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巫女の異世界転移録  作者: 江蓮 蒼月
第一部 RPG攻略序盤、物語が現実に
17/20

帝国軍VSゴブリン軍

遠隔発声(ファーボイス)拡声魔法(クオダーボイス)。……ヴァルハザク、このペンダントを音源にしておいたから持っていろ。俺は親玉のところに行くから、後は頼んだ」

「わかりました。人型二体はお任せします。残りは我々帝国軍にお任せください」

 キリッとした表情で請け負う軍団長。いや、いいの……? 人型がどれだけ強いかは知らないけど、異形型四体とゴブリンの軍勢はバランス的に厳しくない?

 わたしはそう思ったけど、後に彼らが正しかったのだと考えを改めることになる。


「戦闘、開始だ」

 フォゼの一言で全てが動き始めた。

 わたしは空中飛歩(シエルウォーク)、フォゼは箒、テーサは翼というそれぞれの飛行法で空に駆け上がる。__足を使ってるのはわたしだけだけど。

 ゴブリンの軍勢の上を飛び越える。高原は草の一本すら見えないくらい辺り一面、ゴブリンだらけだった。

「フォゼ、レサル、そろそろ着くぞ」

 テーサのその言葉で、わたしたちは徐々に降下していった。


 異様な気配がした。魔力が一点に集中しているような、違和感のある魔流を感じたのだ。

「避けろ!」

 急旋回で「何か」を避ける。次の瞬間、真横に熱線が通った。熱気で頬がヒリ、と痛む。

「魔術師系か。それも、炎の」

 フォゼの冷静で苦々しげな発言から、相性が悪いことが察せられた。それもそうか。高原の方に出ていればもう少しマシなんだろうけど、ここは森。一面が火の海になるのは時間の問題だ。それに__この戦いで全力を出すことはできない。人型有識魔はもう一体いるのだから。


人型竜装(ドラゴンメイル)!」

 衣服を赤い鎧に変化させ、双角と竜の尾を露わにしたテーサが背中に下げていた剣を抜いて構えた。その右瞳が、竜の黄瞳(きどう)が妖しく光る。

「ドラゴステイト」

 再び魔流が乱れる。テーサの身体が金色の光に包まれた。

「まったく……竜力状態になるなら言えってのに」

 魔流が乱れたことで唱えようとしていた魔法が消失したらしい。チッと舌打ちをして、フォゼが空に舞い戻ってきた。

「だって、魔法使ってくるんだぜ? それも、結構なレベル。接近戦のほうがいいだろ?」

「それはそうだが……。どっかの誰かが俺に指揮を任せたと記憶してるんだけど」

 かんっぜんに嫌味だよね。テーサが相談なしに突っ走ったの怒ってるよね。

「悪かったって! で、次はどうすればいい?」

「作戦潰したやつの言葉じゃないが……? まあいい。余裕もないし、この際お前は突っ込め。俺がフォローするから。それからレサル、頼みたいことがある」


 わたしは空から戦場を見下ろしていた。今回の戦いで一番重要なのは、ゴブリンをペルト城に__特に城下町に行かせないことだ。そして、死人を出さないこと。今度こそ。今度こそ、全員無事で__。

「範囲結界!」

 戦場すべてを覆う、巨大なドーム。フォゼに頼まれたこと、それがこの逆シェルターを張ることだった。

運命之女神微笑(ノルンスリール)!」

 勝利を祈る。誰も犠牲にならないことを祈る。わたしはわたしのできることを全力でする。そう思ったとき、シャン、と聞き覚えのある音がした。

「あれ?」

 手にしていた大幣が神楽鈴(かぐらすず)に変わっていた。同時に、服が儀式用のそれになっている。

 わたしは神楽鈴を握り直して、シャンと鳴らした。舞は本来なら__色々な種類もあるし、断定はできないけど、わたしの神社では扇と神楽鈴の二刀流で舞うものだ。だけど、ここには鈴しかない。でも、それはそれだ。舞えないわけじゃない。


 シャン、シャン、シャンッ……。

 戦場に、軽やかな鈴の音が響き渡る。

 シャン、シャン、シャンッ……。

 わたしは足を踏み出してくるりと回る。

 シャン、シャン、シャンッ……。

 今度は反対の足を踏み出して。

 シャン、シャン、シャンッ……。

 建御名方神(タケミナカタ)への舞だけど、この世界でも通じるのかな?

 シャン、シャン、シャンッ……。

 そんなことを思いながら。

 シャン、シャン、シャンッ……。

 祭事でも滅多に踊ることがない武舞を間違えないように、慎重に。

 シャン、シャン、シャンッ……。

 武運を祈って、わたしは舞う。


「レサル!」

 わたしの名前を呼ぶ声がして、夢から覚めたように集中が途切れた。見えなくなっていた景色に色が付き、そして目の前に__。

「テーサっ!」

 剣で熱線を受け止めるテーサがいた。わたしが無防備だったからだ……!

乱魔吸収(フィルマフィアテイン)

 熱線が紫黒の渦に巻き込まれて消えた。また、助けられちゃったな。フォゼには迷惑かけっぱなしだ。テーサにも借りをつくった。返さなきゃ。

「……って、マズい! フォゼが得意なの、魔法と弓だ! 接近戦に弱いんだった!」

「え……?」

 それって、わたしのせいで不利な戦いを強いられてるってこと……だよね。

「フォゼからの頼まれごとは終わったんだろ? 一緒に来てくれ!」

「うん!」


 剣が交わって火花が散る。不利な状態だとは思えないほどに彼__フォゼは素早い立ち回りと剣撃で人型有識魔と戦っていた。

「おいおい、両方魔法系だろ?」

 そうか、それだ。魔法系同士だからこそ、この戦いは決着が付きそうに見えないのか。補助呪文と剣撃が入り乱れている、ハイレベルの争い。互いに傷だらけで、とても余裕があるようには見えない。ギリギリで__尚かつ半永久的に続きそうな……じゃなくて!

「回復しなきゃ」

「いいから、テーサ、代われ!」

 キィンッと音がして、テーサの剣が有識魔のそれを受けて、そのまま勢いを流した。その隙にフォゼが戦いを抜け出してくる。

「ねぇ、回復……」

「俺に回復魔法は効かない」

 被せるように発された言葉に絶句する。嘘でしょ? こんなにボロボロになるまで戦って、回復すらできないの?

「俺の身体は魔力を魔力として吸い取る。低級程度なら速撃魔法も飲み込むくらいだ。代わりに回復魔法も魔力の回復にしかならない」

 それは、諸刃の剣。圧倒的な強さの裏で、自分自身をも蝕んでしまうもの__。

乱魔吸収(フィルマフィアテイン)はこの体質の応用だ。俺が蛋白石(オパール)になったのもこれが功を奏したからだし」

 色々びっくりすること言われたけど、その中でも体質の応用ってのが気になる。けっこうなパワーワードだよ!?


「回復されるのが厄介だな……。一気に方をつけるか」

 テーサの剣が白く光りだした。それはバチバチと音をたてる雷を纏う。

「神速一魂、雷々斬(らいらいざん)!」

 空気の圧でわたしの身体が吹き飛ぶ。テーサの姿は見えなかった。

「討伐完了! フォゼ、次のターゲットは__こっちだ」

「了解。そっちは戦士系だと情報が入っている。単純な強さはさっきのやつ以上だ」

 もっと、強いの……? わたしにできることはもうないだろう。足手まといになることだけはないように頑張らないと。

 そしてわたしたちは森を抜けて、高原に進みだした。

 お久し振りです。2月末には書き上げていたにも関わらず出し忘れてしまい、申し訳ございませんでした。


 さて、今回はフォゼの体質についても触れてみました。彼は強いので、弱いところも知ってほしかったんです!

 それにしても、戦闘シーンは難しいです。今回の戦いは前回のランウェール防衛戦より長くなる予定ですけど……。


 これからも応援よろしくお願いします!

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