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専門家

作者:緒形誠志
 近頃どうも具合が悪い。
 食欲もないし、鬱々と悩んでばかりいる。
(心の病気かな)
 おれはそう思った。
 パソコンで〈心の悩み承ります〉と書いてあるサイトを見つけ、さっそくおれは内容をメモし、出向いた。やはり餅は餅屋、専門家に相談するのが一番いいだろう。
 駅裏の、小さな雑居ビルの一室。ドアのプレートには〈心の悩み・専門家〉と記してあった。
 チャイムを押すと、なかから中年の男が現れた。私を部屋に招じ入れ、茶を出してくれた。
「さっそくですが、どういったご相談で」
 男は訊いてきた。
「ええ。まず、食欲がありません。鬱々と気分が滅入ります。部屋の鍵を閉めたかどうか気になって、なんどもなんども確認してしまいます。あと、なんだか嫌な緊張感がずっと続いています」
「なるほど。なるほど」男は得心したようにうなずいた。「さぞつらいでしょうな。だが、安心してください。必ずよくなりますよ」
 男は立ち上がり、書棚のなかからぶ厚いクリアファイルを数冊持ってくると、ぱらぱらと繰り始めた。
「ええと。ええと。まず食欲の減退と。うん。江原さんがいいかな。あの人は栄養士で、その分野に詳しい。それと、鬱気分。西城さんがいいだろう。早起き療法でみんなを元気にしている。あの人なら安心だ。確認癖は、強迫行為専門の松山さん。厳しいが、指導の腕には定評がある。なに、強迫にはちょっとスパルタの方がいいんだ。嫌な緊張感はと。遠間さんがいいかな。気分障害の人をよく診ている」
 ぶつぶつそんなことを言いながらファイルを繰り、なかから四枚の紙を取り出して、テーブルの上に置いた。
「それではこの四方のところを訪ねなさい。必ずよくなりますから。私が保証します。では、今日のところはもう帰っていいですよ」間髪を入れず請求してきた。「今日の相談料は、五万円です」
「ちょ、ちょっとちょっと」おれはあわてた。「あなたが全部引き受けてくれるのではないのですか。紹介するだけなんて。全部ここで治してくれるのではないのですか。それに、五万円とは。あなた、心の病の専門家なんでしょう、専門家」
「いかにも」
 まじめくさった顔つきで男は言った。
「私は専門家です。心の病の専門家を紹介する、専門家」

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