12話 妹なりの謝罪
本日、2話目となります。
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〜渚沙視点〜
「明日、亮介のところへ謝りに行かないか?」
お姉ちゃんにそう言われた。
お兄ちゃんに誠心誠意謝罪して、信用を取り戻す為に頑張ろうって。お姉ちゃんの喋り方から焦りが見える……普段は冷静だから珍しい。
「しばらくそっとしておこう?」
でも私はその提案を断った。
幾らなんでも早すぎると思ったから……許される、許されないは別として、ニュースで冤罪を知ったからごめんなさいは
お兄ちゃんに失礼だと思う。
私は反省を謝罪の言葉で伝えるんじゃなく、これからの態度で示して行くつもり──そして、どれだけ時間が掛かっても仕方ないと思ってる。
でも断ったら、お姉ちゃんの顔色がみるみる変貌してゆく。
「……そうか好きにしろ」
それだけ言い残すとお姉ちゃんは私の部屋から出て行った。
真っ暗な部屋には冷たいお姉ちゃんの声だけが印象強く残っている。
お兄ちゃんのニュースを見てからおかしいよ。
今みたいな冷たい態度を私に見せたのは初めて。
後を追い掛けて、お兄ちゃんに余計なことを言わないでと注意しようか迷ったけど部屋を出る勇気が私には無かった。
だってお兄ちゃんに合わせる顔がないもん。お兄ちゃんに会ったらどうしよう……そればっかり考えている。
お母さんが、今日は麻衣ちゃんの家に泊まるって話してたから家には居ないんだろうけど、隣の家だし荷物を取りに帰って来る可能性がある。
そうしたタイミングで出会したらと思うと背筋が凍り付く。
どんな顔をしてお兄ちゃんに会えば良いの?
……合わせる顔なんてない。
と言うより私なんかが顔を見せてお兄ちゃんを困らせたくない。きっと私に会うのも嫌だと思うから……
「………うぅ……お兄ちゃん……」
私はベッドに包まり、これまでお兄ちゃんに対して行った非道の数々を思い返して震える。
特に一番酷かったのが、お兄ちゃんが家出から帰って来た時に私が口走ってしまったセリフ。
『お、お兄ちゃん……別に帰って来なくて良いのに』
考えなしで言い放った言葉だ。
そんな風に思ったことは一度もないのに……言った後でモノ凄く後悔した。
普段は温厚なお母さんにも、優しい麻衣ちゃんにもこっ酷く怒られた──
『あ、おかしいのは私だ』
二人に怒られたお陰で、私は自分の犯した過ちに初めて気付く事ができた。そして直ぐに謝ろうとした。
『ここで謝ったら亮介は反省しないぞ?二度と同じ過ちを犯さない為にも心を鬼にしよう』
だけどそれはお姉ちゃんに止められた。
『………うん』
悩んだ末、私はお姉ちゃんの言葉に頷いた。
今にして思うと有り得ない決断だったと思う……でも当時の私はそれが正しいと疑わなかったし、反省して貰いたい気持ちが何よりも強かった。
だって周りがそう言うから……お父さんも、お姉ちゃんも、近所の人達も、学校の皆も──だから庇うお母さんと麻衣ちゃんがおかしいと考えるようになる。
『本当にそうかな?』
考え方が変わったのは半年くらい前。
事件から時間が経ったお陰で、私は物事を冷静に考えられるようになった──そしてとんでもない事に気が付く。
『そう言えば……私ってお姉ちゃんの言うことしか聞いてない』
もうお姉ちゃんの言葉が正しいと思ってたから、お兄ちゃんの話は都合のいい言い訳としか思わなかった。
学校でもお兄ちゃんの悪口を言う人が殆どだし、お父さんも凄く怒っている。
だからお姉ちゃんの言われた通り謝らなかった。
──それが異常だと今になって気が付いた。
お兄ちゃんを傷付けたのは紛れもなく悪い事。
だったらキチンと謝るのが当たり前なのに、それを私はしなかった。しかも普段からお兄ちゃんに被害者に謝れと偉そうに言ってるのに……
私は反省して態度を改める事にした。
それからは事件の真相を、お兄ちゃんの口から直接聞こうと思い始めるようになった。
『お兄ちゃん……少し話せる?』
『お兄ちゃん……なんでこんなに早いの?』
まずは他愛もない簡単な会話からだ。久しぶりに『お兄ちゃん』と言葉にして言うようになった。
胸の中が温かくなって来る……やっぱり私はお兄ちゃんが好きなんだなぁ……あんなに酷い事件を犯したのに、気持ちが変わらないなんて重症だよ。
『…………』
でも努力するのが遅かったみたい。
お兄ちゃんはずっと私を無視している。偶に返事があっても『あっそ』とかなり素っ気ない。
『あ、あのさぁ』
それでもめげずに話かけ続け、誕生日をキッカケに仲直りする為の勝負に出た。
…………
……でも結果は酷い有り様。
お兄ちゃんにますます嫌われてしまった。
そして自分が如何にひどい事をして来たんだと、改めて思い知らされる。
その後はずっと部屋で泣き続けた。
『──なに?亮介がそんな事をしたのか!?』
『うん……でも悪いのは先に消毒した私だから』
縋るような思いでお姉ちゃんに相談した。
お母さんと気まずい関係になってる以上、今の私に頼れるのはお姉ちゃんしか居ない。
『よし、では私が話をしてくる』
『うん、でも説教とかは止めてね?それと私が悪いのも忘れないで?……少し話せる時間を作って貰えればそれで良いからね?』
『………………わかった』
自分には勇気がないので、やむ負えずお姉ちゃんに仲介役を任せる事にした。
少し間が気になったけど、お姉ちゃんは強いから大丈夫。後は結果を待つだけ──
──私は祈りながら朗報を待った。
『ダメだ、全く話にならないっ!』
『え?ちょっと、どう言うこと!?』
『ああ、渚沙に謝るように言ったんだが、逆に侮辱されてしまった』
なんて余計な事を……!!
お兄ちゃんがまた遠くなるじゃないっ!!
私は初めてお姉ちゃんに激怒した。
『ちょっと!?悪いのは私って言ったのにッ!!ますますお兄ちゃんと仲悪くなるじゃない!!』
『……やっぱり亮介と仲直りするつもりだったか』
『そ、それは……』
だけど冷静に返されて私は戸惑った。
たしかに私はお兄ちゃんと仲直りしようと考えるようになっていたし、何故かその気持ちをお姉ちゃんには隠していた。
『周りはなんて言ってる?』
『………ぁ……ぅ……』
『亮介が悪いって言ってるだろ?──私は渚沙が皆んなに責められる所なんて見たくない』
そうやって私の頭を撫でてくれた。
『お、おねぇ……ちゃん……ひぐっ……』
私はお姉ちゃんの胸で涙を流す。
お兄ちゃんを許せばイジメられる。
中学校にはお姉ちゃんが居ないし、麻衣ちゃんも居ない。
もし何かあっても誰も助けてくれない。
だからお姉ちゃんは私を心配しているんだ。
こんなに優しいお姉ちゃんを、一瞬でも疎ましく思ってしまった事を激しく後悔した。
お兄ちゃんを思ってるからこそ、お姉ちゃんは厳しく接しているのに……
………
………
でもお兄ちゃんと仲直りしたい気持ちが消えない。
どうすれば良いんだろう……私には分からなかった。
──ううん、考えるだけ無駄かな?
だって今まで全部、お兄ちゃんとお姉ちゃんに決めて貰っていたんだもん。
自分で考えて行動なんて出来ないよ。
だから言う通りにした。
──その後、直ぐにお兄ちゃんが無実だったとニュースで知らされる。
ああ終わったと思った。
もう頭の中が真っ白……今から謝っても、冤罪が解ったから謝ったとしか思われない。
私は謝る機会すら逃してしまったんだ。
今からどれだけ謝ってもお兄ちゃんの心には響かない。
だって冤罪だと知ってるんだもん。
──だからお姉ちゃんの提案を断った。
何度でも言うけど、本当に、本当の本当に今更お兄ちゃんに合わせる顔なんてない。
「お兄ちゃん……お姉ちゃん……麻衣ちゃん」
私は子供の頃を思い出す。
お兄ちゃんと、お姉ちゃんと、麻衣ちゃんの四人で遊んでいた楽しかった小学生時代。
いつの間にか麻衣ちゃんとは遊ばなくなっちゃったけど、あの時が一番楽しかった。麻衣ちゃんは私を妹のように可愛がってくれたから大好きだったよ。
お兄ちゃんが中学に上がる頃には麻衣さんも来なくなり、いつの間にかお姉ちゃんと二人でお兄ちゃんを取り合う事になってて、そこに姫川さんも加わって、お兄ちゃんが高校生になると桐島さんも混ざって来た。
気が気ではなく、いつお兄ちゃんを取られるのか不安で、とても幸せな日常とは言えない。
麻衣ちゃんの時はそんなこと無かった。
お兄ちゃんを独占しようとせず、私が一人で居ると手を差し伸べてくれた。
麻衣ちゃんほど優しい人は珍しい……また昔みたいに遊びたいよ、麻衣ちゃん……お兄ちゃん……
姉妹で考えてる事は真逆です。
次回は唯一の男友達が出て来ます。
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