ランウェール防衛戦
ゥウーォオーォオー! ゥウーォオーォオー!
けたたましいサイレンの音。驚きで身体を縮こませたのはわたしだけで、周りは歓声を上げていた。
「魔物だ! ランクアップするチャンスだぞ!」
そう叫んでギルドを飛び出していく。その間にサイレンは止み、避難放送が始まっていた。
「魔物を確認。魔物を確認。住民は直ちに避難してください。冒険者の皆様は討伐をお願い致します。魔物のレベルは中規模戦闘級以上に相当します。繰り返します__」
って、ワイバーン並のやつだよね!? 嬉々として倒せるレベルじゃなくない?
「冒険者がおおよそ一〇〇人か。連携が取れるなら、余裕で勝てるだろうな」
連携が取れるなら? 中規模戦闘は一〇から一五人で組んだグループで戦うことだ。そのレベルで討伐可能なんだったら、さすがに数で圧倒できるんじゃないの?
聞いてみると、どうやらこういうときには数より質らしい。ギルドにいた者のほとんどがソロとパーティだったから、ほとんどが初対面か、せいぜい顔見知り程度の関係なのだそうだ。本来の中規模戦闘は普段から共にいる仲間で形成されるために、大規模戦闘級の人数だというのに、下手したら中規模戦闘級にすら届かない可能性もあるらしい。
あれ? 結構やばくない? ほんとに勝てるの? だんだん不安になってきた。
「俺たちも行くか。落ち着け、いつもの魔物と同じように戦えばいい」
つまり、わたしは後方支援を中心に、守りを固めながら隙を突けばいいってことだね。魔法使いにも関わらず前衛に行くフォゼが心配ではあるけど、なんか思ってたよりすごい実力者っぽいから大丈夫でしょ。万が一のときはわたしの腕の見せ所ってことで。
さて、当然ながら歩くだの走るだのそんな時間はもったいない。門までに人が多くてタイムロスになりかねないからだ。そこで、わたしたちは飛んで行くことにした。フォゼは当然だけど四次元バッグにしまっていた箒を拡縮魔法で大きさを戻して乗っている。
わたしはというと、空中を飛歩できるようになっていた。かなり魔力を消耗するんだけどね。タンッと空気を踏むと、水面に広がる波紋のように空気が揺れる。重力魔法、反重力の応用だ。ちなみにこれは、魔法を技術として発展させたもので、空中飛歩という。これを習得するのにここ数日のすべての暇な時間を費やしてたから、わたしは他の魔法を全く覚えてないんだけどね。まあ、冥土之扉みたいに即興でなんとかできないかな?
空を飛ぶことで時間を短縮して高い門を越えて外に出る。そこにいたのは、超巨大なフェオンスライムだった。わたしが初めて出会った魔物もフェオンスライムだったけど、それとは比較にならないほど大きい。ポヨンポヨンの身体は攻撃を通さず、半端な魔法は吸収されているのが見える。
「……天青石以上じゃないと厳しくないか? 大規模戦闘級の大物だな、これは」
ポツリとフォゼが漏らした独り言はわたしの耳に届いてしまった。天青石がどれくらいの冒険者階級なのか知らないけど、要するにそこそこの実力がないとダメージを与えられないってことだよね? そんな相手と戦いたくないんだけど!?
そんな意志とは反対に、わたしたちは戦場に到着した。
まず、最大奥義は使えない。周りを巻き込む技は危険すぎるからだ。特にあれは制御不能の封印モノだし。
まあ、とりあえず。
「プロテクト!」
この場にいる__と言っても、前衛で戦ってる人だけにだけど__全員に護りの魔法を付与する。よほどの攻撃じゃなければ、これで何回かは耐えられるはずだ。
「リフレクション」
フォゼの詠唱の直後、フェオンスライムの周りが円柱型の結界が囲われた。それを壊すため、スライムは竜巻を起こす。もちろんただの竜巻なわけがなく、吹いている風は鋭い刃だ。巻き込まれたらひとたまりもないだろう。
だけど、フォゼの結界がそう簡単に破れるわけはなく。刃はすべてそのままスライムに跳ね返った。自分の全力攻撃をもろに食らったスライムはズタズタに切り裂かれる。そして少しずつその傷が塞がっていく。
回復してくる相手って、一番厄介じゃない? こっちも回復してるからお互い様ではあるんだけどね。
そういえば巨大スライムって、インヌメルムの序盤ボスじゃなかった? テレビCMでボスの紹介あったけど……。たしか、領域有魔ってやつだったはず。一つわかった。ゲームより数倍強いわ。推奨レベル三とかありえないもん。わたし、今レベル五だよ? 前衛冒険者は確実にわたしより上……ってか、わたしが一番レベル低いと思うんだけど。
「拡声魔法。……全員、聞け」
戦場にフォゼの声が響く。
「俺は十二秀宝石の蛋白石だ」
その言葉で戦場がざわめいた。
「こいつはただの魔物じゃない。討伐のため、俺の指示に従ってもらおう」
再度、戦場がざわめく。
「いきなり人に従えだと!? ふざけてんのか!?」
「自由が冒険者の特権だぁっ!」
「いやいや、蛋白石って、冒険者のトップだろ!? 逆らえねぇよ!」
「てか、十二秀宝石って時点で逆らえるわけないだろ」
フォゼ、トップ層に食い込んでるだけじゃなかった。最強冒険者だったよ。
「こいつは攻撃しようが回復する。一気にかたをつけない限り持久戦だ。そうなればこちらは圧倒的に不利。さらに、すぐ後ろは一般市民が暮らす街がある。……これより、ランウェール防衛戦を開始する! 天青石以上の者のみ残り、他の者はランウェールの護りに徹しろ! 手柄を立てた者にはランクを二つ上げるように口添えしてやる!」
「おおおおおおおおおおおっ!」
結局フォゼに従うようだ。現金だなぁ。まあ、二つも上がればかなり違うか。わたしだって、尖晶石を飛び級して紅水晶になるチャンスだ。それに、たしかに街は護らないと。俄然やる気出てきた。フォゼ、やる気を煽るの上手すぎる!
って、うん? わたし、天青石以下じゃん。防衛組はチャンス薄いかなぁ?
「レサルはこっちだ」
フォゼに呼ばれてわたしは戦闘組に付いていく。
「いいの? わたし、一番下だよ?」
「実力だけなら余裕で宝石の後半クラスだ。問題ない」
あ、そうなのね。異世界人だから実力だけはあるってことなのかな? それを発揮できてないのは、慣れてないからだと思う。
「フォゼがそう言うなら間違いないね。行こう! 指示を出して。開戦だよ!」
「……ああ、任せろ」
それだけ残して、彼は再び箒に乗って空に舞う。戦況は上からのほうがわかりやすい。わたしは後衛としての役割を果たすべく、呪文を叫んだ。
「運命之女神微笑!」
今回は冒険者階級が出てきましたね。わかりにくいので説明します。
まず、ランクです。下から、水晶、宝石、十二秀宝石の三つに分けられます。
次に、水晶についてです。下から、煙水晶、尖晶石、紅水晶、藍晶石です。
続いて、宝石についてです。下から、琥珀、瑪瑙、蛍石、天青石、金紅石、菫青石、電気石、黒曜石です。
最後に、十二秀宝石についてです。下から、真珠、紫水晶、黄水晶、橄欖石、天藍石、金緑石、金剛石、翡翠輝石、緑柱石、柘榴石、黝簾石、蛋白石です。十二秀宝石は一ランクに一人しか所属できないため、この一二人は超精鋭冒険者です。
一番多いのは宝石ランクです。
長々とすみません。今回からバトル開始です。ワイバーン並みの強さで、攻撃が通りにくい相手とどう戦うのでしょうね?
応援よろしくお願いします!




