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お久しぶりです。遅くなりました。
本年もどうかよろしくお願いいたします(*´ω`*)
「遅なってごめんな、今回の依頼料です」
料理も食べ終え、人気もまばらになった食堂で二人珈琲を飲んでいる時に封筒に入れたそれをノンノが渡してきたため受け取る。
本来であれば中身を確認するが、その必要も無いだろうと判断したスヴェンはスーツの内ポケットへ仕舞い訊ねた。
「たしかにいただきました。それで、このあとノンノさんはどうなさるのですか?」
「……正直なところ、決めかねてるんよ。有名な商人になるっていうてもコネも財も流通ルートもお得意さんも、数えたらキリ無いくらい足りひんもん多すぎるから。せやから先ずは自分一人食べていけるだけの行商しつつ、世界中見て回ろかなおもてる。地方の特産品やったり、人柄やったりをこの目で確かめていこうかなって」
「なるほど。世界を旅しながら……ですか」
顎に手をやりスヴェンは悩む。
この国、メビウス王国内で冒険者としてある程度の場所は見て回ったつもりだ。
しかし、“本来の目的”である“自らが本当にやりたいことやなりたいもの”を探す、という事が未だに出来ぬまま金級冒険者となってしまった。
であれば……と彼は追加で質問を投げる。
「護衛であったり、初期の資金はどうなさるのでしょう?」
「資金についてならしばらくは今回の追加報酬でいけるやろからそれ頼りやな。護衛は……うーん、最低限自分の身は守れん事も無いから切り詰めるしかあれへん。必要な時だけ雇うかたちになると思う」
「であれば相談なのですが、自分も見聞を広げたいと思っていたところですので……もしよろしければご一緒させてはいただけませんか?」
「へぁ?」
問いに対する回答ではなく、間抜けな声を上げポカンとするノンノに笑いそうになるのを堪えたスヴェンは珈琲を口に含み返事を待つ。
「それはありがたいんやけど、言うた様に報酬払う余裕無いんやで?」
「これまでの稼ぎも充分ありますし、自分はお願いしてついて行く立場ですので必要ありませんよ」
「戻ってくるかもわからへんし、上手くいく保証もないで?」
「大丈夫です。最悪資金繰りが厳しくなったなら自分が依頼を片付けて報酬を得ながらというのも可能ですし」
「うーん……ウチとしては新しく護衛と人間関係築く必要もないしありがたいんやけど、ほんまにええの?損ばっかしてない?」
「こちらはノンノさんさえ大丈夫ならお願いしたいですし、自分の目的もあるので損はしていません」
「ほなお願いしよかな。ところでその目的ってなんなん?」
ここまで食い下がってくるのだから、余程自分が必要となる目的なのであろう。
会計を学ぶ……?いや、それならば商業ギルドで大手の問屋に勤めればいい。卸業者になりたい、とか?もしくは生産地とコネを作ってから起業するのか……?
などといったことを顎へ手を遣り考えている中、予想していなかった言葉が彼の口から漏れた。
「……なんといいますか。自分が本当にやりたいことを見つけたくてですね」
「へ?」
「なにか変な事言いましたか?」
「いやー……うん。なんかごっつい目的あるんか思てたし、まさか金まで冒険者としてランク上げたのって……」
「色々経験してみようとしたらいつの間にか上がっていましたね」
「そっかぁ」
どっと疲れた様に肩を落とすノンノを見てスヴェンは首を傾げながら続ける。
「はい。という訳で、私の目的は“自分の目で見てやりたいことを見つける”ということになります。なので世界各地を周るノンノさんに着いていくのが合理的かと思いまして」
「なるほどな。ほな改めてよろしゅう」
「此方こそよろしくお願いします」
差し出された彼女の手をしっかりと握り返し、彼等はこれからの行き先を相談するのであった。




