色違瞳の竜剣士
女神が微笑んで、わたしは運命を導く。自分たちにとって都合の良い方に。悪く言えば自分勝手とも取れるかもしれない。だけど、これはここにいる全員の総意だ。
巫女が西洋のような呪文を唱えても、それを知るものはここにはいない。だから、わたしは遠慮なく声を上げる。
「勝利を我らに!」
空が光る。その光に向かってフォゼが飛んでいった。
あれ、何かやらかした? 今のフォゼは戦場指揮官だ。そう簡単に動いていい立場ではないはず。そうなれば、わたしが何かしたとしか思えない。だって開戦してから大きな動きしたの、わたしだけだもん。わたしはフォゼを追って光を目指した。もちろん、超特急で。
「何でここにいるんだよ……」
ピキ、と青筋が立つような音がした__気がした。怖い。フォゼがちゃんと拡声魔法解いといてくれて良かったぁ……。圧がすごいもん。
「お、久しぶり! で、ここはどこで何してるんだ?」
そう言ったのは色違瞳とライムグリーンの短髪を持つ人物だった。歳は……多分わたしより上かな。紫と黄色の色違瞳が印象的だけど、彼はその尖った耳とまるでドラゴンのような羽もよく目立つ。人外という言葉が頭に浮かぶ。なにそれ! すっごいワクワクするじゃん!
「ランウェール上空。見ての通りだ、戦闘中。それはいいから、お前、帰れよ」
「は? 俺を呼び出したの、お前じゃないの?」
わたしが興奮している間にも話は進んでいた。淡々と返すフォゼに、驚く人外さん。そして……わたしですね、元凶。
「あの、フォゼ? 多分それわたし……」
「レサル、さすがにやりすぎだ。せめてこいつ以外を呼んでくれれば楽だったんだが」
相当厄介ってことですかね? やっぱりわたし、やらかしてた。
「失礼だなぁ……。で? フォゼ、その子、彼女?」
「んなわけねぇだろ、マジで黙ってろよ。てか帰れよ、ホントに」
なんか、フォゼが荒々しい。怒ってる?
「お前は変わらないね。いいだろ、せっかく来たんだ。手伝ってやるよ」
「……わかったよ」
とうとうフォゼが折れた。つまりは彼も相当な実力者。あ、そうか。勝利を呼んだから強い人が来たのか。よかった、言葉が通じない魔物じゃなくて。
「はぁ……レサル、こいつはテーサだ。幼馴染みみたいなもんだな」
溜息つくレベルなの?
「自分にとって都合が悪いことでも俺に知られてんのか?」
「……少なくとも今は、な。レサルに妙なこと吹き込むなよ?」
わたしが知ったらまずいことでもあるってことかな? まあ、こんな状況で聞くほどバカじゃないけど。そもそもそこまで土足で踏み込むわけにもいかないしね。わたしはフォゼにお世話になってるんだからなおさらなんだよ。
「お前がそう言うなら何も言わないさ。後が怖い」
怖いって言いつつ笑ってるよ……。この二人、仲良いんだなぁ。少ない言葉で分かり合えるのが羨ましい。わたしにはそんな相手いないからね。
さて、正直そんな呑気なことは言っていられない。下では戦いが繰り広げられているのだ。
「仕方ないから、テーサも俺の指示に従え」
仕方ないからって台詞の後とは思えない命令ですね?
「権力は最大限に利用するってか?」
「権力なぁ……あっても邪魔なんだが。ま、たしかに利用できるなら利用するぞ?」
「いや、どっちだよ」
「時と場合によるってことさ。お前だってここにいていい立場じゃないだろうに」
興味なさげなのに一番強いって……。すごいねぇ、この人間性は見習うべきだよ、ホント。そしたら戦争とか内乱とか起きないんじゃないの? てか、会話の端々から憶測するに、テーサってお偉いさん? 今更だけど、マジで呼び出して大丈夫だったの?
「聞きたいことは山ほどあるが、それは後だな。テーサ、あいつの体内に響く攻撃を頼む」
「了解ですよ、司令官さん」
茶化すように答えながら、彼は楽しそうに笑う。
「自然操作、天候暗雲」
青空があっという間に厚い雲に覆われる。山の天気は変わりやすいっていうけど、ここ、別に山じゃないよ? どうなってるの? 不自然な雲に唖然としているうちに準備が整ったのかテーサがフォゼに頷いて合図する。
「レサル、念の為にもう一度バリアを張っといてくれ。……拡声魔法。全員聞け! 強力な呪文を放つ! 死にたくなければ一度引け!」
フォゼが号令をかけている間に、わたしは言われた通りバリアを張り直す。冒険者たちが避難したのを確認して、テーサが口を開く。
「破壊雷!」
「乱魔吸収」
激しい雷鳴が響き、稲妻がスライムの身体を貫通する。辺りの魔力濃度が急激に高まって気分が悪くなる。プロテクトを二回かけたのに防ぎきれない。でも、それも一瞬だった。破壊雷の直後にフォゼが唱えた魔法、乱魔吸収で余分な魔力が消え去ったのだ。同時に暗雲も晴れる。
「回復する前に止めを刺せ! ……っ」
地面に降りて蹲るフォゼ。その額には脂汗がびっしり浮かんでいる。
「うぇ……、力加減が相変わらず下手な奴だな……! だからお前を呼ばれたくなかったんだよ。魔力酔い体験したほうがいいんじゃないか?」
多すぎる魔力を吸収したために酔ってしまったようで全く動かないフォゼが、ジロリとテーサを睨みつける。
「悪かったって。これでもだいぶ上達したんだぞ?」
「知ってる。……悪いな、レサル。回復するまで待っててくれ……」
いや、当たり前でしょ。てか、それ以外の選択肢ある? ないね、ないよね。
「とりあえず俺も行ってくる。こうまでして与えたダメージを修復されると厄介だ」
「魔力は使うなよ……?」
「当然だろ。お前じゃないと耐えられないって」
いや、フォゼも耐えきれてないんだけど。
「レサルっていったか? 一緒に来い。フォゼといるってことは実力者だろ?」
「えぇ? わたしは助けてもらってるだけで……」
実力はあるんだろうけど、それを発揮できないんだって。それに今、待ってろって言われたばっかりだよ?
「大丈夫だって! 俺が言うのもなんだけど、酔ったときのフォゼってホントに動かないから」
動かないんじゃなくて動けないんじゃない? めちゃくちゃ気分悪そうだよ? でもまあ、たしかにテーサが言ってることもわかる。彼らがせっかく作ってくれた好機を逃すわけにはいかないのだ。
「……わかった。フォゼ、行ってくるね」
一応それだけ言って、わたしとテーサは再び飛んだ。テーサは背負っていた大剣を抜いて、その刃を振り下ろす。空から急降下しながら剣を突き刺したのだ。その一撃は地面をえぐる。
冒険者たちはわたしのプロテクトで無事だけど、スライムからしたらとんでもないダメージだ。ついにその身体が小さなスライムに分裂を始める。それからは言葉の通りあっという間だった。領域有魔でもないただのスライムなんてすぐに退治できるのだ。
こうして、ランウェール防衛戦は幕を閉じたのだった。
ランウェール防衛戦、完結! 次に向かう場所はどこなんでしょう?
今回から新しいキャラが増えました! 天気さえも操る超チートな彼は、どうやらフォゼの知り合いだそうですね。これからの活躍に期待です。
応援よろしくお願いします!




