結婚相談
「え、結婚?」
「ああ。 お前も知っている相手だから安心して欲しい。」
「へぇ。思いつかないけどとにかくおめでとう。」
それはリビングで夕食を食べ終わりいつも通り食器を洗おうとしていた時だった。
俺、藤宮東間は3年間程母親がいない。
小学生まではいたんだが母親の不倫によって離婚をしてしまった。
相手はジムかなんかで出会った若い男性だったか。
あんまり覚えていないと言うよりそのことについて聞きたくなかったため聞かないようにしていた。
俺は両親どちらも好きだったためどちらについて行くか迷ったが、母さんが不倫をしたということで父さんについて行くことにした。
そんなことで3年程男手ひとつで育てられたが、今まで母親が家事のほとんどをしていたためかなり大変だったのか、家で酔っ払った時にはよく「お嫁さんが欲しい」と言っていたのを覚えている。
そんなことなので結婚すると聞いて素直に嬉しかった。
「で、相手って誰なの?」
俺が知っている相手と言われても父さんが知っていると思っていても覚えていないということもある。
「あぁ。玲ちゃんのお母さんだ。」
「え.........」
玲ちゃんというのは俺の家の隣に住む幼なじみの山永玲のことだ。
同じ中学校に通う女子中学生だ。
容姿はいい方だと思うがモテるという程では無い。
性格は昔は明るい方だったが、今はクラスが違うためどんな感じなのかは分からない。
時々用事がありアイツのクラスに行くことがあるが、本を読んでいることが多い気がする。
ブックカバーをしていて何を読んでいるかは知らないがクラスでは1人という印象だ。
かと思ったら廊下ですれ違う時は友達と喋っているためよく分からない。
そんな感じで最近のアイツをほとんど知らない。
「へ、へぇー。 け、結婚ってことはどこかのタイミングで同居するってこと?」
「そう。だから確認がしたかったんだ。いくら昔から一緒にいる風花ちゃんとはいえ一緒に暮らすとなると色々あるだろう。もしお前が本当に嫌ならば今回のは忘れてくれ。」
「ってことは俺次第ってこと?」
「まぁお前がいいならあとは風花ちゃん次第ってことだが.........。
まぁそんなに重く考えないでいいよ」
「.........分かった。」
重く考えるなと言われても無理な話だろう。あれだけ「嫁が欲しい」と言っていたんだ。俺の事を思ってそう言っていることは明らかだった。
それにどういう経緯かは知らないがせっかく結婚まで来たのにそれを辞めさせる程の勇気は持ち合わせてはいない。
「まぁ俺は大丈夫だよ。」
「ほ、本当か!
すぐに琴里さんに連絡するよ。」
そう言って嬉しそうに椅子から立ち上がりそのまま玄関を出て隣の山永家まで行ってしまった。
琴里さんとはアイツの母親だ。
歳は父さんと同じぐらいで母親と離婚していなくなってから本当の母親のように接してくれた人だ。
東間が結婚についてOKを出したのも、結婚相手がこの人だったからというのもあった。
(まぁあとはアイツ次第なんだからなるようになるだろ)
そう思いとりあえず風呂に入る東間だった。
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