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遅れました、申し訳。次回以降から恐らく投稿が早くなります。

応援よろしくお願いします。


 



「――着きました、ここが図書館の入り口です」


 ナヴィさんの声が聞こえると共に、ジェットコースターの浮いてるような感覚から解放される。

 ゆっくり目を見開くと、そこに広がっていたのはまたしても森の中だった。


 ……? 本当にテレポートで図書館の入り口まで来たのだろうか。なんか周りもあまり変わっていないような気がするし、図書館の入り口らしき物もどこにもないような――

 しかし、あることに気付いた俺は僅かに抱いた疑いを一瞬で晴らすことになる。


「おいおいおいまじかよ……なんじゃこりゃ」


「ほう、やはりエルフの持つ魔法は興味深い。テレポートとやらは実に便利だな。我も覚えたいものだ」


「私テレポート苦手なのよね。なんだか酔っちゃうのよ……うわぁ、なんか嫌なこと思い出したわ」


「では皆さん。図書館に入る前にお願いしたいのですが、ここは王都に近い森なので他の冒険者も恐らくクエストに来ていると思います。ですので、あまり目立った行動は控えてくれると助かります。しかし前にも言いましたが『図書館』は世界三大ダンジョンと言われるほど巨大なダンジョンですので、滅多に他の方とは遭遇しないと思うのですが、何より皆さんがはぐれないように気をつけて下さいね」


「そうね! とにかく大量のお金を手に入れて逃亡資金をがっぽがっぽ稼いでやるわ!」


「うむ、待ちわびたぞ! ようやく肉がたらふく食えるのだな! 先に言っておくが誰にも肉はやらんからな」


 早速迷子になりそうな二人をよそに、俺は図書館の入り口を眺めながら言葉をこぼした。


「13歳のドラゴンと勇者の存在でもう気付いてはいたけどやっぱ常識通じねぇなぁ。地面にこんな馬鹿でかい扉があるなんて聞いてないぞ……図書館って地下にあるってことかよ」


 テレポートした俺たちが立っていたのは巨大な木製の扉だった。

 大きすぎて扉だと気付かなかったが、大きい以前に普通地面に扉があるなんて誰も思わないだろう。

 巨大扉をよく見てみると、周りの木々もその扉から根を生やしているようだった。


「ねぇナヴィ、これどうやって扉開けるの? いつまでもここにいると他の人来ちゃいそうだから早く中に入りたいんだけど。というかテレポートで直接図書館の中に入ればよかったじゃないの」


 確かにそれもそうだ。入り口前に来るくらいならいっそ中にテレポートすれば良かったってのはある。


「私もそうしたいのですが、図書館に直接テレポートしようとすると弾かれちゃうんですよ。それと勇者様の言うことが最もですね。早く扉を開けましょうか。この扉は少し特殊で、少しだけドラゴン様の力を貸していただきます」


「ほう……貴様、この我を使うか」


 いちいち言い方が悪いドラゴンに、ナヴィさんはびくびくしながらも説明した。


「じ、実は、この図書館の扉はそこの台座に膨大な魔力を注がないと開かない仕組みになっていまして……テレポートが弾かれるのもそういった理由です。図書館はこの扉だけ王都のギルドが管理しているんですよ。理由としましては図書館はやろうと思えば恐らく何でも手に入ってしまうから、そしてそれゆえ危険が多く、最果てまで行った者は過去1人としていないからです。なので本来なら大勢で挑戦するのですが……」


 ナヴィさんが指差す方向には、確かに台座らしきものがポツンと殺風景においてあった。

 てか、扉の大きさの割には台座はかなり小さいけど因果関係一体どうなってんだよ。

 しかしなるほど、それなりの力を持ってないと危ないってことでこの扉はそういう仕組みなわけか。いわば力試しのようなものであろう。

 まぁしかし、この前ナヴィさんは図書館の難易度が中の上くらいだと言ってはいたが、一番奥まで行った人がいないというなら、実はもっと危険なのでは? と普通は考えるだろう。


 が、正直未だ図書館が危険というのにいまいちピンと来ていない。

 てか本当に何でも手に入るんだよな?



「そういうことか……これに我の力を宿せば良いのだな」


 俺が悶々と考えている間にドラゴンが台座に手をかざす。続いてナヴィさん。続いて――


「って、お前は手伝わないのかよ」


「んー? どうせあの2人の魔力でこんな扉なんてすぐ開くわよ。私は力を蓄える役ってことで」


「お前ただ面倒なだけだろ」


 ティナがふいっと顔を背けると、地面、というよりは扉が地響きと共に動き出した。


「構わん、我の力だけで十分だ。勇者の魔力など必要ない。ましてやエルフ、貴様もだ」


 ドラゴンの台詞ってなんだか中二病っぽく聞こえてくるのだが、実際に実現出来そうなのがどうも悔しい。俺もやってみたい。それとは別に、ナヴィさんが付いてるとはいえ、やはり危険そうだから魔法の一つや二つ、使えるようになっておきたいのだが。


 割とマジでドラゴンから魔力をどうやって貰おうかと作戦を考えていると巨大扉が開き始めた。


 横開きなんだな、とかしょうもない事を思っていると、扉はメキメキという悲鳴をあげながら、赤く染まるドラゴンの魔力と緑に染まるナヴィさんの魔力に包まれ、抵抗も虚しくあっという間に全開になり、巨大扉は大きな穴となって出現した。


「図書館の入り口が開きましたね! ドラゴン様、ご協力ありがとうございます」


「うむ構わん。そんなことより早く行くとするぞ……! 我は空腹に耐えきれん! バカ主人のせいで食えんかった肉をついに食えるのだ! ふはははははは!」


「よっしゃあ、やってやるぜ! この制服ともおさらばだ。やっぱ武器とか防具とか欲しいよな! それとバカゴンを大人しくするやつとかもあるといいよな!」


「あなた達ほんと頭が回らないわね! そんなの全部お金があれば買えるのよ! お金探しなさい!お金!」


「いいや、我は今すぐ食いたいのだ! 金なんか稼いだところで食うまでに時間がかかる。それに、このアホ毛がまた違うの買ってくるかもしれん! このバカは信用ならんからな」


「ふっ、分かってないなティナ。そういうのは自分の力でその場で手に入れるからこそ、冒険感あっていいんじゃないか! 勇者が金とか夢のないこと言うんじゃありません。それとドラゴン、その弄りはもうやめろよー、この馬鹿野郎めー!」


「ふははは! や、やめろ! く、くすぐったいではないか!」


「このこのー!」


 図書館を前にテンションマックスで騒ぐ俺達。

 内心、このノリと勢いでドラゴンに魔力を貰えるのではとちょっとだけ企んでいたが、特に何もなく終わってしまった。無念なり。


「では皆さん、互いの目標のためにも頑張りましょうね。詳しいことは中に入って順を追って説明しますので」


「そうねナヴィ。なんなら気合い入れのためにそれぞれの目標を言ってから中に入りましょう!」


「お、それいいな。じゃあ俺別に怖くないけど最後に行くから。お前ら先陣切ってくれ。別に怖くないから」



「肉」


「お金」


「無事に帰ってくることですかね!」


 俺の言葉を綺麗にスルーし、迷いなくドラゴン→ティナ→ナヴィさんの順番でそれぞれ大きな穴へと入っていった。


「…………はぁ」


 あいつら、ほんっと怖いもの知らずかよ。

 それにしても、ドラゴンとティナはナヴィさんを見習って欲しいものだ。どうせあのガキ共は互いの目標なんて考えてないんだろう。

 ……まぁでもいいか、互いの個性のぶつかり合いで中和してる、あいつららしいといえばあいつららしい。

 さて俺の目標はどうしたものか。

 文句を言いながらも、実際俺も魔力が欲しいし武器欲しいし装備も欲しいし、冒険が欲しいし、金欲しいし、彼女が欲しい。

 意外と沢山あって若干自分にも呆れるが、まぁ、まずは、まずはこれで行こうと思う。


 俺は巨大な扉の穴に向かって――


「安全第一!」


 吸い込まれるように図書館の入り口へと飛び込んでいった。


 ◇


「――痛い……図書館がこんな深いとこにあるなんて聞いてない……痛い」


「こ、これは、完全に右足が折れてますね……今から治療しますが、しばらく走ったり無理したりは出来ませんので気を付けて下さい。すみませんシュウさん、私がフォローすると言ったはずなのに……」


「貴様もしや遅延のプロなのか? 我は聞き逃さなかったぞ……何が安全第一だ! 一瞬で目標失敗ではないか!」


「ほんと貧弱モヤシね! この程度の深さで足を折るなんて全く情けないわ。あなた本当にレジェンド召喚者なのか疑っちゃうわよいい加減!」


 異世界の図書館に光景を前にして初めての感想はただただ痛いだけだった。




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