
私が今にも飛び掛かって来ようとする、人獣たちを全部一度に眠らせようと呪文の詠唱に入ろうとしたときだった。
「獣たちよ、貴様らの相手はこっちだ!」
その時、森の茂みから鎧を来た騎士が姿を表した。