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9話 生徒会長の後悔

沢山の感想をほんとうにありがとうございます。


予約投稿しておりますが、私自身は早朝から仕事の為、コメントに返信する事が出来ず誠に申し訳ないです。


心温まるコメントなので嬉しいです!


質問、疑問などが書かれていれば可能な限りお答えしますので宜しくお願いします!



話の広まるスピードは早かった。

たった1日で学校中に冤罪の話が知れ渡る。


……だが、それもその筈。

事件があまりにも悪質だった為、昨夜の報道番組で大々的に取り上げられ、今朝のニュースや新聞でも大きく報じられていたのだ。


事件の首謀者である【松田公平】という名前がトレンド入りする程の大騒ぎとなった。


それに加えて地元で起こった事件なのだ……皆の関心は本当に高かった。この学校の生徒だけでなく、その保護者や学舎の違う知人にまで情報が行き渡っていた。



「ね、ねぇ……あの人って……」

「どうしよう……酷い態度取ってたんだけど」

「冤罪なんだろう?エグいってマジで」

「どう謝れば良いの……」



もはや疑いの目を向ける者は殆ど存在しなかった。テレビのコメンテーターも加害者達を非難し、被害者を憐れむようなコメントを数多く発信していたのが非常に大きかった。


学生達は俳優や芸能人の言葉を疑う事はなかった。

亮介の言葉は一切信じられなかったのに、テレビに映る著名人たちの言葉は信じたのだ。



「…………」


「……凄い嫌だね」


「ほんとな」


手のひら返し……とまではいかないが、急に向けられる同情の視線が気に触る。

ニュースが流れて1日でここまで変わるのかと、麻衣と俺は周囲を軽蔑していた。


俺への嫌がらせは一年以上も続いたのに、ニュースが流れると一日でこんなに変わるとか人間性を疑う。



「………んん〜!」


今回ばかりは優しい麻衣も不快そうだ。

あれだけ無視したり馬鹿にしといて、今更ふざけ過ぎなんだよ。とことんゴミの集まりだな。


今日はいつもより遅い時間に家を出たのだが……人通りが多過ぎる。昨日は麻衣の家に泊まったから、あの三人に会わないで済むと、遅い時間に登校したのは失敗だった……時間を遅らせるだけで人はこんなにも増えるんだな。


俺は誰にも目をくれず、麻衣と楽しい話をしながら通学路を歩いた。



「麻衣、少し遠回りしようか?」


「うん……私もちょっと嫌だったよ」


途中で人目につかない裏道に曲がった。

少し遅くなるけど時間には余裕がある……問題ない、あの視線に晒され続けるよりずっと良い。



──しかし、この決断も失敗だったと直ぐに気付かされる。



「……あ、りょ、亮介くん」


生徒会長が後を追って来たのだ。

恐らくずっと声を掛けるタイミングを窺っていたのだろう。裏道に逃げた事で話し掛ける口実を与えてしまったらしい。


というか、いつもより遅く家を出たんだが……まさかずっと待っていたのか?──だとしたら怖い女だな。



「…………」


「……あ、あのね……その……」


誰よりもムカツクのがこういう反応だ。

目元にわざとらしくクマを作り、いかにも俺が心配で睡れませんでしたアピールをする生徒会長みたいなやつ。



「麻衣……戻ろうか」


「う、うん」


俺は来た道を戻る事にした。

裏道で生徒会長に付き纏われるより、好奇の視線に晒される方が遥かにマシだ。


振り回して本当に申し訳ないが、麻衣も黙ってついて来てくれた。



「……生徒会長さん」


今の麻衣は生徒会長に心から同情しているんだろうけど、それを声に出して言ったりしないし、ましてや俺に許してあげたらとかも言わない。


麻衣は俺の気持ちを何よりも優先してくれる。既にどうしようもないほど愛おしい存在なのに、ますます好きになってしまうな。



「…………」


通り過ぎようとすれば俯く生徒会長。

顔を合わせる勇気もない癖に、なんで俺の前に出て来たんだコイツは?


──でもこのまま黙って通り過ぎるなんて優しい真似はしない。俺はこの女も苦しめると心に決めているんだからな。


俺は麻衣に聞こえないように、生徒会長・姫川涙子の耳もとでそっと呟いた。



「……どう落とし前つけんの?」


「………え!?」


まさか声を掛けられるとは思っておらず、涙子はギョッとした表情で顔を上げた……そして亮介の顔を見る。



「………あ、いや……嫌だ」


憎しみ、拒絶、軽蔑……そして怒り。

あらゆる負の感情が自分に対して向けられていた。せっかく我慢していたのに涙が止めどなく流れ落ちる。


それは恐れによる涙ではない。

あれだけ優しく、真面目で、誠実な男性の言葉を何一つ信じようとせず、こんな顔をさせてしまうほど追い詰めてしまったという申し訳なさから流れる涙だ。



「……ゔぅ……亮介……くん」


周囲に誰も居なかったのが幸運だった。涙子は去りゆく亮介の背中を見詰めながらポロポロと涙を流し続ける。

絶対に振り向かないと分かっていても、その背中から目を離すことが出来なかった。



(許して欲しいなんてとても言えなかった。ごめんなさいも軽々しく言えなかった……あんなに好きだった男の子をどうして信じてあげなかったんだろう?)



『本当にやってない!信じて下さい生徒会長っ!』


『貴方なんて信じられる訳ないでしょ!被害者に謝れないなら二度と話かけないでっ!生徒会にも顔を出さないでっ!貴方が居ると穢れるんだからっ!』


言い逃れだと思って彼を酷い言葉で怒鳴り付けてしまった。


今思い出しても酷い……

私を信じて助けを求めてくれていた筈なのに……


この時の亮介くんがもし、家族に嫌われ、クラスでも除け者にされて、どうしようもなく追い詰められて、それで本当の本当に最後の頼みの綱として私を頼ってくれていたとしたら?



「………な、なんて酷い女なの」


この時の私は一体どれほど彼を傷付けたんだろう。

こんな事を言われた亮介くんはどれだけ苦しんだんだろう。そしてどんなに私を憎んだんだろう。


想像するだけでお腹が痛くなる。

私を信じて必死に助けを求める亮介くんを酷い言葉で罵るなんて……手を差し出すなんて簡単なのに……私は、彼を拒絶してしまった。


ずっと一緒に居たくて生徒会に勧誘したのに、それを自分から追い出して……本当に最低だ。



「最低最低ッ!本当にどこまでも最低ッ!亮介くんをいっぱい傷付けて苦しめた……どうやって償えばいいの……」


私は学校へ行かずそのまま家に帰った。

小学校からずっと無遅刻無欠席で、それを進学の時にアピールポイントにするつもりだったけど……そんなの心底どうでも良かった。


何をする気力も湧いて来なかった。


道を歩く事すら恥ずかしかった。


許されるまで何度でも謝ろうと思ったけど、それは絶対に間違った考え方だと思い直した。

もっと時間を掛けて苦しんで後悔して……それから沢山謝りに行こう。


許して貰おうなんて思わず、ただ謝りに行こう。



『……どう落とし前つけんの?』


私が苦しめば話を聞いて貰えるかな……?

でも私は弱いからなぁ……亮介くんは頑張っていたのに、私は彼みたいに頑張る度胸がない。

学校に向かう勇気さえもない。


亮介くんは凄く強いのに、私は酷く弱い。



──涙子は絶望した表情のまま家へと向かう。


最初は感情的になって生徒会を追い出してしまったが、直ぐに考えを改めて、どうにか亮介を更生させようと厳しく接するようになった。


(でもそれが全て裏目。だって悪い事は何もしてないんだもの。私はくだらない正義感を振り翳して、心優しい初恋の男の子を深く傷付けただけ……)



『姫川さん、また宜しくお願いします!』


『うん!君もまた宜しくね!』


思い出すのは生徒会での初日挨拶。

この時に見た明るくて、優しくて、カッコイイ後輩はもう私の前には二度と現れない。

自分がどんなに失敗しても、決して嫌な顔せずに支えてくれた頼りになる存在だったのに……そんな彼を私が消してしまったんだ。




「──涙子!?こんな時間にどうしたの!?具合が悪いの!?」


「……家に着いたんだ」


いつの間にか玄関に立っていた。


するとお母さんが心配そうに駆け寄って来た。

あんなに慌てて来るんだから、多分、今の私は酷い顔をしてるんだろうなぁ。



「お、お母さん……」


それでもお母さんを見付けて安心した。


お母さんって居るだけで心に安らぎを与えてくれる。本当なら私がお母さんの様に、亮介くんにとって安心できる存在にならなければダメだったんだ。



「おかぁぁさぁぁんッッ!!!ごべんなざいッッ!!ほんとにべんなざいッッ!!!りょうすけぐんんッッ!!!ほんとにごめんなざいぃぃッッ!!」


「涙子ッ!?どうしたの!?」


そう考えると涙がまた溢れてきた。

さっき全て流し切ったと思ってたのに……全然まだ残ってたみたい。



「……大丈夫だからね?お母さんがついてるわ」


「……ゔうぅぅ……ありがと……う……ひぐっ」


私はお母さんの胸の中で嗚咽を漏らす。

ただ謝って泣くだけの私の背中を、お母さんは優しく撫でてくれる……理由も聞かないでそうしてくれた。



(私は亮介くんに近付かない方が良い……側に居るだけできっと彼を苦しめると思うから。今日みたいなのはもう止めよう)



──亮介くんに私なんて必要ない。


私が居なくても大丈夫……だって亮介くんには中里麻衣さんが居てくれるんだもん。今までも……そしてこれからも……彼女が亮介くんを支えてくれるんだろうね。


叶うなら一年前に戻って麻衣さんと一緒に亮介くんを守りたい。


だって本当は──







──亮介くんといつも一緒に居る麻衣さんが、ずっと羨ましかったんだもの。






次回は桐島文香回です。

生徒会長とはまた違う反応をみせます。


ジャンル別日間ランキングで1位となりました。

更に総合ランキングで3位になりました。

総合ポイントが1日でこんなに増えた経験は初めてなので本当にビックリしておりますが、驚き以外に嬉しさがとても大きいです!!


皆さま本当にありがとうございます!!


これからも楽しみ、思ったよりも面白いと感じて頂けたならブックマークやポイント評価を宜しくお願いします!

モチベーションがめちゃくちゃ上がります!!



──また、この作品とは別に


『普通の勇者とハーレム勇者』

https://ncode.syosetu.com/n5810fw/


という作品を毎週日曜日に投稿しております。

既に200話以上ある作品ですが、時間がある時にでも読んで頂けると非常に嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
おかしな話だな。冤罪だったんだ、ふーんでそれが? ですませればいいのに人間みたいに罪悪感もっちゃってんの?
[一言] >>叶うなら一年前に戻って麻衣さんと一緒に亮介くんを守りたい 楓の悪意や学校の悪意、両親の圧力に立ち向かわなきゃいけない、それに麻衣並みの意志力や覚悟がないから無理でしょ 生徒を守るのも生徒…
[一言] 生きてる時点で会う確率があるんだから、この世から消えるのが一番の償いやろ 何の代償も支払ってないし、何も犠牲にしていないくせに贖罪気分なのが気に食わんわ
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