幻獣海賊ファンタジア
目が覚めたら、知らない場所だった。
「お、起きたのか」
知らない人__いや、獣耳だから知らない獣人なのかな? いやいやいやいや、だから誰?
「あたしはカラナ。みんなにあんたが起きたこと知らせてくるからちょっと待っててくれ」
そういえば、フォゼとテーサの姿がない。この人が助けてくれて、二人はもう起きたってことなのかな? 悪い人にはとても見えないし、わたしは言われたとおり、カラナを待っていることにした。
「レサル、おはよう」
「おはよ。わたし、どれくらいの間寝てたの?」
部屋に入ってきたテーサに聞いてみる。
「一日近く。俺も二〇時間くらい寝てたみたいだ。フォゼは一時間くらい前に起きて、今は食事中」
なるほど。フォゼがここにいないのはそういうことか。
「ここはどこなの?」
「幻獣海賊ファンタジアの船内だ」
海賊!? え、あの海賊!?
「幻獣海賊は善良な海賊だから大丈夫だ。現に、俺らを助けてくれたのは彼らだろう?」
それもそうか。じゃあ、ここは安全ってことだ。
「わたしたち以外に助かった人って……」
「残念ですが、いないようです。念の為に現場まで行ってみたんですけど」
知らない声にバッとドアの方を見る。燻んだ赤い髪に金の瞳を持つ猫耳の男性が、びしょ濡れのままで立っていた。
「そうか。まあ、あいつとあったらな……」
テーサと一緒にいた、これまた獣耳の男性がその報告に頷いた。
「そう、ですか……。わたしたちは助けてもらえたけど……」
「とりあえず食事にしませんか? 事故は……ショックだったでしょうけど、食べないと生きていけませんから」
ああ、似ているな。そう思った。赤髪の彼は、フォゼとよく似ていた。食べないと生きていけないなんて、会った翌日の朝食でフォゼが言った言葉と同じなんだもん。
「あの、色々ありがとうございました」
食事を取ってから、わたしは今更ながらお礼を言ってないことに気がついてお礼を言う。フォゼとテーサはすでに言っていたのか、わたしに合わせて会釈だけしている。
「いえいえ、人々を助けるのが仕事ですから。少し遅れましたが、自己紹介をしておきますね。私はニョキ。この船の航海長で、船長代理です。ちなみに、あなた方を助けたのはミヨなのでお礼を言いたければ彼に」
「ニョキさん、ミヨは愛称でしょう。私はミョスといいます。役割は水連。以後、お見知りおきを」
あのとき部屋に入ってきた赤髪の人__ミョスを指しながら言うニョキに、ミョスがツッコむ。
「ニョキさんにあんな態度取れるの、ミョスの兄貴くらいだよなぁ」
ボソリと聞こえてきた言葉に、ミョスがニョキより下の立場だということが察せられた。多分、その他の船員よりは上なんじゃないかな。
「で、あたしがカラナ。お嬢ちゃんには先に自己紹介してあるだろ?」
「え、あ、はい」
「姉さん、あんまり客人を困らせるなよ……。オレはカラト、航海士。姉さんは操舵手」
カラトはなんか苦労人感が滲み出てるような……。今の感じだと、お姉さんであるカラナに手を焼いているのかな?
「シムです! 水連見習い!」
「リトです。航海士見習い」
「ジーマ、操舵手見習い」
この三人はわたしたちと同じくらいの年かな? 正式役職持ちの人たちは二〇歳前半だと思う。シム、リト、ジーマは彼らよりもちょっと年下に見えるんだよね。
「俺はフォゼ。申し訳ない、先にこちらが名乗るべきだった」
そう言うフォゼに続いてわたしたちも自己紹介をする。
「これで全員ですかね? 船長」
「いや待て、ニョキ。その船長の自己紹介はしてないんだが?」
真面目って感じの雰囲気してるのに、意外と冗談多い人なんだなぁ。まあ、外見だけで判断なんてしちゃだめだよね。
「ニョキさん、普段は真面目一筋なのに冗談言うときは結構言いますね」
「いや、ミョスさんこそなかなか言いますね?」
それを言ってるカラトもだけどね。
「話をそらすなよ。……えー、ゴホン。改めて、幻獣海賊ファンタジア船長のファルガだ。短い船旅になると思うが、ゆっくりしていってくれ」
「そういえば、どこ行くの?」
フォゼとテーサに聞くと、ラウト大陸だ、と返される。もともと行く予定だったところに行くようだ。大まかな予定は変わらないみたいだね。
「そう。……暇だね」
「船の中は基本的にどこに行ってもらっても構わんぞ」
突然後ろから声をかけられた。それがファルガのものだと気付くのには時間は必要なかった。この船でわたしたちに敬語を使わないのは彼だけだからだ。
「いいんですか?」
「実際暇だろう? 海の上は何もないからな」
その言葉で、わたしたちは船の中を見て回ることにした。
デッキに出る。青く広がる海原は凪いでいて、事故の起きたそれと同じものにはとても見えない。
「ニョキさん、食材あります? 無いなら潜りたいんですけど」
塩で傷んだ赤い長髪。ミョスだ。結われた薄金の髪は彼が話しかけた相手、ニョキ。なんか、普段から一緒にいるイメージがある。偏見だけど。
「あー、海藻でも取ってきてほしいかな。明日の朝食の汁物に入れるから。……潜る理由が欲しかっただけだろ?」
「バレました? じゃあ、行ってきます」
そのままミョスは柵を乗り越えて海に飛び込んだ。水飛沫は全く立っていない。音もわずかで、美しい入水。テレビで見た高飛び込みのようだった。
「綺麗……」
「でしょう? ミヨは泳ぎが得意なので。ファンタジア一の泳ぎの名人なんですよ」
猫の獣人に見えるけど……。水が得意なのはなんでなんだろう。猫は水を嫌うものじゃないの? こっちの世界では違うのかな?
「猫の獣人だよな。もしかして泳猫か? 他の猫系統は泳ぐの苦手なやつが多いだろ?」
「そうですね。ミヨは泳猫です。幻獣の中でもかなり珍しいでしょう?」
いや、知らないけど。
ニョキと別れたわたしたちは、探検を再開する。
「行っちゃいけないのってここだよね」
「船の核があるからな。レサルはここで寝てたけど、あれは例外だし」
あ、そうか。わたしはここにいたんだったね。核からは魔力が発せられていて、それで回復を行ったらしい。
「ここは……倉庫かな?」
木箱がいっぱいある。ほぼ間違いないと見ていいだろう。
その他には特に見て回るところもなく、わたしたちは船を一周した。その頃に薄っすらと見え始めた緑は、目的地であるラウト大陸のペルト帝国だ。
明けましておめでとうございます。2023年一発目の投稿です。
さて、幻獣海賊について少しは分かっていただけたでしょうか? 種族出てるのが一人なのはスルーしてください。後々出すはずです。
ミョスとニョキばっかり出てきてるなーと思いつつ執筆。この二人の掛け合いは書いていて楽しいです。
今年も応援よろしくお願いします!




