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インフルエンザで遅れてしまいました。

そのため少し雑になってしまいましたが、ご了承下さいm(_ _)m

 



 俺の知っている異世界では、王道的な勇者やドラゴンがいたりする。

 時に悪役、時に主人公。

 双方、ゲームやアニメなどで大活躍する存在であり、いわば伝説的な存在と言っても過言では無いのだが――

 今、草むらで寝ている13歳のドラゴンと、草むらで寝ていた13歳の勇者が……伝説的な存在が目の前にいます。


 この世界……大丈夫なのだろうか。



「それで? どうして行方をくらましたりしたんだ? 勇者がいなくなったって新聞が出る程なんだから、相当騒がれてんじゃないのか」


「世間が大袈裟。別に私がいなくたって大丈夫よ、勇者は他に3人もいるもの。それと行方をくらましたのは……まぁ色々ね。私が街に行くと騒がれるから、買い物とかこの子にお世話になってるのよ」


 少し風が強くなってきた頃、体育座りしながら、ため息まじりに勇者は言った。

 その表情は寂しそうでかつ、少しだけ微笑んでいる勇者の姿。

 いや、ごく普通の13歳の女の子なのかもしれない。


 色々とは何か気にはなったが、これ以上の詮索はやめておいた方がいいだろう。

 俺はこの雰囲気がどうも性に合わないため、別の話題へと移行する事にした。


「あのさ勇者ってんだから、やっぱり強かったりするんだろ? 2人が起きない程度に魔法見してくれないか? よっ勇者様、さぞカッコいい事だろう!」


「え、そうかしら、ふふふ……いや、そうに決まっているわ! いいわ、見せてあげる! ……まぁでも、その前に私の質問にも答えてちょうだい」


 ちょろいな。


 やはりこの子はドラゴンと似ていると思った。単純な所がそっくりだ。

 笑顔が回復した勇者は、先程よりも元気な気がするが、俺が了解をすると勇者はドラゴンを見ながらこんな事を言ってきた。


「私の使い魔は決して弱くはないわ、ううん、むしろ強い方よ……でもあっさり負けた。一体ツノが生えてるあの子は何者なの?」


「え、あいつ? ……あいつは一応俺の使い魔だけど、まぁ強さだけなら折り紙つきだろうな、強さだけなら」


 俺は草をむしりながら、重要な事を繰り返して勇者の質問に答えた。

 今更だがドラゴンってやっぱ相当強いんだよな。

 そういえば、ギルドのお姉さんが冒険者の力の源は、使い魔から受け取る魔力と言っていたが……そうか! ドラゴンは強いから、俺もその分強くなれるのか!


 いや待てよ……あいつが素直に俺に魔力をくれるのか?

 答えは――NOだな。

 仕方がない、ドラゴンが起きたら少し優しくしてやろう。

 やむを得ない決断だが、せっかく異世界来たのだ、是非とも魔法は使ってみたい。


「この子はゴールドの魔法陣から召喚されたんだけど……ねぇあなたの使い魔って事はまさか……あのレジェンドなの? レジェンドなのよね? 何でレジェンドなの! 何してくれてんの、勇者の面子が廃るじゃない!」


「最初のリアクションは構わんが、後からのリアクションが気に入らないんだが!? 行方不明の勇者に面子もクソもあるかっ……ロリ勇者」


「な、何ですって! そのアホ毛を切り落とされたいの!?」


「どいつもこいつもどうして、俺のチャームポイントを消そうとすんだよ! お前らグルか? グルなのか?」


 確信した、こいつ女版ドラゴンだ。

 髪の色も年齢も同じだし、何より喧嘩っ早くて気が短い。

 異世界にはこんなやつしかいないのだろうか、後のことが心配になってくる。

 だが、この2人を会話させたら面白いかもしれない、明日くらいにでも検証してみるとするか。

 そんな事を企んでいると、勇者は反撃とばかりに、


「はぁ〜レジェンドの使い魔があんな子供だなんて……しかも、その召喚者がこんな……! もうダメかも。ごめんねお父さん、お母さん」


「おいお前、本当いい加減にしとけよ? そろそろ歳上の恐ろしさを教えてやる! あとショタゴンをあんな子供呼ばわりしてるが、お前と同じ13だ!」


「え!?」


 同い年をあんな子供呼ばわりし、ブーメラン発言をしてしまった勇者。

 全くざまぁみろってんだ。

 4つ年下に大人気ないとか何とか言ってみろ。そしたら4つ年上に尊敬がないって、絶対言い返してやるからな。


「あんな子供……? 私、あんな子供……そうか、そうだったんだ、あはは」


 余程ショックだったのか何かブツブツ言っているが、ここまでのダメージになるとは思わぬ収穫だったな。

 いやしかし、これはちょっと気が引けてくるな……うん、今後少しは控えておいてあげよう。

 さてと、ドラゴンは熟睡してるし、勇者の使い魔も寝てるし、勇者はアレだし……俺も明日に備えて寝ることにしよう。


「じゃあ勇者、そんなコンプレックスに考えるなよ。とある偉い人が言ったんだぞ、貧しい人は美しいってな。お前もその内出るとこ出るから大丈夫だよ、多分。んじゃ俺寝るから、おやすみー」


 適当に言い放った俺は草むらにダイブした。

 結局痛いし、居心地の良いとはとても言えなかったが、異世界初日なら仕方ない事であろう。

 俺は横になって勇者を見るなり、


「貧しい人は、美しい……か」


 月を見て言った勇者の言葉が、子守唄だったかの様に、瞼をゆっくりと閉ざせた。



 次の日、うっとしいはずだった太陽の光が、異様に心地よく感じた朝。


「いてて、首と肩と腰が……こりゃ早く宿をとらないと大変なことに……お、通りで静かなわけだ。ドラゴンと勇者はまだ寝てるのか。あれ? でも勇者の使い魔がいないな」


 そういえば結局昨夜は、勇者に魔法見せてもらえなかった。

 話を変えるためとはいえ、本当に魔法は見たかったんだけどな。


「それにしても2人とも気持ちよさそうに寝やがって……当たり前だけど学校ないんだし、俺も2度寝でもしようかね」


「うが、肉……いっぱい、がははー、我のもの……」


「私? ぐふふ、仕方ないわねー、そう、私こそ、真の勇者……」


「こいつら夢の中まで欲が凄いな」


「うふふ、似た者同士ですね」


「そうですね、俺もさっき思いました……って勇者の使い魔さん!? 帰ってきたんですか」


 勇者の使い魔は依然フードを被ったまま俺の隣に現れた。

 今、少しだけ顔が見えたが、勇者並みの美人だと伺える。

 ゴールドクラスの使い魔なのだから、この人も相当強いに違いないが、ドラゴンに昨日泣かせてしまった事を俺は思い出した。


「あの、昨夜はうちのバカがすいませんでした! 怪我とかありませんでしたよね?」


「あ、謝らないで下さい! 全て最初に仕掛けた私が悪いんです。ドラゴン様は確かに怖かったですが、全然、怪我とかもなくて……本当すみません」


 俺は感動した。

 良かった、異世界にもこんな優しい心の持ち主がいたんだ!

 放置されたり、エルフに会えなかったりしたが、この人こそ、俺の出会いたかった人材だ!

 俺が歓喜に満ちていると、学ランの裾を急に掴まれた。

 見るとそこには眠そうなドラゴンの姿。


「おい貴様、エルフと何しておるのだ?」


「お、起きたかドラゴン。いや今ちょっとお話を――おいドラゴン、今なんつった?」


「何しておるのかと聞いたのだ」


「いや、その前」


「エルフと何しておるのか聞いたのだ」


「は?」


「あ、おはようございますドラゴン様。あの、昨夜は本当すみませんでした」


「構わぬ、我もちと楽しめたのでな」


 は? え、ちょっと待てよ、エルフって言った? 今エルフって言ったよね。まさか……勇者の使い魔って……


「おい起きろ勇者」


「むぅ、何よせっかくいい夢みてたのに……」


「お前の使い魔ってさ、エルフなの?」


「何よ急に、というか知らなかったの? とっくに気づいてると思っていたわ」


「おい」


 マジかよ……


 どうやら俺は、異世界だとこういう事になってしまうらしい。



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