ヒロインざまぁ返しされる
誰でも黒歴史ってあると思う。
私の黒歴史は、乙女ゲームの異世界転生ヒロインで、逆ハーしたらあっさり悪役令嬢からざまぁ返しされたって事。
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「マリアンナ!今日限りで、お前との婚約を破棄する!」
今日は学園の卒業式、イベントのラストを飾る断罪の日。
マリアンナ様は不思議そうにこちらを見て、
「…理由を伺っても?」
「お前はミレニアを虐めていたそうだな」
「…ミレニア?どなたですの?」
「とぼけるな!」
私を抱き締めて、マリアンナ・デュボア侯爵令嬢を怒鳴っているのは王太子殿下のライア様。
そして私とライア様を守るように、宰相子息のハロルド様、騎士団長子息ユーレン様、魔術師長子息バルセル様、財務大臣子息ナハト様。
ようやく逆ハーレム達成、ここまでくる間シナリオ通りに色々な嫌がらせをされた。
「お前は、ミレニアに対して嫌がらせをしていたそうだな!」
「殿下、嫌がらせと言われましても、わたくしとミレニア様と言われる方と面識は御座いませんが?」
「嘘をつくな!同じクラスであろうが!!見苦しいぞ!」
ライア様が激高してマリアンナ様を怒鳴るも、美しい銀髪をさらりと揺らしマリアンナ様は答える。
「…殿下お忘れなのか、興味がないのか、わたくし既に学園は1年前に卒業しております」
「な!なんだと!」
「飛び級で卒業し、この1年は王妃教育で王妃様より指導頂いておりますわ」
「まさか!」
ライア様が学園長を見ると、学園長は頷く。
ライア様は苦々しいお顔をされましたが、次にはにっこりと笑い。
「マリアンナ、お前はこれを見ても同じ事が言えるのかな?」
「ハロルド!記憶水晶をもて!」
「はっ!」
「マリアンナ、これを見てもまだ澄ましていられるかな」
水晶から光が放たれ垂れ下がった幕に映像を映し始める。
机の中からノートを取り出して滅茶苦茶に切り刻む赤毛の少女はナハト様の婚約者様。
後ろから押されて池に落とされる私、押した茶色の髪の令嬢はハロルド様の婚約者。
お昼の学食で足を引っ掻けられ転んだ私、引っ掻けた令嬢はユーレン様の婚約者様。
準備室へ教材を取りに行くように言われて入ると外から鍵をかけられ閉じ込められた私、鍵を掛けたのはバルセル様の婚約者様。
そして、銀髪の後ろ姿の令嬢と四人の令嬢が集まりなにか企て事をしている場面で映像は終わる。
「まだこれでもしらを切るつもりか!恥を知れ!」
「銀髪だからってわたくしとは限りませんことよ?」
マリアンナ様は小さな水晶を取り出し。
「別の角度からの映像ですのよ?どうぞご覧になって」
そこに映っていたのはマリアンナ様ではなく銀髪の髪をした私。
いやいや!まさか!私じゃないですよこれ!
毎日攻略対象と一緒にいてそんな暇全く無いし、攻略対象の婚約者と仲良く話すわけないじゃないですか!!
「ミレニアそなた」
「違います!私じゃありません!!」
「「「「ミレニアさんから頼まれました!」」」」
私を見据え声を揃えて告発する少女達。
私から距離を置く攻略対象達。
やってません!!といくら叫んでも冷たい視線ばかり。
「そこまでだ!」
「ち、父上!」
「馬鹿者が!何を勝手にやっておる!」
国王陛下と王妃様が登場し、皆一斉に平伏し陛下のお言葉を待つ時。
ちらと見ると彼女の口角が上がっている。
彼女の得意な魔法は変身魔法。
私は悪役令嬢から、ざまあ返しされたと気がついた。
何が間違ってたの?
私、シナリオ通りにしていたのに。
頭が真っ白になった。
その後。
王子は廃嫡、近隣の魔物や盗賊を取り締まる騎士団に雑役兵として働くことに。
4人の取り巻きは。
極寒の北の地へ開拓者として飛ばされた者。
見習い神官にと神殿に放り出された者。
日の当たらないじめじめとした魔道塔の書庫の整理人として働きに出された者。
家から勘当され市井へ落とされた者。
4人の令嬢の婚約は白紙となり、領地で1年間の謹慎。
そして悪役令嬢だった彼女は隣国の王妃として嫁ぎ、私は騒ぎを起こした罪で神殿送りにされた。