表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

今日から巫女見習い

 

 軽く読むつもりが夢中になってしまった。

 椅子から立ち上がると辺りはどんよりした夕焼け色になっている。

 集中するとのめり込む癖が出てしまった。



 きゅううとお腹が鳴る、物凄くお腹すいた。

 急いで台所へ向かう。


「あっ!」


 台所には新しい調味料や調味道具が揃えられていた。


 なぜか、それを見ると突然胸の奥がきゅっとした。

 私の為に色々揃えて貰ったと思うと、なんとも言えない感情が広がる。


 貯蔵庫からベーコンとパスタを取りだし、調味料に鷹の爪があったので簡単なペペロンチーノを作って食べた。

 独りで食べる食事、昨日や今朝が特別だっただけでシンと静かな部屋にため息がでた。





 何処から鐘の音が聞こえる。


 アスファルトの道路、白いガードレール、悲鳴、あぁ起きないと。

 意識が浮上する、息が苦しい、体が動かない、鼻にチューブが着いている、あぁ起きないと。

 ボソボソと囁く声が聞こえる、ダメ、聞いてはダメ、起きろ。


 飛び起きると、汗ビッショリだった。

 何か嫌な夢を見ていたけど、忘れてしまった。

 まだ、どきどきしている。


 鐘が鳴り終わる。


 新しいローブとベールを被ると私なんかでも巫女さんになった気分になる。


 祭壇に行くとナタリーさんと隣に小柄な女性が立っていた。


「おはよう、ミレニアちゃん、よく眠れた?」

「あ、おはようございます!ナタリーさん」

「良かったらこれ」


 籠にリンゴが入っていた。


「ありがとうございます!服や調理道具もナタリーさんですよね?」

「良かった、よく似合ってる、そんなたいしたことしてないよ」

「あら、可愛い子じゃない!」

「紹介するわ、隣に住んでるマーサよ」

「ミレニアです、初めまして」

「宜しくねぇ、雑貨が欲しかったら贔屓にしてね」

「暫くは大変だと思うけど頑張ってね」

「はい、ありがとうございます」


 マーサさんにどんな雑貨を扱っているか聞こうとしていると、小柄の赤い顔をした男性が祭壇に怒鳴りこんできた。


「そんな余所者になに油うってんだマーサ!」

「あんた!何言ってるんだい!新しい巫女さんに!!」

「はん!余所者は余所者だ!ほらさっさとこい」

「ダグラスあんたまた酒飲んでるのかい!?」

「ナタリーにミレニアさん、ごめんなさいね」


 顔色が変わったマーサさんが、慌てて酔っぱらいのご主人を引っ張って帰って行った。

 あ、やっぱり余所者だよな私。

 悪意を向けられると足がすくむ。


「びっくりしたでしょう」

「は、はい」

「飲まないと小心者のダグラスって有名なのよ」

「は、はあ」

「まぁ色々あると思うけど頑張って!」


 ナタリーさんにパンっと背中を張られよろめいた。

 元気だしなよと声に出さないで応援されたみたい。


「ほっそいわねぇ!ちゃんと食べるんだよ!」

「は、はい。あ、そう言えばお聞きしたいことが」

「なんだい?」

「あの、神殿の貯蔵庫っておかしくないですか?」

「あぁあれかい?あれはね、あたしらにはよく分からない、何とか魔法っていうので、各地の神殿にお供えされた物が昔からずうっと貯蔵庫に仕舞われる仕組みなんだってさ、凄いよねぇ」

「空間魔法ですか?」

「そうそうそれだよ!よく知ってるねえ」

「いえ、私もちょっと聞いたことがあるだけなので」

「あれはね、神殿の管理者しか開けれないんだよ」

「成る程~」

「まあ飢饉になった時なんかは、貯蔵庫から食料を出すのも神殿のお役目だから、あんたが来てくれてこれでひと安心だよ」

「は、はい、教えて下さってありがとうございます」

「そんな堅苦しくしなくてもいいんだよ」

「はい」

「んじゃちょっとマーサが心配だから帰るわ」

「はい、気をつけて!」

「あんた、そんな時は『女神の道しるべがありますように』っていうんだよ」

「女神の道しるべがありますように!」


 パァっとナタリーさんに金の粉が降り注ぐ。


「女神の祝福じゃないかい!あんた凄いね!」


 びっくりしてる私にご機嫌でナタリーさんは帰って行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ