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勇者王子と女騎士は英雄従者と聖女姫

王子と女騎士の話。 @短編 その27

とある国に、変わり者の公爵令嬢がいました。

剣を極めるのが己が道とばかりに、剣の稽古に励んでいました。

そして17歳で腕を見込まれ、王子の護衛を努めるようになったのです。

王子は14歳。剣の稽古も、女騎士が相手をするようになったのです。

思春期真っ只中の王子はそれは反抗しましたが、腕の立つ女騎士に、王子はコテンパンでした。

王子はもう意地になって稽古をしました。

でも勝てません。

女騎士は剣聖だったからです。そう簡単に勝てるわけがありません。


ですが、王子が17歳になって、称号が現れました。なんと『勇者』です。

その日から、メキメキと剣の腕が上がり、そのうち『良い勝負』になるようになったのです。

まあ引き分け、ですね。

でもここから逆転するつもりの王子です。

あと何回対戦したら勝てるだろうか。

ずっと勝ちたかった王子は、今日も引き分けでしたが手応えを感じていました。


一方の女騎士はというと・・力の均衡がそろそろ王子に傾く、そう感じるようになってきました。

騎士ですがやはり女です。そして、剣聖よりも勇者の方が強いです。

女騎士はお仕えしている王子が強くなるのが嬉しくてたまりませんでした。

ですが、そろそろ男の剣聖騎士に替わる時期が来たと悟りました。

王子がもっと強くなるには、もっと強い相手と戦う方が良い。

女騎士は、上司である騎士団長に、護衛を辞める事を申し出ました。


「ご苦労だった」


騎士団長もそろそろ告げなければと思っていたので、申し入れを受諾しました。

女騎士は騎士見習いを育てる教官になる事になりました。




護衛が女騎士でないので、王子は側にいる騎士に尋ねると、護衛は替わったと告げると王子は激昂しました。

何も言わないで、去った女騎士を薄情だと思いました。

なぜ一言告げないのか。

護衛でしたが、剣の師匠でもあった女騎士に、ただ怒りしか湧きませんでした。

それに王子はまだ勝っていません。引き分けのままです。


ある日移動中に、練習中の女騎士と騎士見習いを見て・・・

王子は悟ります。


ああ、私は女騎士にとって、弟子でしかなかったのだ、子供としか思われていなかったのだと。

男と見て貰えていなかった・・・ああ。私は彼女を・・


自分の気持ちに、やっと気づきましたが、どうすることも出来ません。





1年後・・・

王子は隣国の王女と婚約をする事になりました。


国境近くまで王女を迎えに行く迎賓隊に、女騎士も加わっていました。

隣国の王女の護衛役です。

1年ぶりに会った二人ですが、話すこともありません。


隣国の王女がいよいよ到着する時刻・・・も過ぎ、ティータイムの時刻になっても来ません。

何事かあったのではないかと、ざわつき始めたその時、矢が数本頭上から降って来たのです。


なんと、この婚約は奸詐、王子を暗殺する為の謀りごとだったのです。

思えば王族、しかも嫡男の護衛にしては少ない人数でした。


女騎士は舌打ちをしました。何故気付かなかったかと。

第二王子の母である側室は、公爵令嬢。一方の第一王子の母で正妃は伯爵。

最近王の体調が優れないので、婚姻を早く纏めようと話を進めていたのだが、それすら陰謀のひとつ、隣国と取り交わしてすらいなかったのです。

多分、王子は盗賊に襲われて死んだ。そんな嘘八百で葬り去られるのだろう。

そんなことはさせない!!


「ギルレイ様!!こちらへ!!」


女騎士は馬で王子の元へ駆け寄り、彼の馬の尻を叩いて走らせます。


「イズエラ!何を」

「どうやらあなたを暗殺するつもりです!早く逃げてください!」

「・・ここからなら、ボブズ辺境伯が近いな」

「あそこならギルレイ様の派閥寄りです!急いで!」


馬を全速で走らせるが、追手は追撃を止めません。

女騎士は意を決します。


「ギルレイ様。護衛をやめる時、挨拶に行かなくてすみませんでした」


急に女騎士が話すので、聞き逃すところでしたが、ちゃんと耳に入ります。


「イズエラ?」

「挨拶に行ったら・・・きっと・・・涙が止まらないだろうと」

「!」

「では、再び、またあなたを怒らせます!行けっ!!」


そして馬の尻を強かに叩くと、王子の馬は怒りで爆走、みるみるうちに先へ駆け去って行きます。

王子が慌てて彼女の顔を見ると、笑っているのに、涙で目が潤んでいたのです。


「イズエラ!!イズエラ!!・・・・


声も遠ざかり、やがて聞こえなくなりました。

女騎士は振り返り、剣を抜くと追手目掛けて駆けて行きました。




数時間後。

援軍と共に戻った王子が見たのは、追手全てを倒して絶命した女騎士の亡骸でした。



女騎士の葬儀が終わると、王子は姿を消してしまいました。

彼女の愛剣だけを手にし、消えた王子の消息は、誰にも分かりませんでした。



後に・・・

魔族の動きが活発になり、勇者を求める声が高まってきた頃・・

第一王子が勇者だった事を知った国民や、第二王子の派閥以外の貴族は王家に対して不満を爆発させ、内乱へと発展してしまい、捕まった王族は牢獄へ拘束されたそうです。






そして月日は流れ・・・9年が過ぎて。



「聖女姫様、お待ちください」

「ギル、こっちよ」


少女が駆け足で行こうとすると、護衛の男が片腕でひょいと抱き上げます。


「じっとしていてください。陛下がお越しになります」

「お父様が?」


ここは東にある公国。小さいが豊かな国。

以前この国の北にある山脈には、魔王が住む根城がありました。

ですが、6年前に少女の側にいる男が、魔王を倒したのです。


それ以来、彼は賓客として城に住んでいます。

時に魔物が出たら退治をしに出掛け、たまに騎士の剣の稽古もしたり、大抵はお姫様の護衛兼、遊び相手をして過ごしています。

この姫君は、聖女の能力を持って生まれたようです。

ですが、大人になったら力が消えることもあるので、今のところ見習いです。

何故彼程の力がある者が護衛をするのかといえば、やはり小さくても聖女。その力が欲しい者はいるのです。身分が高い姫であっても、誘拐しようとする輩は後を絶ちません。

現に、彼が護衛になって約6年だけで、15回は誘拐されそうになっているのです。


「ギル!」

「はい」

「私の夫にしてあげるわよ」

「え」


彼は一瞬どきりとしたが、すぐに正気に戻ります。彼は27歳、この子は9歳です。


「私は奥様!はい、あなた!起きてください」

「え?」

「ギル、寝てなくちゃ。今起こすところなのよ」


なんだ。ママゴトか。起こすために寝る・・・全く。


彼は文句を噛み殺し、よっこいせと言いながら、ラグに横たわります。

ぐうたら夫を演じなければならない様です。


「あなた、朝ですよ。起きてください」


何が悲しゅうて27歳の男がママゴトをせねばならんのだ・・・


文句を思いつつ、寝た振りを続けます。

寝た振りをしていると、柔らかくて小さな手が彼の頬を撫でます。

撫でられるとくすぐったいけれど、気持ち良いので我慢です。


ふふ。可愛いな、私の()()()()は。・・・今はフェーリュだが。


苦笑しつつ、目の前の少女を愛おしげに見つめた。


「あなたーー」

「はい、今起きますよ」

「違うの!おはよう、可愛い僕の奥さん、でチュ!するの〜」

「え・・・はい・・・おはよう、可愛い奥さん」


そしておでこにキスをした。


「違うーーー!!口ーーー!!くちびるーーーー!!」

「それは・・ほら。お父上に俺怒られちゃうから、な?」


どこからか怖い気配を感じる。

でもまだ『奥さん』がキスキス言うので、抱っこで我慢してもらう事にしました。

後で文句を言われるでしょう、彼は少女を抱き締め、かの女性に思いを馳せます。



可愛いイズエラ。

この子に転生している事は、出会った時に分かった。

私にはステータスを見る能力があるのだ。

今は聖女の可能性が高いというところだ。まだ確定していない。

多分聖女の力は大きくなったら薄れていくだろう。

それよりも、また剣聖の称号が付いている。5歳時点で付くとは。

だが、剣は教えない。

危ない目に合わせたくないからな。

金輪際、あんな彼女の亡骸を見るなんて御免だ。


ママゴト夫婦で思ったんだが、イズエラをもしも娶るとしても・・・

婚姻可能な年齢は、貴族なら5歳でも2歳でも、なんなら赤ん坊でも出来るのがこの世界。

まあ常識的には、大体15歳。

その頃俺は33〜4歳。ちょっとおっさんかな?

ま、男はじじいで結婚しても無問題だからな。

金も持ってるから、持参金にしても良いか。財産といえば・・・俺の国。

俺の母国だが、今は亡国になってしまった。

国力が低下したところで、魔王軍に攻撃を喰らって人が住めない場所になった。

今は世界樹を植えたお陰で、かなり浄化出来た。あと数年で人々が住める状態になる。

今のイズエラ・・フェーリュ姫だが・・

イズエラの前の記憶が戻っても良いが、もう戻らなくても良い。

知らないままで、そのまま幸せに暮らして欲しいとも思う。


「ギルーー」

「はい、聖女姫様」

「お父様がもう直ぐ来るわね。ねえギル」

「はい」

「お父様にお願いしようと思うの」

「なんでしょう」

「ギルのお嫁さんになりたいって」


・・・・・。このおませさんめ。でも9歳は俺の許容範囲外だ。


「・・・どうでしょうねぇ。まだ聖女姫様は、9歳です。15歳になってから聞いてはどうでしょう?」

「今はダメなの?」

「まだ9歳ですので」

「あら。従姉妹のケーレは5歳で伯爵家にお嫁に行ったわ。44歳の旦那様のところに」


・・・・・・。生意気さんめ。

歳の差婚は王族とかはよくある話だが、伯爵家程度で?まあ、借金のカタとかいうやつか?

ああ怖い怖い。貴族怖い。まあ、人の事は言えないよな。王族あるあるだし。


だんだん近付いて来る公爵の馬車をぼんやり見ていたら、お姫様が抱っこをしろとゼスチャーで強請るので、彼は抱きかかえます。


「じゃ、他のお願いにする」

「何を言うんです?」

「剣を教わるのー」

「ダメです」

「ダメ?」

「ダメです」

「昔教えたんだから、今度は()()()()()が教える番だよ」


彼は・・・何も言えず、ただ小さな()()()()を抱き締めました。



馬車が到着した途端、公爵が馬車から瞬時に降りて、彼の腕から娘を引っこ抜いたのでした。

公爵顔が怖いです。


さあ、公爵は彼らの婚姻を赦すでしょうか?



ちなみに剣の稽古は許可されました。もちろん師匠は彼です。



ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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