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祝福(ギフト)を駆使して目的探し  作者: 齊藤 或蘭
第一章
3/8

3

表現や書き方というのは、時間が経つにつれ大分変わるものなのだと実感します。

不定期更新にも関わらず、本日も御覧戴きありがとうございます⊂(`・ω・´)⊃

「そろそろ日も暮れはじめてきましたね。暗くなる前に野営の準備をしましょう」


 山道を進んで数時間、少し開けた場所を見繕うと後ろに居るノンノへ声を掛ける。すぐ近くに綺麗な川も流れており、野営に適していると判断を同じくした彼女は頷いて同意を示す。


 彼女は使えそうな物を近くで探してくると場所を離れた為、基本設営を済ませようとスヴェンは地面が乾いている平らな場所で鞄を下ろす。

 最近、冒険者間で話題になっている新発売されたばかりのテントを鞄から取り出したスヴェンは説明書を見ながら組み立て始める。用具を纏めた革袋も取り出した彼はインナーテントを広げて黙々と作業を行った。

 フロントポールも通し本体を完成させた後、風上を確認しつつペグを対角に打ち込み、付属のフライシートを被せてロープでしっかりと固定したそれは評判通り、3人程がしっかり横になれる広さの丈夫そうな物であった。


 メビウス王国では冒険者以外にアウトドアを楽しむ貴族等も多いためにこういったものが数多く発売されており、ついこの間まで使用していた数年前の製品と比べると技術の発達速度は凄まじいと心の中で感心する。


 テントを準備し終えたスヴェンは、鞄から追加で折り畳み式の“あるもの”を取り出した辺りで戻ったノンノが声を掛けてきた。


 「ただいまー、立派なテントやね。ところでそれはなんなん?板みたいやけど?」


 「これはウッドストーブという物ですよ。自分は少人数で行動する事が多くていちいち焚き火やかまどを組むのが面倒なので、つい買ってしまいました」


 焚き火に使えそうな物を集めてくれていたであろう彼女の手には様々な太さの木や、着火材となる乾燥した松ぼっくりに枯れ葉といったものを両手いっぱいに抱えてられていた。


 近くに置いて置くよう伝えつつ、目の前で板を四角く組み上げる。五徳となる部分も取り付け、着火材となるノンノが拾ってきた松ぼっくりを入れると、指先に霊力を込めたスヴェンが《着火》と言葉を紡ぎ火を灯した。


 「あとは細い木から順番に入れていくだけで良いという優れものです」


 「おぉー、料理とかにも便利そうやなこれ。ええもんやからメモしとこー」


 誰でも簡単に設営出来る便利な品々を見ては商売に活かせると判断したのか、すかさずメモを取る彼女を眺めながら鞄から折り畳みテーブルと椅子を出して野営の準備を完了させた。


 夕焼け空になってきた為そのまま続けて夕飯の準備に取りかかろうとすると、メモを取り終えたノンノが昼食の礼だと荷車から少し大きめの鍋を持ってくる。


 「これでも料理は自信あるねん、任せといて!お昼のお礼もあるし!」


 「ではお言葉に甘えて」


 持ってきた物をそのままストーブの上に置き、状態を確認するために蓋を開けた鍋の中には、切られた野菜とベーコンが水と共に凍らされて入っていた。


 しばらくすると溶けた水が沸き始め、野菜にしっかり熱が入ったところで一旦火から下ろした彼女は“茶色い塊”を箱から出し鍋に放り込んでからかき混ぜ、溶け残しが無いか確認して再度火にかけた。

しっかり温まりポコポコと音を立てる鍋からは濃厚な香辛料の香りを漂わせるその料理をスプーンへ少し乗せ味見をした彼女は満足そうに頷き、鍋を火から離してすぐ近くにある大きめの平らな岩の上に置く。


 深めの皿を2つ準備した彼女は皿いっぱいに盛り付けてからテーブルへ置くと、続いて太めの缶詰を手渡してきた。


 「完成や!イシュタール名物のカレーやで!……ホンマは米があったら良かったんやけど、切らしてしもてるから新商品のコレで堪忍や」


 「いえいえ、ありがとうございます。これは━━パンの……?缶詰なのにまるで出来立ての様な……」


 少しばかり申し訳無さそうな顔をした彼女から受け取った缶詰を開けると、そこにはパンが入っていた。


 取り出したそれは缶詰と思えぬほど柔らかく、ふっくらとした物であり、これまでの保存用に堅く焼かれたパンとは大違いであったためスヴェンは驚くと先程の表情から一転、自慢気な顔を浮かべた彼女はパンをカレーにつけながら続ける。


 「ウチの地元の新商品でな、前の取引の残りもんやねん。結構美味しいんやで?」


 一口分ちぎり、彼女の真似をしてカレーと呼ばれるものに浸してから口に放り込む。


 香辛料の辛味や香りと共にある様々な具材の甘さや旨さを、バターの香りがほんのり漂うパンに絡み絶品であった。


 「たしかに……。凄く美味しいですね。止まりません」


 「せやろ?ただカレーは米と合わせるのがいっちゃん美味しいからいつか米とも食べてみ!て、そないがっつかんでも……」


 「すみません、あまりに好みの味で……」


 「……おかわりあるけど、いる?」


 「是非いただきます」


 「そんな子供みたいな表情もしはるんやね、なんか母親にでもなった気分やわ」


 目を輝かせて皿を渡しおかわりを入れてもらうと、受け取る際にくすくすと笑いながらそう言われてしまったスヴェンは少し恥ずかしくなり、若干顔を逸らしつつもおかわりはしっかり食べ━━穏やかに夜は過ぎていった。


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 軽い睡眠を取りつつ見張りをしていたスヴェンは朝陽が射し始めた為いつもの様に紅茶を淹れようと折り畳み式のポットで湯を沸かしているとノンノが起きてきたので追加でカップを鞄から出し、ポットへ人数分の茶葉とお湯を入れてから朝食を作ることにした。


 茶葉を蒸らしている間にスキレットで目玉焼きを作り、昨夜追加で貰っておいた缶詰のパンを切り分けたものにのせる。

蒸らし終えた紅茶もカップへ注ぎ朝食が完成したところで歯磨きを終えたノンノが椅子へ腰掛けた。


 「おはよーさん、見張りと火の番おおきに!いただきますー。なんか美味しいもんばっかり食べてピクニックでもしてる気分やなぁ……。あとこの紅茶さ、美味し過ぎひん?」


 「お口にあったなら良かったです」


 夕飯の礼に持っている中で一番気に入っている茶葉を選んだので、気に入ってもらえて良かったと感じながらゆっくりと朝食を摂った。

 空を見上げると多少は雲があるが雨の降る気配は無く、風もほとんど吹いていないため道中は問題はないであろうことを確認しあう。

 食べ終えた一行は少しまったりと雑談してから近くの川で食器類を洗い、テント等も片付けてから出発した。


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 特にトラブルに見舞われることもなく想定していたより順調に進み、この先にある坂を下ればコッコ村が確認できるという場所まで到着した一行は目的地の方面から煙が上がっているのが見えた。


 「あれ、コッコ村の方角やんな?夕飯の準備にはまだ早い思うんやけど…」


 「……嫌な予感がします。急ぎましょう」


 妙な胸騒ぎを覚えたスヴェンは《追い風》と霊力を込め術を使用し荷車へ後ろから当て、速度を上げる事にする。


 坂を下った彼らが見たものは、冒険者や村人が何者かの集団と戦闘を行っている光景であった……。


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