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長くなるやつ

 ついに第一試合が始まった。

(……先生にもあぁ言われたことだし、あまり長く続けてたって別にいいことなんてないし。出来るだけ早く終わらせてみようっと)

 なんて考えたユウシアが陣取るのは、闘技場のど真ん中。

 そして、ユウシアの予想通り、最初に潰しておこうとでも考えたのか彼の方に向かってくる大多数の相手を見て、小さく笑うユウシア。

『おぉっとぉ! 全員、ユウシア狙いのようだ! これはユウシア、いきなりのピンチかぁ!?』

 なんてエルナは言っているが、

(そう来てくれるとありがたい……!)

 ユウシアの、“早く終わらせる”ための作戦的に。

 ユウシアは、自分の周りに予めばら撒いておいたナイフの能力を起動する。

 使用するのは、風。今回のバトルロワイヤルでは場外負けのルールが適用されている(本戦では存在しない)ので、それを狙えば早く終わらせられるのでは、と考えたのだ。というか、そもそもこのルール自体、学校側が早く終わらせるために付けたものだったりする。

 さて、一つ一つではあまり強力な魔法は使えないこのナイフ達だが、数が多ければそこそこの威力を発揮する。

「おぉわぁっ!?」

 まず、一番前に出て来ていた男子生徒が吹き飛ぶ。

「ちょっ、うおっ!」

 それにぶつかって、後ろの男子生徒も飛ばされる。

「きゃっ! ――ちょっ、どこ触ってんのよ!」

 更にそれにぶつかって、その後ろの女子生徒も飛ばされる。何かハプニングがあったようだが。

(あ、ごめんなさい!)

 一応心の中で謝っておく。

「おっ、この感触は――うぼっ!?」

 二番目の男子生徒が女子生徒に思い切りぶん殴られている。不安定な体勢の中だというのに、とてもいい右ストレートだった。もしかすると彼女はプロのボクサーなのかもしれない。ボクシングなどこの世界にはないが。

(それは自業自得だ!)

 男子生徒には、謝らない。

『これはすごい! 近接職であるはずのユウシアが発動した魔法? で、出場者の半分近くが脱落してしまった! ……あ、ちなみに、別に魔法の使用は禁じられていません! 推奨も、あまりされてません! ――え? 魔法じゃない? なら全然いいんじゃないでしょうか!』

 半分近くが脱落。予想以上の成果に、ユウシアは思わずほくそ笑む。

 だがしかし、それはまだ半分は残っているということ。

 なんとか残った彼らは、一瞬怯んだものの、再びユウシアに襲いかかってくる。制限というかなんというか、ナイフの能力にはクールタイムのようなものが存在するので、すぐには使えない。

 だが、

(隙を生じぬ二段構え――なんちゃって)

 ユウシアは既に、呼び出した〔殲滅ノ大剣〕を構えていた。もちろんひっくり返して逆刃にしてある。

「吹き飛……べっ!」

 かけ声と共に一閃。

 大体脱落した。詳細は割愛する。エルナが騒がしかったとだけ言っておこう。

 それでも耐えた根性があるかチキンハートかどちらかの出場者達も、一人一人場外に投げ飛ばす。華麗な背負い投げの連続だった。これまたエルナが騒がしかった。

 そして、ついに残りは三人。

 ユウシア、ゴードン、そして隅っこで待機していたラインリッヒだ。

「よぉぉおし……ユウシアァ! やるぞォォア!!」

「じゃ、遠慮なく」

「へ?」

 気合を入れるゴードンの懐に、いつの間にか潜り込んでいたユウシア。右の拳はしっかりと握られ、踏み込みもバッチリだ。

「今だから言わせてもらいますけど! いちいち声が大きいんですよっ!!」

「ごふぉぉおっ!!」

 先程の女子生徒をも超える右ストレートが炸裂し、ゴードンは星になった。

「……ふぅっ」

 スッキリした、とでも言いたげな清々しい表情で息を吐くユウシア。

『えぇと……あまりにもあっけない退場で、私、どう実況したらいいのか分かりません! とりあえず誰か、ゴードン君を探しに行ってあげて!』

 悲しいかな、誰も動かなかった。担任どころかクラスメイトも。というか皆、よく言った、みたいな表情でユウシアを見ている。どうやらうるさかったのは普段かららしい。

「さて、これで終わり……じゃ、なかったか」

 まだラインリッヒがいる。すっかり忘れていた。

 ラインリッヒはユウシアにゆっくり近付くと、ちょっと悪そうに笑いながら口を開く。

「く、くくく……一対一で戦えるこの時を、どれ程待ち望んでいたことか……!」

「……くっ」

 ユウシアは小さく呻く。

(これあれだ、長いやつだ! そんな雰囲気出てる!)

 時間がかかりそうだから。

「そうだ、いつも貴様は私を避ける……!」

「いや、別に避けてるつもりはな」

「授業のときも! ペアを組むとき貴様は必ずゼルトと組む! なんとなーく組みたそうにしている私には気付かなかったか!?」

「気付かなかったよ! え!? そんな風にしてたの!? 全ッ然全く気付かなかったよ! 何なの!? 実は寂しがりなの!? っていうか、ラインリッヒが組みたくなる程俺達って仲良かった!?」

 一応貴族相手には敬語を使っていたはずのユウシアだが、すっかり抜けている。

「そ、それは……いや、そんなことはどうでもいい! とにかく貴様は私を避ける! だからやっとだ、やっと戦える!」

「いやさ、決闘挑むとか方法は――」

「何故貴族である私が平民の貴様ごときに決闘など挑まねばならんのだ! だったら貴様から挑め!」

「えー何そのプライド。急に出てくるプライド。ついさっき貴族の尊厳とか色々と丸めてゴミ箱に捨てちゃいそうな発言したばっかなのに、そのプライド」

「知るかかぁっ! もういい、やるぞホラァッ!」

 自棄になったラインリッヒが取り出した獲物は、なんと――鞭。

「わぁお」

 これにはユウシアも驚いた。驚いて、棒読みになってしまった。

「ゼルトに教わってたのに、鞭て……ゼルト、鞭の心得とかあるの……?」

「なぁにをブツブツ言っている! 来ないのならこちらから行くぞ! てぇりゃッ!」

 ラインリッヒが放った鞭は、正確にユウシアの右腕を絡めとった。

「お、凄いコントロール」

「どうだ、これで利き腕は使えまい!」

 得意げにしているラインリッヒ。だが、

「ほれっ」

「ぬぉうっ!?」

 ユウシアが腕を引くと、ラインリッヒが釣れた。

「こんな使い方するなら、もっと鍛えない、とっ!」

「ごぼぁっ!!」

 飛んでくるラインリッヒに合わせ、ユウシアの左アッパーが炸裂! ラインリッヒはゴードンとは反対側で星となった!

『……え、えーと……なんかコントみたいですけど、試合終了! 圧倒的! ユウシア君、圧倒的な力で勝利を勝ち取りましたぁっ! なんとなんと、決着にかかった時間は、過去最短だそうです! 素晴らしいですね!』

 そんなこんなで、ユウシアはヴェルムの依頼を無事達成したのであった。

 前回の最初のアレはこういうことでした。なんとなくそれっぽい演出にしてみただけ。深い意味はない。ゴードンだと思った? 残念ラインリッヒでした。

 というか、どうせユウシアの圧勝なのに真面目に書くのも馬鹿らしいかなって思ってたら、馬鹿らしい試合になってしまった。ホントに、コントか何かですか?

 あ、エルナさんはもっと喋ってます。実況を挟むのが面倒なだけです。あと邪魔。

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