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壊腕  作者: Oigami
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第四話:親睦

「早速親睦会を始めましょう!」


 テンションが無駄に高い魔衣は一人はしゃいでいた。


「……ところで親睦会ってなんですか?」


 その問いかけに辰希と真紅が同時に椅子からずっこける。真紅が身体を起こして説明する。


「あのですね魔衣さん……親睦会って言うのは、仲良くするためにいろいろゲームをしたり、飲んだり食べたりワイワイやることなんですよ」

「そうなんですか!? じゃあこれから飲んだり食べたりワイワイするんですか?」


 目を輝かせて闘鬼を見る。


「何故俺を見る? 授業中に飲み食いはダメだろう?」


 ため息をついて答える。


「む……確かに……鬼神の言う通りだ……授業中に飲み食いは駄目だぞ………暗部……」


 辰希は、ずっこけた身体を起こして席に座り直す。


「じゃあ自己紹介は……」

「さっきやっただろう?」

「でも詳しく話してないですよ〜。紹介したのは種族と名前だけじゃないですか? これから三年間一緒に組むんですから自分の能力や特長、あと突然頭に血が上った時にどうやって止めてもらうのか〜とか、それから呼び名とかも話しておいたほうがいいんじゃないですか? って……なんですか闘鬼さん!? その不思議そうな目は!」

「いや……お前がまともなことを言ったなと思っただけだ」


 魔衣のまともな発言に闘鬼は初見ではバカっぽかった魔衣の認識を改めることにした。


「じゃあ誰から紹介しましょうか?」

「じゃあ、まず僕から」


 真紅が手を挙げて言った。


「呼ぶ時は下の名前でお願いします。敬語の方は気にしないでください癖なんです。それから戦闘は基本的に逃げ専門なんで戦いは任せます。そのかわりバックアップや情報収集は任せてください。あと、昔一度だけですけど、理性が吹っ飛んで暴走したことがあるそうなんですよ。そうなったらとりあえず頭ぶん殴って止めてください」


 真紅が席に座り直すと、思い出したように制服の内ポケットから携帯端末を取り出した。


「みんな、ちょっと携帯貸してください」


 三人は携帯を取り出して真紅に渡す。それぞれの携帯に端末を繋げた。


「何するんですか〜?」


 魔衣は興味津々な様子で端末を覗き込む。端末の画面には様々な国の文字の羅列が目まぐるしく動いている。魔衣の問いに真紅は画面を見たまま答える。


「これはですね〜みんなの携帯をちょっと改造してるんです。米軍やロシア軍の通信衛星にハッキングして電話の圏外を無しにしたり、通話料や使用料がかからないようにしたり、外国語を全部日本語に翻訳したり、GPSをつけたり、いろいろ盗聴できる機能をつけたりしてるんですよ……と、出来ましたよ」


 携帯を三人に返すと、魔衣が早速携帯を弄り始めた。


「凄いですよこれ〜面白いです! インベーダーゲームが出来ますよ! でもこのインベーダーでっかいくせになかなか攻撃が当たりませんね〜えい! えい! 落ちろカトンボ!」


 魔衣は携帯の画面を見ながらボタンを連打している。それを見た真紅は顔色が真っ青になって魔衣から携帯を取り上げた。


「あ〜真紅君! 何するんですか〜? あとちょっとで倒せるところだったのに〜」


 そう言って、膨れっ面で真紅を見る。


「……真紅、コイツの携帯にどんな機能があったんだ?」


 闘鬼は呆れ顔で問う。


「そ、そんな事より次は誰が紹介するんですか?」


 さりげなく真紅は慌てた様子ではぐらかした。(言えない……絶対に言えない! まさか魔衣さんの携帯に…間違って○○に○○をミサイル攻撃させる命令を送っていたなんて絶対に言えない!)


「む……次は俺が……」


 辰希が手を挙げてから続ける。


「俺は……自己紹介では翼龍種と言ったが……本当は翼龍種と甲殻種のハーフだ……一応祖父に……CQCの訓練を受けたことがあるから……それなりに戦えると思う……とりあえず暴走した時は顎を打ってくれ……小隊戦では俺を盾に使ってくれて構わない……」

「盾……か、甲殻の強度はどのくらいだ?」


 闘鬼の問いに辰希はゆっくりとした口調で答える。


「五年前……祖父が所有している90式戦車の砲撃を受けたが……打撲程度の怪我ですんだ……」

「じ、実弾ですか?」


 真紅の問いに辰希は黙って頷く。


「お前とはうまくやって行けそうだ。よろしく頼む。なんと呼ぶべきだ?」


 闘鬼は珍しく笑みを見せて問う。


「好きなように呼ぶといい……」

「じゃあ辰希君と呼びましょう! よろしくお願いします辰希君!」

「辰希、よろしく頼む」

「よろしくお願いします辰希さん!」

「む……みんな……よろしく頼む……」

「では次は私の自己紹介をしましょう!」


 魔衣は両手を挙げてはしゃぐ。


「いいから始めろ」

「あ! なんか闘鬼さん! 辰希君の時と扱いが違いますよ〜! 酷いです〜」


 膨れ面で闘鬼を見ながら自己紹介を始める。


「じゃあ始めますよ〜。呼ぶ時は真紅君や辰希君と同じように下の名前で呼んでください。戦闘は、暗部の本家でちっちゃい時からストーキングや暗殺を専門にやってきましたから、隠密戦闘、近接戦闘が得意です〜。そうそう辰希君みたいにCQCも使えますよ〜! 集団戦では敵の指令を暗殺して指揮系統を混乱させたりしてきました。それと許可無しに暗殺できるようにライセンスも持ってますよ〜ほらこれです〜」


 学ランの胸ポケットからカードを取り出した。カードには魔衣の名前と「殺人許可証」と書かれている。


「ほう……」

「あ! 闘鬼さん見直してくれました!?」


 魔衣は笑顔で闘鬼の顔を覗き込む。


「それで……お前を黙らせるにはどうするんだ?」


 闘鬼は不機嫌そうに答える。


「酷いですよ〜。本性出した時には角が二本生えてるんで……とりあえず一本折ってください。そうしたら気絶するんで、角は一日経ったら元に戻りますから、一気にへし折ってください」

「角って……ベタですね」

「む……ベタだな……」


 真紅と辰希は頷きながら魔衣を見る。


「ベタってなんですか〜ベタって!! じゃあ次! 闘鬼さん!」


 少し怒ったように魔衣がうながす。

 闘鬼はため息をついてから始める。


「呼ぶ時は下の名前で呼べ、それから呼び捨てにしろ。戦闘ではクソ親父から、常に切り込む役をさせられたから、その辺りは任せろ。それからもし俺が暴走したら……全力で逃げろ。はっきり言うとお前達の実力で、俺を抑えるのは無理だ。今のところ俺を抑えることが出来たのは……クソ親父と兄さんの二人だけ」


 闘鬼の答えに三人は不満を漏らさず、あっさりと頷く。


「確かにそうですね。今いろんな所から闘鬼さんのデータ引っ張り出したところ……僕達三人よりも実戦経験豊富で、主に中東で活動、闘鬼さんのお父さんの……鬼神・神鬼(オニガミ・ジンキ)さん、お兄さんの鬼神・戦鬼さんの三人で戦場に行ってますね」


 などと言って真紅は何処からか取り出したノートPCの画面を三人に向けた。画面には闘鬼、神鬼、戦鬼の三人がアップで写っている。


「凄いです〜闘鬼さん! 闘鬼さんも私と同じライセンス持ってますよ!」


 魔衣は嬉しそうに闘鬼を見る。


「む……凄いな……鬼神グループというのは……表向きは大手防犯警備会社……」

「裏では様々な国へ必要な人材を派遣する…ですか。卒業したらここに就職しようかな」


 三人はPCと闘鬼を見ながら感心していた。


「これで一人一人の紹介は終わったぞ…次は何をするんだ?」

「じゃあ運動しましょう!」


 魔衣が言い終わった瞬間、チャイムが鳴り響いた。






 三時間目。

 闘鬼達4人は学校に4つある体育館の内の一つ、柔道場にいた。


「凄いですよね〜、この学校! 体育館が四つ、競技場が二つ、ドームが一つなんて、何処からお金が来てるんだろ〜」

「7割は国から出てるみたいですね。あとの3割は生徒の実習で稼いでいるらしいです」


 言いながら魔衣は体育館の中を走り回っていた。


「じゃあ早速始めましょう! 柔道!」


 いつの間にか魔衣は柔道着に着替えていた。


「いつ着替えたんだ……あいつは?」


 闘鬼は不思議に思いながら更衣室に向かう。

 更衣室のロッカーに開けると、柔道着と帯が入っていた。帯は黒く、闘鬼の名前が入っている。

「どこで調べたんだ? 俺が黒帯だってことを」

「む……サイズもあっているな……」

「ここの情報網は一国に匹敵しますから、考えないほうがいいですよ」


 真紅は苦笑しながら胴着の白帯を絞める。






 体育館に戻ると魔衣は一人、サンドバックに技を掛けていた。


「背負い投げ! 大外! 内股!」


 サンドバックが宙を舞う。


 (む…!)

 (やるな)

「あ! 皆さん遅いですよ〜待ちくたびれて10年間鍛えた技をサンドバックに披露しちゃてましたよ〜」


 笑いながら魔衣は身体を起こす。その腰には黒帯が巻かれている。


「さ! 始めましょう!」


 魔衣は笑顔で三人を見る。


「じゃあ僕から行きますね」


 真紅が手を挙げて魔衣の目の前に立つ。


「真紅、辞めておいたほうがいいぞ?」


 闘鬼の言葉に真紅は笑って答える。


「大丈夫ですよ。どうせ遊びなんですから、そうですよね魔衣さん?」


 真紅が魔衣を見ると、魔衣の目が獣のように鋭くなっていた。


「フシュールルル………」

「あの……魔衣さん?」


 瞬間、魔衣が真紅の視界から消えた。


「え?」


 同時に世界が逆転する。


「あれ……!?」


 真紅の身体が地面に倒れ、そのまま視界が真っ暗になった。


「む……真紅! 大丈夫か!?」


 辰希が駆け寄ると真紅は白目を向いて気絶していた。


「辰希! 離れろ!」


 辰希が振り向いた瞬間、胴着の帯と襟が取られ、身体が宙に浮く。


「む!? 背負いか!」


 受け身を取ってダメージを軽減する。瞬間、魔衣の踵落としが来た。

「く!」


 転がって踵落としを避け、体制を立て直す。


「フシュー……」


 魔衣が動き、一瞬で辰希の背後に回る。

 (……ぬかった!)

 膝関節の裏を蹴られ、辰希の身体が畳に膝をついた。そして魔衣の腕が交差するように襟を掴む。

 (まずい……!?)

 そのまま魔衣は腕に力を込め、絞める。


「ぐッ……! がッ……」


 魔衣が襟から手を離すと辰希の身体が力無く倒れる。


「フシュー……」


 魔衣の目が闘鬼を捕らえた。闘鬼はため息をついて魔衣を見る。

 クソ、何故暴走する? 本性を出していないだろうが! まさか……あれか? 胴着を着ると人格が変わるのか? 胴着を着て技をかけると自己暗示がかかるとは……本当に……


「本当に……お前は……」


 魔衣が消え、一瞬で闘鬼の目の前に現れる。


「フシャー!」


 闘鬼の襟と帯を掴み、後ろに倒れるように投げる。巴投げ、闘鬼の身体が宙を舞う。


「面倒な奴だ!」


 身体を捻って空中で体制を立て直し、着地。魔衣が畳を蹴って加速する。再び闘鬼の襟と帯を掴み、背負い、投げる、だが闘鬼の身体は浮かない。


「!?」

「角は生えてないか……それなら」


 背後から魔衣の襟を絞める。


「ッ!?」


 魔衣がもがくが、闘鬼は力を込めてさらに絞める。


「安心しろ。絞め落とすだけだ」


 魔衣の身体から力が抜け、腕が力無く落ちる。


「面倒な奴と組まされたな……」


 ため息をついてから倒れた三人を担ぎ、保健室へ向かった。

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