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二層攻略

ウィリアムとユースケ率いる一行は迷宮の第二層の内部にいた。内部は暗く、砂埃が辺りに舞っている。


「気をつけろ、陽の光とは縁のない空間だからな。灯りを用意しておけ」


「はいはい、と。灯火トーチを起動させておくよ」


するとユースケの手から炎が現れ、周囲が明るくなった。周囲の元素を自身の魔力で変換し、炎の光源を生成する。これが灯火トーチ魔法である。


「他の冒険者はどうなっている?」


「現状第一層を通って後続してると思う。多分もうじき来る。んで、この階層の構造を教えてくれない?マッピングはしてあるんでしょ?」


「わかった、俺も説明しよう」


迷宮第二層区画――命名するならば、《杭の間》。床天井壁、そのどこからも侵入者を刺し穿つ杭が飛び出してくる危険な区画。一層から少し進んだだけでかなりの難易度を誇る。潜伏しているモンスターは現状確認不可。存在していたとしてもその場合杭で穿たれ死骸が残っているはずなので、恐らくは居ないものと考えられる。


「突っ走って杭で死ぬ冒険者が多くなるのが目に見えそうだ」


「余計なこと言わないでよ。そんなこと言って死人がでたらどうすんだよ」


「俺の責任じゃない。そいつら自身の問題だ――む?」


突然彼らの後ろから足音がした。ウィリアムが視認すると、一層から続けてやってきた攻略班の冒険者達だ。するとその中から一人の男が出てきた。


「こいつが…二層とやらですかぁ」


やたらと能天気なしゃべり方をする男である。


「ほう?確かあんた…攻略班最前線冒険者の一人だったな。最前線作戦会議で目にしたぞ。確か…」


「おれの名前は"イレブン"。ご存知の通り、最前線冒険者の一人って感じ。最もこちとら、こういった探索より戦闘の方が楽しいんだがね、ウィリアムさんよぉ」


「下手に無益な戦闘を起こされても困る。他のモンスターを刺激しかねないこともあるからな」


「無益な戦闘なんてあるものかい。おれは邪魔者を潰すだけだ」


「やれやれ、最前線のやつらは一癖強い奴らが多いな。俺も人のことは言えないが」


そこでユースケが話題を変えた。


「あー…みんな?僕からの大事な大事なお知らせ、というか警告なんだけど。このフロアは杭を用いたトラップが多い。気をつけないとドスッと刺されて死んじゃうよ」


一人の冒険者が口を挟む。


「そいつで死者とかでたんですかい?」


「今のところはまだといったところかな。ただ少し気を緩めて軽率な行為をされると肉片になられるだけだから、そいつはごめんだね」


また別の冒険者が口を挟む。


「"ゼーヴァ"の存在は確認できてるのー?あいつらって"無"から生成されることもあるじゃーん?」


「ゼーヴァ特有の残滓シストが未だ検知されていない分、奥のエリアで出現する可能性はある。いつ出て来てもおかしくない、ということを常に心がけて」


「はいはいはーい!じゃあ残滓シストが見つかったらどうすればいいのー?もしあいつらの細胞に"感染"したらヴェーブルで治療はできるのー?」


「心配無用だよ、対ゼーヴァ細胞ワクチンは研究班が開発済みだ。攻略中でも使えるように今後配布されるはず」


その他色々な冒険者達の質問にユースケが翻弄されるなか、ウィリアムとイレブンは二人で語り合っていた。


「んで、あんたはどこまでついてくる気だ」


「どこまでも何も、最前線冒険者だから第三層区画までの到達、と言ったところかな。そこまで他の連中をナビゲートするのがおれの役目って訳で――面倒だがね。お前にはユースケとその仲間と一緒にマッピングをお願いするさね」


「最前線冒険者最前線冒険者と、あんたはそこまでこだわりが強い様だな。んでマッピングは人任せってか、まぁこういった類いの仕事は好きなんでね。喜んで引き受けさせて戴くさ」


「こっちは全員の安全を優先しなければいけない、という命を背負った仕事をしてるんだ。あまりなめられちゃ困るね」


「あー…わかった。面倒くせえ、この話は終わりだ。攻略を再開するぞ――ユースケ、行くぞ」


「わぁごめん!今、絶賛質問受付タイムなんだよ!」


そこにユースケのクランメンバーが割って入る。


「ウィリアムさんすいません。うちのリーダーが世話焼きなもので」


「構わないさ。そこがあいつのいい所だっていうのは昔から知ってるからな」




それから約十六時間後――


「第二層区画、攻略進度はどの程度?」


「ざっと六〇パーセントといったところだろうな。ここもそこまで広くないはずだ。この調子なら、明日の夕暮れまでには踏破できるかもしれない」


「その直感、頼りにしてるよ」


道中、モンスターなどが出現することはなく、心配されていたゼーヴァの存在も確認されなかった。もちろん残滓シストも検出されなかった。


ただ残念な話、少し調子に乗りすぎた冒険者がちらほらいた。その為か事前に忠告されていたはずの杭に穿たれ、内臓の一部が崩壊したり肉を抉り潰された冒険者が僅かながらにも存在してしまっていた。


「あの馬鹿共…ユースケの忠告をなんだと思っているんだ?」


「聞く耳を持たず好奇心のまま行動した結果って感じなんだろうね。僕はどうでもいいけど」


「そうか。ならば後は俺らが三層への道を探すだけだ。急ぐぞ」




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