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第13話「英雄達の大敗」

「――以上が任務報告だヨ」


「ご苦労じゃった」


 テッペーを病院に送ったアルファと、腕の治療を行なったハートレッドはクロノスに事の顛末を報告していた。


 ――ノーマル級約700体、レア級4体、スーパー級1体のアヤカシ討伐報告。


 ――アルファ離脱直後に現れたもう1体のスーパー級アヤカシのこと。


 ――テッペーとハートレッドの奮闘によって1度は仕留めるも即座に復活したこと。


 ――その際にアヤカシは“進化”し、『真神(まかみ)』という名前を得たこと。


 壮絶な1日だった。しかもそれらが1時間以内に全て起こったというのだ。そんな話は長くSSS(トリプルエス)に勤めているクロノスですら滅多に聞かない。


(頭が痛いのう……)


 クロノスは全部放り出してしまいたい衝動をグッと堪える。そしてまず手始めに情報の整理を行なうことにした。


「……真神の異能は『再生』で間違いないんじゃな?」


「ヤツは異能を使用せず肉弾戦ばかり仕掛けていた。報告書にも書いた通り他にも色々根拠はあるが、何より傷がすぐに治るというのは他のアヤカシには無かった特徴。だからそう判断したのサ」


「成程のう」


 聞く限りであれば、真神はウルトラ級に匹敵するがSSSの基準である“銀河系の破壊”には届かなそうではある。発動するだけで直接破壊出来るような異能では無いからだ。


 しかしこの先、真神が更なる()()()()()()()となると話は違ってくる。


 長く生きたアヤカシは、何故か分からないが複数の異能を持ってるのだ。その点で見ると『再生』は、長く生存するには最も適していると言えるだろう。


 そうなると近い将来、人類最大の敵(レジェンド級)として立ちはだかってくる事も容易に想像出来てしまう。


 噂のウルトラ級に加え、新たなアヤカシ『真神』の登場。


 ザ・ワンがあの時、まだスーパー級だった真神を討伐出来ていればこうはならなかっただろうが“覆水盆に返らず”だ。今更言っても仕方ない上、態々呼び出して責任を負わせる暇もない。


「真神を野放しには出来ん。一刻も早く討伐するべきじゃ」


「間違いないネ。ヤツはあの『崇徳(すとく)』を超える潜在能力(ポテンシャル)を秘めているかもしれない」


「そうじゃ。もう2度とあのような悲劇は起こさせるワケにはいかん」


「――ちょい待ち」


 クロノスとハートレッドが話していると、黙っていたアルファが口を挟んだ。


「何じゃ」


「ストクって何ですか? アヤカシ?」


 初めて聞く名前に興味を示したアルファ。話を聞くに“ストク”というのはアヤカシなのだと考える彼女だが、個人で調べるよりここは訊くのが吉だと考えたのだろう。


 今回のテッペーみたいにいきなり格上と遭遇し、戦闘となる可能性は大いにある。


 情報は武器である。最たる例で言うと、テッペーが使う武器が実は妖刀だったという情報。それをアヤカシ側が一切知らなかった事で不意討ちのような形でぶつける事が出来たのだ。

 持つべきは優位性(アドバンテージ)。アルファは備える為に情報を得ようとする。


 そして訊かれたクロノスは、ゆっくりと口を開いた。


「――ならば17年前の出来事から話さんといかんのう。アルファ、()()()()()()()()()に起こった事じゃ」



 ◆



 西暦2492年。惑星キョート、巨大採掘場『ヘアン』に1体のアヤカシが現れた。


 名は『崇徳(すとく)』。

 当時、存在は既に確認されておりウルトラ級として登録済みである。


 銀河系を破壊出来る生物が自分たちが住む星に降り立った事に気付いたSSSは、所属しているヒーロー全て動員して対処に当たった。


 最前線には『クロノス』や、当時ウルトラ級の『ザ・ワン』に加え、既にレジェンド級であり現在も活動している『エンキ』というヒーローもいる。負けはないと思われた。


 ―――しかし結果は、人類の敗北。


 崇徳は度重なる戦闘によってボロボロ、対してヒーローの殆どは戦死。ザ・ワンに至っては、左腕を失う重傷を負う事となってしまった。


 加えて、崇徳の異能『大火(たいか)』によって巨大採掘場『ヘアン』を中心に炎は燃え広がり、惑星の半分が火の海と化してしまった始末。


 その後、ヒーロー達を完全に滅ぼさず何故か立ち去った崇徳は“SSSが総力を挙げても殺しきれなかった”として()()()()()()()()()()に登録されたのだ。



 ◇



「……『崇徳』は今も生きておる。この宇宙の脅威は、真神や噂のアヤカシだけでは無いのじゃ」


 想像していたモノより何倍も規模の大きい話だと思わなかったアルファは驚きを隠せない。


 何より『ヘアン』から惑星の半分まで燃え広がったということは、つまりこの今いる中心都市『ナカギョー』も()()()()()()()()()()()()という事になる。


 一方で、アヤカシと違って故意ではないが最近同じ様な事をしてしまったアルファは居心地の悪さを感じた。


(あー、さっさと借金消えないかなぁ)


 今すぐにでもこの星を出て行きたい。なんか遠征とか言ってここじゃない他の銀河まで行けたらいいな、とアルファは思う。


 同時に彼女には気になる事がある。


「アタシの借金、あと幾ら残ってるんです?」


「何故ここで借金の話なんじゃ? まあいい、あと1998億ネルくらいじゃったかの」


(あれ? 全然減ってないじゃんウケる)


 それなりに戦ったつもりのアルファだったが、憎たらしい事に借金は健在。


 だが悲観する事はない。何故ならたった2回の任務で2億ネルも返済出来ているから。借金さえ無ければ今頃、億万長者だっただろう。


 まあ借金の元となった事件が無ければそもそも彼女はヒーローにすらなっていないが。


「あ、そうじゃ」


 クロノスが何かを思い出したような様子を見せると、次にこう言い始めた。


「復活したとはいえスーパー級の討伐には成功しておる。そしてウルトラ級を退けたとして、テッペーは今日からスーパー級とする」


「はぁ!?」


 この瞬間、()()()()()()()でスーパー級ヒーローになった男が誕生したのだった。

崇徳(すとく)(レジェンド級):正体不明。持つ異能は『大火(たいか)

 クロノスや、ザ・ワンなどが束になって掛かっても倒せなかった化け物。惑星を半分、焼け野原に変える事が出来る。

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