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後編




それからまた早いものでもう一週間が経ち、とうとう狩猟大会の日。

できる限りのサポートグッズを作りこんでいたアナスタシアも出発する前日までの二日間は令嬢としての磨き上げに精を出すことになった。

これでも高位貴族の令嬢、それも魔術師として城に勤めることもすでに周知のものとなっているのだから彼女への注目は必須だった。

輝かしい金髪をいっそう輝かせ、日に焼けることのない真っ白な肌も陶器のごとく滑らかになるようにと侍女たちが総力をあげて磨く。

多少無理をして作ってしまったクマもこの二日間のマッサージであっという間に消えてしまった。

鏡に映る自分の姿に零れんばかりのアメジストの瞳を瞬かせ、侍女たちの実力に感嘆の溜息をついた。


大会の会場は王都から一日ほどの領地にあり、前日までに到着した各家は拠点へと張られたテントで一夜を明かすことになる。

テントと言っても床には木板が敷かれ簡易的だが寝心地のいいベッドやソファ、ダイニングテーブルなども置かれていてとても広く快適なものだ。

ジンデル家は今回は当主のバーナード、夫人のクレメンタインと嫡男ブライアン、アナスタシアが大会へと参加しているが一家4人とそれを世話する使用人の総勢40名ほどがテントへと入っても窮屈に感じないほど広いものだった。


朝早くからテント内を忙しなく動き回る使用人たちによって最後の仕上げとばかりに丁寧に支度を整えられたアナスタシアはクレメンタインに呼ばれてテントの外へと足を踏み出した。

そこではバーナードとブライアンがなにやら気難しい顔で話し合っていたのだが、アナスタシアの姿を見つけると親しみの籠った顔で笑いかけてくれた。


「おはよう、ステイシー」

「おはよう」

「おはようございます。お父様、お兄様。絶好の狩り日和ですわね。お兄様のご健闘を心よりお祈りいたしますわ」

「ありがとう。精一杯頑張るよ」


アナスタシアからの応援を受けブライアンは嬉しそうに笑いながらも、もうすでにどこか気疲れしている様子だった。

普通ならば会場に赴いた家長および嫡子は全員参加するものだが、バーナードは少し前に足を悪くしたことで今回からはブライアンのみが狩猟へと出ることになっている。

本来参加しない者は会場に来なくてもいいが、急な不参加ということもあり会場で家長のするべき仕事などを引き継ぐことができなかったので同行してその場で引継ぎをしていくらしい。

さきほど気難しい顔で話し合っていたのもその関係のようで、朝からブライアンは覚えることの多さに辟易していたのだ。

そんな彼が少しでもリラックスして楽しめるようにとアナスタシアはまじないをかけたハンカチをブライアンへと渡した。


「お前のまじないは本当に聞くから助かるよ」

「くれぐれも無理はなさらないでくださいね」

「もちろん。ところでステイシー。お前、最近……」


ハンカチを嬉しそうに受け取ったブライアンは真剣な顔で何かを話そうとしたが、その言葉は途中で不自然に止まった。

彼の視線はアナスタシアの後ろへと向けられていて、それを追うように振り返ろうとしたアナスタシアを彼はごく自然に後ろへと移動させた。

かくまわれた形となったアナスタシアがブライアンの背中越しに見たのは彼らの幼馴染でもあるマクシミリアンと彼に付き纏うように歩くシェリー・ヤング伯爵令嬢だった。

彼女こそがアナスタシアにとっての例の女性客であり、マクシミリアンの悩みの種である件の女性だ。


彼女は今でこそ伯爵令嬢として社交界へと顔を見せているが、元々は市井暮らしをしていた。

しかし数年前、ヤング伯爵が下町にお忍びした際に下町の場末で酔った勢いのまま手を付けた踊り子の娘だったことがわかり、亡くなった母親の遺言通りに伯爵を頼ってきたらしい。

最初こそ本当に伯爵の子かどうかも疑われたが、髪と瞳の色こそ違えど目鼻立ちはどことなく伯爵に似ていたことから本当だろうと結局迎え入れることになったという。

当時の伯爵は妻にも先立たれたばかりで気が滅入っていたこともあって心のよりどころを求めたのかもしれないが、それがこんなことになろうとは露ほどにも思っていなかっただろう。

年はアナスタシアと同い年のはずだが自由思想が強く貞操観念は著しく欠けていて、そのうえ礼儀作法はからっきしのため社交界では多くの淑女から眉を顰められる。

彼女の取り巻きはそこが彼女の魅力だと言っているが、実際は彼女を真剣に妻にと望んでいる様子はないことから、火遊びの程度の感覚なのだろう。

とはいえ、彼女と関係を持った時点でまともな女性はその取り巻きたちを相手にすることはないし、すでに決まっていた婚約が無くなる話もちらほらと出てきている。

それによってヤング伯爵へと抗議がいっていて何度も忠告を受けているらしいのだが、父親の気苦労などまったく意に介さない彼女は相変わらず自由に振舞っているのだ。


そしてそれは今日も変わることなく、何事かをずっと話しかけながらマクシミリアンのあとを追いかけまわす姿に周りの夫人や令嬢のみならず様々な人々がたいそう厳しい目を送っているがそんなことは彼女には関係ない。

マクシミリアンはといえば、完全に無視を決め込んだままアナスタシアたちがいる方へと足を進めている。

きっとバーナードやブライアンへ挨拶をしに来る途中で付き纏われたのだろう。


「ステイシー、お前は母上と共にテントに戻っていなさい」

「はい、お兄様」


アナスタシアの斜め前にいたクレメンタインも彼女を視界に入れた途端に苦虫を噛みつぶしたような顔をしたが、さすがは侯爵夫人。

それも一瞬で納めてみせて、すぐに使用人へと客人を招く準備の指示を始めてテントへと戻っていった。

そんなクレメンタインの背を追いつつブライアンたちが気にかかったアナスタシアはテントに入る間際にチラリと背後を振り返る。

余所行きの顔をしたバーナードとブライアン、そしてマクシミリアンが挨拶を交わしているが、その間もシェリーはマクシミリアンの傍を離れようとはしていない。

これは彼女もテントに招くことになるのだろうかと懸念するも、クレメンタインが指示をした使用人が用意している食器は彼女の分まではないようだ。

しばらくするとバーナードたちがマクシミリアンを伴ってテントへと入ってきたが、その傍にはシェリーの姿は無い。

最後まで不満そうではあったが事前に招待をしていないものをテントに招くわけにはいかないとどうにか彼女を自分のテントに追い返すことができたようだ。


「お久しぶりですね、侯爵夫人」

「お久しぶりでございます、アルフォード公爵。本日はお時間が許す限りどうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」

「お心遣いありがとうございます。アナスタシア嬢も、家族水入らずの時間の邪魔をしてすまないね」

「僭越ながらアルフォード公爵のことは家族同然に思っておりますので、ご一緒できて喜ばしい限りでございます。どうぞ気兼ねなくお過ごしくださいませ」

「ありがとう」


心なしか先ほどよりもどっと疲れた様子のバーナード達を迎え入れながら、クレメンタインがマクシミリアンへカーテシーをしたのに合わせてアナスタシアも腰を落とす。

爵位を継いだことで気軽に接することの出来なくなった相手ではあるが、アナスタシアとブライアンにとっては物心つく前から共に遊んだ幼馴染でもあるのだ。

そんな彼のことを今更邪魔に思うはずもない。

そう思って多少失礼を承知で家族のように思っていると告げればマクシミリアンは照れ臭そうに、それでも嬉しそうに笑った。


それから日が昇りきるまで穏やかな時間が流れた。

大会のスケジュールとしては午前中は狩猟の準備に使い、太陽が天辺へと昇る正午ちょうどから日の入りまでを制限時間とし、より大物を狩ったものへと国王から褒章が与えられる。

そして夜には宴会が開かれ、翌日に引き上げていくという前のりから三日かけての大きな催しなのだ。

だからまだまだ時間は有り余っている。

ジンデル家もマクシミリアンもまだ朝食を採っていなかったこともあり共に食事を採りながらたわいもない話をしていた。

そうしていつもよりも僅かばかり時間をかけてゆっくりとした食事を採ったあと、マクシミリアンは少しだけアナスタシアと話をする時間をバーナードへ願い出た。

それにはバーナードは最初複雑な顔をして渋ったのだが、結局はクレメンタインの後押しによってブライアンへの残った引継ぎが終わるまでの間だけ許されたのだった。


「それで、どうでしたの?」


アナスタシアに与えられたテントに場所を移し、持ち込まれていたソファに二人並んで座った途端、彼女は興味深げに身を乗り出してマクシミリアンに小さく問いかけた。

さすがに二人っきりというのはまずいと侍女と護衛が一人ずつ同じ空間にいるからだ。

どちらも主の話を外部に漏らすなんてことをしないことはわかってはいるけれど、どうしても人に聞かれてはいけないような気がして小声になってしまう。

本当を言えば向かい合わせに置いてあるソファがあるにも関わらず並んで座ったことにも侍女と護衛はほんの少しだけ眉根を寄せたが、彼らが兄妹同然に育ったことを鑑みたのか注意が飛ぶことはなかった。

そんなアナスタシアにつられるように顔を寄せたマクシミリアンの表情はあまりいいとは言えないものだった。


「うーん…それほど実感は湧かないな。確かに多少距離があるようには思うが、微々たるものだ。そもそも、彼女自身の纏う香水がきつすぎて負けてる気がする」

「ああ……やっぱりあのお方、用量を守ってくださらないのね」


いくら想い人の好きな香りの香水とはいえ、つけ過ぎれば周りへの公害となるだろう。

だからアナスタシアはどの客にも節度を持った使い方を念押しているのだが、やはりシェリーにそういった常識的なことを求めるのは無理があるようだ。


「ところでやっぱり彼女の香水はマクシーには苦手なものに感じられますの?」

「ああ、あれはちょっと…、むしろあれが好きな人っているのか?」

「そんなに?おかしいですわね。確かにあの方はあなたと同じ黒い毛髪を持っていらしたのに……別の方の物だったのかしら?」

「しかし、彼女の周りに私ほど暗い色の髪を持つ者はいないぞ?」

「ですわよね……」


マクシミリアンの黒髪は彼の母譲りのもので、彼女は東にある同盟国の王家の血もひく貴族令嬢だった。

いわゆる国同士の和平のために結ばれた婚姻だったものの、前公爵夫婦はそうとは思えぬほどに相思相愛で仲睦まじい夫婦だった。

そんな母譲りの黒髪を持つのはこの国では彼のみ、というわけではないにしろ今現在シェリーを取り巻く周囲の中ではマクシミリアン以外にその髪を持つ者はいないと言ってもいい。

もともと物語の中に出てくる王子様風の見目のいい貴公子を好んでいたシェリーの取り巻きは色素の薄い髪色を持つ者が多いのだ。

だからこそ彼女が持ってきた黒い毛髪とかねてからの噂から、香水の相手はマクシミリアンだと思っていたがそうではなかったのだろうかとアナスタシアは首を傾げた。

もしくはマクシミリアンの話や先ほどの態度から言ってやはり彼女が間違えたものを持ってきたのかもしれない。

たぶんこっちのほうが可能性の方が高い。


そもそもマクシミリアンは騎士として乱れぬように髪を固めていることの方が多く、それは夜会でも変わらなかった。

王子の護衛も兼ねることがある彼は夜会でも身だしなみや礼節に人一倍気を遣う。

抜けた髪ならば手に入れられるとは言え一度に数本なんて抜けはしないだろうし、それをそのまま放置することもないだろう。

となれば彼の頭から直接ということになるが、あまりよく思われておらず近寄ることすら忌避されている彼女が数本の髪を手に入れることができるのだろうか。


「痛っ!ステイシー、やめろ」

「あ、ごめんなさい。つい…」


考えに耽ったまま無意識にマクシミリアンへと伸ばされたアナスタシアの手はそのまま彼の髪を数本摘まみ引っ張った。

思いもよらないことにマクシミリアンが声をあげてようやくアナスタシアは自分のしたことに気が付いて慌てて手を引っ込めた。


「あの方がどうやってマクシーの髪を手に入れたのかと思って」

「……とりあえず、今のように髪を引っ張ったのではないことだけは断言できる。さすがに私もそれを許すほど愚鈍ではないし寛大でもないよ」

「そうですわよね……。ごめんなさい、乱れてしまったわ」


摘まみ上げたことで(ほつ)れたマクシミリアンの髪が元に戻るように撫でつけながら、やはり彼女が持ってきたのは彼の物ではないと確信を得た。

シェリーが持ってきた毛髪はもっと固い手触りをしていたが、マクシミリアンの髪は整髪料で固めていながらも柔らかい。

別人の毛髪で作ったのであれば、彼が彼女の香水を苦手なものに感じるのも不思議ではない。

となれば、彼女にそのことを伝えなければならないのだが、今日この後にある令嬢たちのお茶会で伝えることはできそうにない。

そもそも今日のアナスタシアも令嬢としてここにいるため、変装して正体を隠しているかの店の店主としてコンタクトを取ることは難しい。

しかしこれ以上の使用をやめさせるために、どうにかしてあの香水を回収できないものかと考え巡らせ始めたアナスタシアの手をマクシミリアンが掴んだ。


「もう、いいだろう?」

「……あっ、ご、ごめんなさい」


考え事をしながら(ほつ)れた髪を撫でつけていた手を掴むことで止めたのだ。

その顔は心なしか赤くなっている。

大人の男が髪のほつれを直していたとはいえずっと頭を撫でられ続けるのは気恥ずかしいものがあったのだろう

その事に気がついて、再びの失態にアナスタシアが離して引こうとした手はそのままマクシミリアンの手の中に収まったままだった。


「マクシー?」

「……いや、なんでもない。そろそろ行くよ」


その手の真意を図りかねて問いかければ、マクシミリアンは数舜何かを言いたげな顔をしたが、すぐにソファから立ち出入口へと踵を返した。

ちょうどよくブライアンも引継ぎを終えて呼びに来たところだったようで、彼はその場でいくつか言葉を交わしたあとバーナードへ帰宅の挨拶へ向かった。


「アルフォード公爵、よろしければこちらを」


準備のために一度自身のテントに戻るというマクシミリアンをジンデル家総出で見送ることになり、アナスタシアは先ほど渡し損ねたものをマクシミリアンへと差し出した。

ほとんど冷やかし参加のようなものなブライアンへのサポートグッズはリラックスの出来るまじないをかけたのだが、マクシミリアンは大会の注目株でもある。

率先して狩場でも前に出る彼ならばそのぶん怪我や危険も増えるだろうと治癒と浄化のまじないをかけたハンカチと受けた攻撃を一度だけ身代わりとなるまじないのチャームを渡そうと作っておいたのだ。


「ありがとう。こんなにいいものを貰っては頑張らないわけにはいかないな。お礼として一番いい獲物を狩ってくることにする」

「ほどほどに、ご無理はなさりませんように」


差し出されたマクシミリアンはそのサポートグッズに目を見張りつつもありがたく受け取った。

さすがは王家から直々に王城勤めのスカウトを貰うだけあって渡されたサポートグッズは王城の魔術師が丹精込めて作ったものとなんの遜色もない出来だ。

これは来年から騎士団に配給されるサポートグッズの質があがるかもしれないと期待が膨らむ。

ご健闘お祈りいたします、と深く頭を下げたアナスタシアにマクシミリアンはもう一度礼を言い自分のテントへと帰っていった。

そうして去っていった彼の背が見えなった途端にブライアンは不満そうな声でアナスタシアに呼びかけた。


「扱いの差が激しくないか?」

「何の話ですの?」

「サポートグッズ」

「お兄様、現実をご覧になってくださいませ」


実の兄である自分のものがリラックスのまじないという狩猟大会にはあまり関係のない物だったのに比べて、ただの幼馴染への贈り物が実践向きだったことに不満を抱いているようだった。

しかし何度でも言うがそれほど武に長けているわけではないブライアンは参加していてもほぼ冷やかしなのだ。

対して騎士団にも所属するマクシミリアンは優勝候補ともいえる。

それに見合ったものを贈るのは当然だろうと素気無く切り捨てた妹にブライアンはがっくりと肩を落とした。




それからほどなくして正午を告げる鐘の音が響き、大会が始まった。

狩りに出ない夫人や令嬢たちは家長や嫡男が戻るまでは暇となるためにその間はお茶とおしゃべりに興じるのが常で、夜には宴の開かれる開けた場所は日暮れ前までは大きなお茶会場となる。

かなり多くの貴族が参加するため見知った顔ぶれで固まることが多いが、ここも立派な社交場として情報交換や縁繋ぎの場として重宝されている。

少しでも高位だったり利のある繋がりを持ちたい夫人や令嬢たちには、ある意味で狩り場と同じほどの戦場でもあるからだ。

当人はいないにしてもその母や姉妹がその場にいれば彼女たちから目当ての人へと取り次いでもらうことだってできるし、そうでなくとも友人として認められれば多少の幅を利かせることができるのだ。


上から数える方が早い地位にいるジンデル侯爵家もそんな彼女たちにとってはお近づきになりたい家なので、夫人であるクレメンタインとアナスタシアもお茶会に顔を出さないわけにはいかない。

特にクレメンタインは現国王の従妹でもあるために体調不良以外の欠席は許されていないし、その娘であるアナスタシアもこれから魔術師としての地位を約束されていることもあって暗黙的に強制参加である。

アナスタシアも少しでも周りの令嬢たちに見劣りしないように身だしなみを整えてもらい、令嬢たちの狩場へと繰り出したのだった。




クレメンタインとアナスタシアが会場へと顔を見せたころにはもうほとんどの夫人や令嬢が席へとついており、高位貴族との接触の機会を今か今かと待ち望んでいるようだった。

大会には毎回王家からも参加者はいるが、王太子妃ならびに王子妃が同行することはあっても王妃が同行することはほとんどなく、現在3人いる王女も同行したことは片手ほどもなかった。

さらに今年はまだ結婚も婚約もしていない第三、第四王子が参加ということもあって王家に縁ある女性はお茶会にはいない。


となればこの場において最高位は公爵家ということになるが、公爵家の中でも血統ゆえに位の高いアルフォード家は前夫人は病床の夫に付き添って欠席、彼には姉妹はいないために一番繋がりを持ちたい家とお茶会でのきっかけ作りは難しくなっている。

あきらかに令嬢たちの士気が下がっているのが見て取れて、残された他の公爵家、侯爵家は一周回って苦笑を浮かべていた。


クレメンタインの顔馴染である夫人たちに挨拶をしたあと、アナスタシアも友人たちが集まるテーブルへと座った。

この場でどこそこの家と繋がること、という指示を父や母からこれといってされていない彼女は今日は友人たちとの話に花を咲かせることにしていた。

アナスタシアの友人たちは幸いにして揃って良縁に恵まれているために必要以上に新しい縁繋ぎをすることもなくお茶に興じていた。

そんな中悪戯を思いついたように含んだ笑みでアナスタシアに呼びかけたのはそのテーブルの中だけではなくこの会場で最高位の令嬢となるクリスティアナ・オールポート公爵令嬢だった。

彼女との付き合いは貴族が通うことを義務付けられている学園からではあったが、同じ高位貴族であり父同士も仕事上で付き合いがあることから良い関係を築かせてもらっている。


「そういえばお聞きしましてよ。今朝方早くからジンデル侯爵へアルフォード公爵がご挨拶に向かったそうですわね」

「わたくしも聞きましたわ。あの方を全く気に留めるでもなく追い返してアナスタシア様に御面会願ったとか」

「……なんだか話がねじ曲がって伝わっているようですわね」

「あら、アナスタシア様もアルフォード公爵を『家族のように』思ってるとおっしゃられたと聞きましたわ」

「まあ!それはそれは少しばかり気が早いのではなくて?」

「そうかしら?その言葉がその意味そのままとなるのも時間の問題ではなくて?」


クリスティアナに続いて口を開いたのはバーバラ・レミントン侯爵令嬢でアナスタシアにとっては初めての令嬢の友達であり親友とも呼べる令嬢だった。

彼女たちの含み笑いに便乗するように同じテーブルに着く令嬢たちもしたり顔でアナスタシアを見つめている。

ちなみにクリスティアナは第二王子との結婚が決まっており、レミントン家の一人娘であるバーバラは同等位の家の次男を婿に迎えることになっている。

他の令嬢も似たり寄ったりの経緯でもって婚約者を据えられている。

つまりこのテーブルで婚約者を持たないのはアナスタシアだけであり、彼女は新たな恋物語の作り手として恰好の餌食なのだ。

しかもその話のお相手はヒロインの幼馴染であり身分も見目も最高ともいえる公爵で、当て馬にうってつけのかたき役もいる。

そうでなくともアナスタシアの恋心と幼馴染という微妙な立ち位置を前々から見抜いては相談や励ましを送っている令嬢たちからすればマクシミリアンの挙動が気になるところではあるのだ。


そんな期待を込めたような友人たちの視線にアナスタシアは頭痛がしそうになってこめかみを軽く揉んだ。

たしかに朝からマクシミリアンはジンデル家のテントへとあいさつに来たがそれは幼馴染である兄と父に会いに来たのであってアナスタシアに会いに来たのではない。

二人きりで話すことになったのだって香油の効果のほどを報告するためで色めいた話のタネにはならない。

そもそも、屋内やそれほど大きな声でしていないはずの話がここまで筒抜けであること自体あり得ないことだ。

使用人は絶対忠誠を誓っているため彼らから漏れたのではないだろう。

ということはテントのそば近くに盗聴の類の魔術が仕掛けられている可能性もあるとアナスタシアは戻り次第すぐにそれを探すそうとひっそりと決めつつ彼女たちへと釘をさす。


「わたくしとアルフォード公爵は幼馴染。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「そうかしら?アルフォード公爵に最も近しく、そして傍に寄ることを許されている女性はアナスタシア様以外おりませんわ」

「……だから幼馴染ですもの。少なくとも彼は、わたくしを妹としか見ていないわ、きっと……」


自分で言葉にしながら哀しくなってしまう。

たくさんの令嬢から羨まし気に見られていても、少しも嬉しくはない。

地位も名誉も見目もよい、誰もが恋焦がれるマクシミリアンの幼馴染として、妹のように可愛がられている自信はあるがそれ以上でないことも百も承知だ。

シェリーのように豊満な女性ならばもう少し自信がもてただろうか。

それともマクシミリアンがよく注意するようにもっとお淑やかな深窓の令嬢であれば彼の関心を引けたかもしれない。

けれど残念ながらアナスタシアはそのどちらでもない。

平均よりも小柄なせいできっと彼の中ではまだ兄たちを追いかけて庭を駆けていたお転婆な少女のままなのだ。

それが彼の言動の節々から感じられてしまっているから、アナスタシアは仲がいいと言われたところで素直に喜ぶことができないでいる。

少しだけ気落ちしたようなアナスタシアの言葉尻にクリスティアナは励ますように彼女の膝上にある手に自分の手を重ねた。


「狩猟大会で一番いい獲物を狩り、それを捧げるというのがどういう意味を持つかご存じでしょう?」

「あれはお礼でしょう?」

「まさか!あれは勝利を捧げるという意味ですわ!昔から貴族男性が令嬢への愛の告白に使ってきた言葉よ」

「クリスティアナ様、バーバラ、それ以上の憶測での発言はアルフォード公爵に失礼よ」

「ステイシー……」


たしかにそういった使い方がされることは知っている。

けれど先ほどマクシミリアンがそれを言ったのは丹精込めたサポートグッズへのお礼であって他意はない。

それどころかそれがそういった意味を含むことすら知らないかもしれないような男なのだ。

儀礼として返した言葉にそこまで期待されてしまっては可哀そうだ。

何よりも今この場は大勢の夫人や令嬢の集まるお茶会の場、その話を誰がどのように受け取ってしまうかもわからない。

現に一番近いテーブルにいた噂好きの令嬢が先ほどからこちらの話に耳を傾けているのはおしゃべりをしているにはおかしな仕草から見て取れた。

先手を打たなければまた変な噂が流れかねないな、と口を開こうとしたところで足取り荒く近づいてくる令嬢がいることに気が付いた。

淑女らしからぬ足取りで向かってくる、その嫌というほど見知ってしまった令嬢は今朝方よりもいっそう派手なドレスに身を包んだシェリーだった。


「ごきげんよう、アナスタシア様」

「……ごきげんよう」


かろうじて一言返したことを褒めてほしかった。

アナスタシアとしては返事をしたくはなかったが、ぴったりとアナスタシアのすぐ近くで止まった令嬢から名指しで挨拶されて返さないわけにはいかない。

しかし、そもそもこのテーブルは上は公爵から下は辺境伯の高位貴族令嬢が集まるテーブルであり、それ以下の令嬢から声をかけるなどあってはならないこと。

しかもこの場には最高位の公爵令嬢がいるのにもかかわらず、彼女をすっ飛ばしてアナスタシアに挨拶を求めるなど言語道断。

ちらりと見やったクリスティアナの顔からは一切の表情が抜け落ちており、このテーブルや周囲にいた令嬢たちはヤング家の行く末を悟った。

公爵令嬢、それも第二王子の婚約者を無下にした罪はそれほどまでに重い。


それでもシェリーはそんなことなど露ほどにも考えていないのか未だにアナスタシアのことを睨むように見つめている。

彼女が何を望んでいるのかさっぱりわからないまま、どうにかこの場を切り抜ける算段を探してアナスタシアは視線をさ迷わせる。

その様子をどう受け取ったのかは知らないが、シェリーは不意に鼻を鳴らして笑った。


「マーキングなんて小賢しいマネするくせに、ずいぶんと小心者なのね。ああ、小心者だから小賢しいマネするのよね。正々堂々やる勇気ないならすっこんでてくださらない?」


彼女と言葉を交わすことどころか彼女が話しているのを直接聞いたのも初めてだったアナスタシアの最初の感想は随分とごちゃごちゃとした口調だなあ、だった。

それなりに学ばされたのだろう淑女としての言葉遣いと根っからの平民口調が混ざってさらに品を欠いているように思える。

けれど次にその言葉を理解しようとして、その意味のわからなさに首を傾げてしまう。


「まーきんぐ?」

「マーキングよマーキング。自分の匂いを自分の所有物につけるって意味よ。そんなこともわからないの?」

「あ、いいえ、マーキングの意味は知ってますわ。でも、それがどうして今お話にあがったのかわからなくて…こちらの飼い犬や飼い猫がそのようなことをしたのならたしかに貴方のいいぶんもわかるのですが、わたくし犬猫の類は飼っておりませんし……」

「っく、ふふっ」

「はあ!?」


本気でわからないというような仕草を見せるアナスタシアにはす向かいに座るバーバラがこらえきれない笑いを吹き出した。

それもあり馬鹿にされたと勘違いしたシェリーは顔が真っ赤に染まるほどに怒りを募らせて力いっぱいテーブルをたたいた。


「ほんっとうに貴族の女って碌なのがいないわね!いつもいつもこそこそ隠れてひそひそくすくす笑って、性悪女の集まり!こんな悪女の旦那にならざるを得ない男性方が可哀そうでならないわ!」


隠れてひそひそと囁かれるのはシェリーの自業自得の致すところであるが、自分はまったくもって間違っていないと自信のある彼女にとっては令嬢たち全員が悪女のように思えるらしかった。

しかし、そう思っているにしてもこの場でそれを言うのは彼女にとって悪手でしかない。

だってこの場にはその『貴族の女』しかいないのだから。

これで令嬢と言っとけばまだどうにかなったが、同じ『貴族の女』の括りにされる夫人方もこの場には大勢いる。

そんな夫人方を含む『貴族の女』全般を碌なのがいない、性悪女、悪女、そしてその旦那を可哀そうなどと言い切ってしまったのだからただで済むわけがない。

政略だろうがそうじゃなかろうが、嫁いでから今まで彼女たちは誠心誠意夫に尽くしてきている。

それを何も知らない小娘が否定したのだから黙っているなどあり得はしない。


視界の端でクリスティアナの母オールポート夫人が呼びつけた侍従に何事か指示を飛ばしているのを見てアナスタシアは顔を青ざめさせる。

指示を受けた彼が狩場のほうへと駆けていくのが見えたからだ。

ほどなくすれば彼に引き連れられたヤング伯爵が憔悴しきった顔でこの場に現れるだろう。

散々窘めた娘の愚行によって彼の貴族としての人生は今日終わるかもしれないが、手綱を握れないじゃじゃ馬にそうそうに見切りをつけられなかったという判断力の欠如はどうしたって庇えることではない。

唯一の救いは彼の両親も正妻も、シェリーを生んだ踊り子も既にこの世におらず、シェリー以外に子もいないので二人以外に迷惑をかける人がいなかったことだろう。

領民は多少迷惑を被るかもしれないが、統率力の欠如している領主よりも没収後に国が管理したほうが幾分か領地経営がよくなる気がする。

後継ぎがいないからこそシェリーを切り捨てられなかったにしても、あらかじめ他の手立てを考えておくのが当主という立場だ。


「ちょっと!聞いてるの!?」


癇癪を起こしたようにもう一度シェリーがもう一度テーブルを叩いたことでアナスタシアもようやく今ヤング伯爵の今後を憂いている場合ではないということを思い出す。

鬼のような形相で睨みつけられてすぐにでもこの場から逃げ出したい衝動にかられるが、そう簡単に逃がしてくれはしないだろう。


「少し、落ち着いてくださいませ。本当に全く話が見えませんの」

「はっ!かまととぶっちゃって。その純粋そうな顔でなんて言ってマクシミリアン様に自分と同じ香水をつけさせたのかお伺いしてもよろしくて?」

「香水?わたくしもアルフォード公爵も香水はつけておりませんよ?」

「はあ?香水つけてなくてなんで同じ匂いがするってのよ?ていうか、あんたはともかく、マクシミリアン様が香水つけてないってなんでわかる訳?」

「それは……え?同じ匂い?同じ匂いって?」


アナスタシアは贔屓目に見ても積極的な社交をしているとは言いづらい。

友人と呼べる令嬢はそこそこいるが、男性となると顔見知り程度の中が数人程度。

親しいと言えるような男性などそれこそマクシミリアンくらいしかいないので、アナスタシアの匂いを知っている人がいるなんて思えなかった。

それなのに同じ匂いがしていると最初から突っかかれたことにアナスタシアは訳が分からなくて目を白黒させるしかない。

そんな彼女に助け舟を出したのはバーバラだったが、それにもアナスタシアは困惑してしまうことになる。


「ステイシー、噂になってるのよ。あなたとアルフォード公爵が同じ匂いがしてるって。しかもここのところはずっと一緒に過ごしているんじゃないかって下世話な尾ひれがついている物もあるわ」

「え?ずっと一緒にって、何それ?どうして?」

「わたくしの婚約者が公爵をからかったらしいんですの。自分の発言がどんな影響を与えるのか全く考えもなく、声高にアルフォード公爵がこのところ纏わせている香りを『どこかで嗅いだことがあると思ったら、サポートグッズを納めに来たジンデル侯爵令嬢と同じものだ』って。しかも『この一週間ご令嬢は家に帰ってないらしいじゃないか、期間も一致してるし、これはどういうことだろうね?』だなんてことも言ってしまったらしいわ。もちろん彼はそんな不名誉なことを言うなと怒ったらしいけれど、人の口には戸が立てられないものね」


ごめんなさいね、と謝るのはクリスティアナで、彼女の婚約者と言えば第二王子殿下。

魔術師は新しい機能をつけたサポートグッズを納めるときに危険がないかどうかを一度王家の前で披露して見せなければならないのだが、今回の大会に合わせてアナスタシアは新しい効果のグッズを納めたために例にもれず王家へと謁見している。

その場には第二王子ももちろんおり、クリスティアナの友人ということもあってそば近くに寄って気安く言葉をかけてくれたのだ。

そんな第二王子は国防関連の政を担っており騎士団もその管轄となる、言うならばマクシミリアンの上司でもある。

その時に彼の匂いとアナスタシアの匂いに気が付いて、その後マクシミリアンをからかったのだそうだ。

そんな内輪だけのほんの軽口のつもりが、どこからか漏れたその話が噂として社交界に流れているらしい。

この軽率さについてはクリスティアナを始め王妃や王女たちが第二王子を散々お叱りしたのだというが、流れ出した噂を完全に消すことはできずに今日にいたったようだった。


元々引きこもりの気があり、それこそこの一週間は仕事のために完全に工房に籠ってしまっていたアナスタシアは知りようもない。

家族も娘が男の家に入り浸ってるなんて不名誉な噂を当人に教えるのは忍びなかったのだろう。

今朝、ブライアンが真剣な顔で何かを言いかけたのはこの噂についての注意だったのかもしれないと今更思い至っても時すでに遅しだった。

そこまでくれば、今日これまでの周囲の反応に納得がいくと同時に今度こそアナスタシアの顔色から血の気が引く。


同じ匂いを纏い既に深い仲と噂の公爵と侯爵令嬢。

そんな侯爵令嬢の親の元に朝から出向き朝食を共にした。

しかも二人きりの時間まで与えられ、出立の前にはお手製のお守りを渡し、その礼として勝利を捧げると約束までした。

こんなの親公認ととられてもおかしくはない。


「ち、違うわ!わたくしとマクシーはそんなんじゃ」

「マクシー?マクシーですって?これ見よがしに愛称なんて呼んじゃって、ついに本性現したんじゃないの!?」

「違うってば!わたくしと彼は幼馴染だから愛称くらい呼ぶわ」

「じゃあ普段からそう振舞えばいいじゃない!あたかも親密じゃありませんみたいな顔して噂なんて流させて、本当に小賢しい女ね!」


ヒステリックに何度もテーブルを叩きながら捲し立てるシェリーにはもう何を言っても火に油の状態だった。

苛立ちが最高潮に達した彼女がテーブルの上のティーカップに手を伸ばしたのを見てアナスタシアはすかさず席を立って投げつけられたものを回避した。

同じテーブルについていた令嬢たちが悲鳴をあげながらも続投させまいと他の食器を取り上げたことに舌打ちをして、何かないかとあたりを見渡したシェリーはふと思い出したかのようにドレスの隠しポケットへと手を突っ込んだ。

そこから取り出したのはアナスタシアにはとても見覚えのある瓶で、あんな固さと重さの物を投げつけられたのではたまったものではないとさらに彼女から距離を取る。

それを追うように踏み出しながらシェリーは香水瓶をアナスタシアに全力で投げつけた。


「きゃあ!」


ガシャン、という音と共に割れた瓶の破片が中身と一緒にあたりに飛び散った。

盾にするつもりで回り込みかけたテーブルのクロスや足まで隠れるドレスの裾のおかげでガラス片でけがをすることはなかったが、かなりの量の香水がアナスタシアのドレスにかかってしまった。

幸いにして無色透明のそれがシミになることはないが、シェリーが纏うのとは比べ物にならない匂いが強くあたりに漂いはじめる。

暴挙に出たシェリーにさすがにこれ以上アナスタシアの傍にいさせるわけにはいかないと控えていた侍女たちが彼女を引きずっていく。

なおもギャーギャーと騒ぐシェリーを横目に友人たちはアナスタシアを気遣うように傍へと寄り添ってくれた。

けれどそうされているアナスタシアには嫌な予感が過っていた。

どうにかしてその胸騒ぎの理由を突き止めようとしたその瞬間、空気がざわりと騒ぎ、アナスタシアは背筋を凍らせた。


「何か、来る……」

「え?」


直感の赴くまま向けた視線の先は狩場となる森の方向で、その鬱蒼と生い茂る薄暗い木々の隙間から強い視線を感じた。

そして目に見えない視線の持ち主とにらみ合うこと数秒、じりじりとその正体が日の下へと踏み出してきた。


「……ブラック、ウルフ?」


そうつぶやいたのはアナスタシアでもあり、他の令嬢でもあった。

そこかしこから信じられないという声が弱弱しく漏れだしていた。

彼女たちの目の前に現れたブラックウルフは魔獣の代表格であり、この狩猟大会の獲物でもある。

彼らは縄張り意識が高く、自分たちの住処と決めた範囲外に出ることはまずない。

範囲を広げることもままあることではあるが、大会前には毎度その縄張りを確認しているのだ。

この付近に繁殖するブラックウルフの縄張りは狩場である森の中腹あたりにあり、だからこそ森のすぐ近くであっても夫人たちは安心してお茶に興じることができていた。


そんなブラックウルフが森の外へと出てきた。

その事実は夫人や令嬢を恐怖に陥れるには十分で、一番初めに悲鳴を上げて駆けだした令嬢を皮切りに、次々と女性たちは逃げ惑い始めた。

肉食獣は逃げる獲物を追う習性があると知っていれば普通そんなことはしないだろうが、パニックに陥った人にはそんなことは関係ない。

そうして逃げ出す令嬢たちをブラックウルフたちは始めは追いかけようとしたが、どこか様子がおかしかった。

じっと睨みを利かせるブラックウルフも駆けだそうとしたブラックウルフも、しきりに鼻をひくつかせてはきょろきょろとあたりを見渡しているのだ。

何かに気を取られているようにも見えるその様子に逃げ切れるかもしれないと、恐怖で竦みあがっていたバーバラを奮い立たせて先に行かせる。


直接の戦闘能力はないにしても戦場や討伐へと同行することもある魔術師は事前に護身術を学ぶことが義務付けられている。

来年度から魔術師として活動することが決まっているアナスタシアも当然学んでいる。

つい最近受けたばかりの対魔獣の対処法を思い出しながら、アナスタシアはブラックウルフから一瞬も視線を外すことなく後退していく。

魔術を発動するにもここにはサポートグッズの類はないし、そもそも持ち込んだグッズに魔獣を退かせるほどの威力の物はない。

そうなれば安全な場所まで逃げるのが最良にして唯一の手だった。

じっとりと滲む嫌な汗をかいた背を小さく吹いた風が軽く撫でていき、その風に反応するようにブラックウルフの鼻がひくりと動いた。

そうしてアナスタシアへと振り返った獣の目とがっちりとあった視線に、彼女は喉を引きつらせてしまう。

これは、死ぬかもしれない。

どこか冷静な部分の頭がそう悟ったのと、ブラックウルフが地面を蹴りだしたのはほぼ同時だった。


「ステイシー!!」


ぎゅっと目をつむった暗闇の中で聞きなれた愛称、そしてどこか懐かしさのある安心できる香りがアナスタシアを包み込んだ。

次いで鼻につく鉄の匂いとキャゥン、と情けのないブラックウルフの鳴き声が聞こえて目を開けたアナスタシアの目の前は、真っ暗なままだった。

目を開けたのに真っ暗な視界に混乱するアナスタシアがあたりを見回そうにもがっちりと固定されているように動かない。

さらに混乱し始めた彼女の頭上から、安堵したかのような溜息が降り注いだ。


「大丈夫か?ステイシー」

「マ、クシー……?」


どうやら抱え込まれていた頭がようやく解放され、呼びかけられるまま見上げた先にあったのは心配そうに見下ろすマクシミリアンの顔だった。

怪我は?と問われて見下ろした自身の体にはドレスの裾が破けている以外の異常はなく、アナスタシアはかろうじて首を振ることで応えることができた。

そしてその見下ろしたドレスからずらした視線の先では血にまみれて絶命したブラックウルフの遺骸が横たわっている。

間一髪のところでマクシミリアンが駆けつけて切り捨てたのだろう。

絶命していてもだらしなく開けられた口から除く鋭い牙に自分のドレスの残骸が引っかかっていることに気が付いてしまったことで、恐怖が遅れてやってきたアナスタシアの瞳からぼろぼろと涙が溢れ始めた。


「まくしぃ…」

「大丈夫、大丈夫だから」


泣きすがるアナスタシアを宥めながらマクシミリアンは次の襲撃がないように周囲を警戒して見回す。

多くの騎士や狩りに参加していた貴族たちがブラックウルフへと対峙しており、マクシミリアン達の前にも数人の騎士が進み出たことで彼はほんの少しだけ肩の力を抜いた。

グズグズと自分の腕の中で泣き続けるアナスタシアを慰めることを優先することにしたのだ。

こうして恐怖に泣いている姿を見ると魔術師としての腕は一流であっても、やはりアナスタシアはいまだ戦場にも出たことのない年端もいかぬ娘なのだと実感する。


狩りが始まってしばらくして魔獣の動きがおかしいと気が付いてから、それらを追うように森の外へと出てきてすぐに目に入った光景にマクシミリアンの心臓は止まるところだった。

大型の犬よりも大きな体躯をもつブラックウルフとにらみ合っているのは自分がよく知っている人物で、彼女は傍にいた令嬢を奮い立たせて逃がしているところだった。

それがアナスタシアだと理解した瞬間にマクシミリアンは考えるよりも先に飛び出していた。

間に合って本当に良かったと思う。


「よく頑張った」


何よりも人命を優先するという魔術師としての立派な行動を褒めてやればマクシミリアンの服を握りしめていた手がさらに強く握りしめられた。

とりあえずもっと魔獣から離れた安全な場所へ連れて行こうと、アナスタシアの体を抱きかかえようとしたところで、悲痛な叫び声が響き渡った。


「きゃああああああ!誰か!助けて!!」


その悲鳴に咄嗟に剣を構えたマクシミリアンと驚いたアナスタシアが振り返れば、一人取り残されていた令嬢をブラックウルフが群がっているところだった。


「っしぇりー、さま?」

「えっ!?」


群がる魔獣たちの隙間から垣間見えるドレスは燃えるような赤色で、今日この日にその色を着ている人はシェリー以外にいなかった。

赤色と言えば魔獣に限らず多くの獣たちにとっての興奮色であるために、赤系統の色は暗黙の了解として禁色となっていたのだ。

それを知らなかったのか、それとも知っててもあえて目立つために着ていたのかはわからないが、彼女と関わりたくない一心でお茶会にいた誰にも注意されることもなかったのだった。

そんな真っ赤なドレスを翻しながら悲鳴を上げる彼女に魔獣たちは次々と群がっていき、誰もが彼女の生存は絶望的と思っていた。

しかし、そのうちにそのおかしさにみんな困惑し始めた。


「いや!痛い!誰か!助けて死んじゃうぅ!!」

「……いや、ちょっと待て。様子がおかしくないか?」


普通襲われた人にあれだけ魔獣が群がっていれば数十秒もすれば絶命して声など聞こえなくなるだろう。

それなのにずいぶんと長い時間彼女の悲鳴が途切れることなく聞こえているのだ。

それを訝しんで群がる魔獣たちをよくよく目を凝らしてみてみれば、どのブラックウルフも彼女に牙を立てることなく分厚い舌でべろりと舐めてみたりぐりぐりと頭を押し付けてみたりと、まるでじゃれつく犬のような仕草をしていた。


「あれは……」

「じゃれてる?」


その光景には誰もが呆気に取られてしまっていた。

彼らにとって人間はいつだって捕食対象で、人間も彼らを外敵として対峙してきた。

だからブラックウルフがあのように人間にじゃれつく姿は誰も見たことがなかったのだ。

こんな光景を誰が想像できようものか。

ブラックウルフの中にはついにはひっくり返っているものまでいて、よもやシェリーは魔獣使いだったのだろうかと誰もが思い始めたころ、アナスタシアはあることを思い出した。


「……黒い、毛」

「なに?」

「黒くて、ちょっと質の固い毛!!」


シェリーたちのほうを指さしながらそう叫んだアナスタシアに周囲にいた騎士たちは何のことか点でわからない顔をしたが、マクシミリアンだけはハッとして彼女とブラックウルフを交互に見やった。


「あれは、俺の毛じゃなかったのか!」

「ええ、たぶんそうですわ。黒くてあなたと同じくらいの長さだったから勘違いしたんですのね」

「じゃあ、君が彼女に作った香水、は……」

「ブラックウルフの、好む、におい……」


顔を見合わせて謎が解けたように興奮気味に話していたアナスタシアの顔が次第に青く染まっていく。

好みの香りを発する香水は対人の物ですら、人によってはその場で自分のものにしてしまいたい衝動にかられるようなこともあるのだ。

それが本能のままに動く魔獣相手だとどうなることやら、考えただけでも恐ろしい。

すぐさまマクシミリアンもシェリーからブラックウルフを引きはがそうとするが、彼女の匂いにめろめろの状態の魔獣たちは剥がしても剥がしてもまた彼女の元へと戻っていく。

剣で切りつけようにもじたばたと暴れるシェリーに当たる可能性を考えるとそうもいかないうえ、それで刺激された魔獣が彼女を襲わないとも限らないのでマキシミリアンを含むどの騎士も手が出せない。

魔術式トラップも同様だった。

しかしこのままブラックウルフがじゃれているだけでいるという保証もない。

アナスタシアもどうにかしないとと必死で考えて、ふとマクシミリアンが目に入った。

さすが生来の騎士というだけあって、彼女を助けるために彼も懸命にできうる限りのことをしている。

彼女の嫌いな香りを纏うくらいあんなにも苦手としていたのに……苦手な?


「っ水!水を頂戴!バケツ一杯分で構わないわ!」

「え!?あっ、ハイ!」


すぐ近くにいた騎士に指示を飛ばして自分もあたりを見渡し、媒体になりそうなものを探す。

倒れたテーブルのクロスが目についたがお茶会の予定だったために書き込めるものを持っていなかった。

仕方なしに地面に直接書くことにして、戻ってきた騎士に短刀を借りて魔法陣を描き始める。

その間にも魔獣たちの興奮は高まっているようで聞こえる音が荒っぽさを増し、悲鳴もその痛みに耐えるものが増えてきた。

描き上げた魔法陣の上にバケツを置き魔力を込めれば、中の水が一瞬だけ光ってその性質を変える。

そしてアナスタシアはそのバケツを抱えて一目散にシェリーのもとへと駆け寄った。


「どいて!」


バシャンッと派手な音をたてながらバケツの中身は群がる魔獣たちにかけられて、一瞬その動きが止まった。

かと思えば次の瞬間には魔獣たちはキャンキャンと情けない声をあげながら右往左往し、森へと逃げていく。

中にはふらふらと足元も覚束ないものもいる。

シェリーから魔獣を引きはがそうとしていた騎士たちはそれを呆然と見送るしかない。


「ステイシー?今、何を?」

「消毒液ですわ。獣が消毒液の匂いを嫌うというのを昔どこかで聞いて、魔獣だって獣ですしウルフって言うからには犬と同じかな、と……魔獣なんで一か八かだったけれど」


効果があってよかった、とバケツを抱えたままその場にへたり込みそうになったアナスタシアをマクシミリアンが咄嗟に支えた。

ありがとうと礼を言いつつシェリーを見れば、彼女は極度の緊張と解放された安堵感、それから消毒液の強い匂いに気を失ったようで数人の騎士によって救護所へと運ばれていくところだった。

どれほどの効果があるのか見込めずにできうる限りアルコール度数を高くしたために匂いも相当きつく、あたり一面ツンと鼻につく匂いが漂っていた。

それを頭からかぶったのだから、ある意味で酩酊状態でもあるので起きた後は酷い吐き気などの二日酔いに似た症状があるかもしれない。


それからは当たり前だが、もう大会どころではないので誰も彼もが事後処理に追われた。

随行の魔術師総出でテント周辺の守りを強化し、お茶会場の後片付けをするもの以外はそれぞれのテントにて待機することになった。

マクシミリアンは他の騎士に警備周回の指示を出しつつ今回の件についての報告のために王家のテントへと向かうようで、一応事態を納めたアナスタシアも一緒に行くことになった。

そこではまず同行していた王子たちに解決の労をねぎらわれたのだが、ことの発端が自分にあるためアナスタシアは素直にそれを自白した。


「ああ、あれか。あの巷で噂の香水」

「あー、あれねー。面白いもの作ったなって思ったんだけどなぁ」

「こんなこと起ったら、まあ、咎めないわけにはいかないけど……」

「でも事故だしなぁ……」


順を追った説明を聞いた王子たちは納得したあと、その処分に困ったように悩み始めた。

双子の第三、第四王子はどちらもアナスタシアと同い年で貴族学校でも気安く話す中だったためにどうにも砕けた口調になるようだった。

そのせいで緊張感が感じられないがこれでも優秀なことに変わりはなく、この大会では全ての権限を国王から一任されており今回の事件を含む事故などの采配は彼らが行うこととなっている。

だからこそアナスタシアも当事者としてただで済むことはないと理解してその処分を粛々と受け入れるつもりでいた。


「それを売っていたのは、商業街の一角で香水店を営むターヤという出身地不明の女だろう?」

「え?」

「しかも今回は聞いた限り依頼人が用意したものが原因で起こった事故だ」

「でも、」

「届け出にある通り店主はその毛髪等の持ち主については詮索しない契約を交わしているし、これまでも要注意事項はしっかりと説明していて顧客もそれに同意したうえでサインをしている」

「接客も丁寧で商業街の人たちからの評判もいいのも幸いしたな。裁判起こされても90%で勝てるぞこれ」

「いや、そういうことじゃなくて……」

「まあ、残念ながら責任取って閉店は免れない」

「ええ……閉店、だけ?」


あまりにも軽すぎる処罰にアナスタシアは困惑してしまう。

場合によっては投獄だって覚悟していたのだ。

隣で聞いていたマクシミリアンも訝し気に双子の王子を見るが、彼らは混乱して目を泳がせるアナスタシアを愉快そうに笑って見ている。


「ぶっちゃけた話さ。王家としてはアナスタシア嬢のような優秀な魔術師をみすみす失いたくはないわけで」

「はあ……?」

「今回、アナスタシア・レイ・ジンデル侯爵令嬢は機転を利かせてシェリー・ヤング伯爵令嬢を救った功労者であり、褒章を授けてもいいほどの行いをしたが彼女はそれを辞退する」

「一方、王家はヤング伯爵令嬢に危険なものを売った商業街の店主の商業権をはく奪しお店も閉店。逮捕するかどうかは、まあおいおい調査結果を待ってからだ。まあしないけど」

「……つまり?」

「いやあ、アナスタシア嬢はとっても謙虚だなぁ」

「それにとんでもなく優秀だしこれからの魔術師団は安泰だぁ」


随分と遠回しで筋書き張った王子たちの言葉にアナスタシアはもうすっかりついていけてないようで、頭上に疑問符を浮かべる彼女の代わりにマクシミリアンが結論を問いかけた。

しかしそれすらもはぐらかすように王子たちはにっこりと笑うだけだった。

曲者ぞろいの王家は統治者としては喜ばしいが、こういう時には自分で考えろとばかりに明言を避けるから厄介だ。

直属の上司である第二王子相手で慣れているマクシミリアンはいいが、令嬢として大事に育てられてきたアナスタシアにはまだ難しいだろう。

そんな彼女の代わりにつまり政治の絡んだあれこれで無罪放免になるらしいと耳打ちしてやれば、彼女は納得したようなしてないような曖昧な表情になってしまった。

何にせよ王家の決定には逆らうことなんてできないのだから、アナスタシアはそれを受け入れるしかない。

魔術師としてこき使ってやるぞという言葉の裏も垣間見えたので、来年からは馬車馬のように働かされるかもしれないが彼女はそれを嬉々として熟していくだろう。







今後の予定などを決めてから王家のテントを出た二人はジンデル家のテントへと向かうために歩き始めた。

そこかしこにある参加者のテントはまだ先ほどの事件を引きずっているせいかどこもシンと静まり返っていた。

そんな中、二人の土を踏みしめる音が響いている。

その途中ふと思い出したようにアナスタシアは隣を歩くマクシミリアンを見上げて謝罪をする。


「そういえば、マクシーもごめんなさいね。香油のせいで変な噂がたってしまって……私のほうからちゃんと弁明しておきますわ。それにアンチ薬も作りますから、元通りの香りに戻せるから安心してくださいませね?」

「いや、ああ……そうだな匂いは戻した方がいいか」


その謝罪を受けたマクシミリアンはどこか上の空気味で、いつもの覇気が感じられず、アナスタシアは心配してその顔を覗き込んだ。

と同時に彼の足が止まったことでアナスタシアもその場で立ち止まることになった。

覗き込んだ先で思いのほかしっかりとかち合った目に動揺してしまったが、彼のほうがすぐに目を瞑ってしまったのでそれは本当に一瞬のことだった。

それから緊張を解すように深呼吸を数回繰り返したマクシミリアンは意を決したように口を開いた。


「ステイシー。噂はそのままで……というのは駄目だろうか?」

「え?」


何を言われるのか身構えていたアナスタシアがその言葉の意味を理解するよりも早くマクシミリアンは続けた。


「正直、あの香りを嗅いだ時、いや使うたびにすごく安心していた。ステイシーと同じ香りだと指摘された後も……気色悪いと思うかもしれないが、使うたびに君が傍にいるように思えて安心した」

「そんな、気色悪いなんて……ないわ」


自分の匂いを嗅いでるなんて宣言は確かに他の人ならば気持ち悪く感じるだろうが、マクシミリアン相手だとそう思えないのは惚れた弱みだろう。

気持ち悪くないと返したアナスタシアに不安げに顰められていたマクシミリアンの顔はどことなくホッとしたように緩められた。

それからまた一つ深く呼吸をして彼はアナスタシアの手を恭しくとり続きを口にした。


「きっかけはどうあれ話せる時間や手紙のやり取りが増えたことを嬉しく思う自分もいて、触れられるのも他のどんな女性でも嫌悪しかなかったのが君ならばもっと触れていたいと思えた。それに、さっきも、君を失うかもしれないと思った瞬間に頭が真っ白になって、気が付けば君を抱いていた」


一言一言選んでいるようにゆっくりと紡がれる言葉をアナスタシアも固唾をのんで聞くしかなかった。

繋がれたままの手に滲む汗はどちらのものかもうわからない。

それだけアナスタシアもマクシミリアンも緊張しているのだ。


「ああ、つまり、その……本当はこの大会で一番の獲物を獲って申し込みたかったんだが…」


纏まらないまま話してしまっていることできまり悪そうに言葉を切ったマクシミリアンは握ったアナスタシアの手はそのままにその場で片膝をついた。


「ステイシー。いや、アナスタシア・レイ・ジンデル侯爵令嬢。私と結婚していただけませんか?」


獲ってきた獲物はおろか花束すらなく、ましてやこんなテントの立ち並ぶど真ん中で、土にまみれた騎士服でのプロポーズのなんと不格好なことか。

それでもアナスタシアは信じられないくらいの喜びと感動を覚えた。

どうせ自分だって髪もドレスもぼろぼろの状態なのだから彼のことばかり責められやしない。

握られていた手を引き抜いて、自分よりも低い位置にある頭のてっぺんの乱れた髪を優しく撫でつけていると、その間もマクシミリアンの目は不安で揺れている。

それがなんだか可愛く見えて、くすりと笑ったアナスタシアはそのままマクシミリアンの首へと抱き着いた。


「喜んで!」


そうして抱き着いたアナスタシアをマクシミリアンはいつものように淑女らしくと注意できるはずもなく、ぎゅっと抱き着いた彼女の体を同じように強く抱きしめ返したのだった。







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