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出来るだけ、早めに……

「く、くくく……一対一で戦えるこの時を、どれ程待ち望んでいたことか……!」

「……くっ」

 ユウシアは小さく呻く。

 予選のバトルロワイヤル。そう時間が経たない内に、残り二人にまで減っていた。


++++++++++


 早速今日から始まる予選であるが、なんと、計三十二試合もあるにもかかわらず、一試合ずつ行われるらしい。闘技場は複数あるというのに、なんという時間の無駄遣い。

「そんなのんびりしてて平気なんですか? ほら、授業」

 ユウシアの予選は第一試合になる。それでも少し時間があるためそこらをブラブラしていたらたまたまヴェルムと遭遇したので(何故こんなところにいたかについては触れないでほしいらしい)、ユウシアはそんなことを聞いてみた。

 するとヴェルムは、若干目を逸らして、

「……実は、毎年大分ギリッギリだったり……おかげで、武闘大会終了後は、夏休みまで勉強漬けというのもザラなんですよね……」

(あ、夏休みとかあるんだ)

 そこじゃない。

「ユウシア君」

「はい?」

「勉強漬けは、嫌ですよね?」

「……まぁ、はい」

 実はたまに、本当に極々たまーに居眠りしてたり、してなかったり……なんて言えないユウシアは、ぎこちなく頷く。

「では、予選、出来るだけ早く終わらせてくれませんか?」

「ちょっと待った。先生、それ、教師としてどうなんですか?」

「……だって、ユウシア君が勝ち残るのは確定でしょう……あ、他の人にも言っておいてください。えーと、ゼルト君にリルさん、フィルさん、アヤさん、リリアナさんですね。多分勝ち残れると思うので、早めに終わらせてしまうように、と」

「え……皆勝ち残れると思うって、先輩方もいるんですよ?」

 何を言っているんだこの人は、と首を傾げるユウシアに、ヴェルムはニッコリと笑う。

「実はですね、今年の新入生、結構レベルが高いんです。例えばノルト君ですが、今回こそAクラスでしたけど、他の年に受験していれば、まず間違いなくSクラスに入れたでしょうから」

 ここで、ノルトって凄かったんだ、ではなく、ラインリッヒとかヤンクも結構凄い人なんだな、と思ってしまうユウシアは間違いなく失礼。

「それに、一ブロックにつき一人しか成績上位三名に入っている人はいませんし。あ、遠距離職近接職分けたときの実技の成績ですよ?」

「……先生、それってほぼ出来レ」

「おっとそれ以上は言っちゃいけません。こちらにも事情があるんです。というか、下手に優秀な人を固めて予選で激戦を繰り広げてもらったところで、結局本戦が出来レースになるだけですよ」

「言っちゃってるし……」

「おっと、口が滑りましたね……そろそろ始まりますし、巻きでお願いしますね、ユウシア君。――あ、あと」

 踵を返し去ろうとしたヴェルムは、一旦立ち止まって顔だけ振り返る。

「今年はレベルが高い、と言いましたが、もちろん先輩達が弱い訳ではありません。特に各学年の首席の皆さんは僕から見ても化け物ですから、くれぐれも油断はしないように。まぁ、当たっても本戦ですけどね」

 ヴェルムは最後に笑いながらそう付け足して、手を振りながら去っていく。

「……化け物、か。先生から見たら、俺もそうなるんですかね」

 ヴェルムを見送ったユウシアは、小さくそうひとりごちた。


++++++++++


『さぁ始まりました武闘大会! 予選第一試合は――なんと! いきなり今年最注目の新入生、ユウシアの登場だぁ!!』

 いきなり始まった実況に一年生達が目を白黒させる中、その存在を知っていたであろう上級性の間から歓声が沸き起こる。

『おっとぉ、一年生達が驚いている! 申し遅れました、私、毎年何故か実況に駆り出される、三年Bクラス担当のエルナ・セルアデスです! ですです! そこの! いい年して何言ってるんだみたいな顔で見ちゃいけません! こうでもしないとやってらんないんです! ついでに、学園長にはボーナスを要求します!』

『講師として何らかの実績を上げてくれたら、考えておきます』

『はい、断られちゃいましたね! 学園長、わざわざ魔法まで使っての返答、ありがとうございます! ところで、私はもう結構頑張ってます! ボーナスは実質無理ということですね!』

 コントか。この実況の先生はコントでもやりに来たのか。

『……コントじゃありません。だから皆さん、そんな顔しないでください。実況やりますから。――さーてぇ! 気を取り直してぇ! ユウシア君の話題でしたね!』

「いや、なんで……」

 エルナの言葉にユウシアは思わず呟く。その話、もうよくない? と。

『紹介したいんです! 私が! 個人的に! ユウシア、平民にして首席合格、その成績は、筆記試験で満点に、実技試験では試験官の心を折ると、これまでにないもの!』

「だから、折られてない!」

 どこからか聞こえるスゴートの声。そういえば入学式でもこんなのあったな、とふと思い出すユウシア。

『と本人は言っているが、果たしてそれは真実か! なんとユウシア君、その後同級生に散々挑まれた決闘の全てに圧勝! 正直今回の予選もやる意味あまりないんじゃないかと思う私です!』

 エルナの長々とした紹介に、ヴェルムの表情が少しずつ険しくなる。早く試合を進めたいのに、ユウシア紹介が中々終わらない。

『はい、すみません! もう終わりにします!』

 それを察知したらしいエルナがすぐさま謝る。が、

『でも最後に一つだけ! 実はユウシア君、我らが王女であるリル様とフィル様と親しげにしている姿が度々目撃されています! というか、毎朝一緒に登校しているそうです! 特にリル様とはいつも近くにいるとかなんとか! 一体どういう関係なんでしょうね!』

 余計なことを言う実況である。そのことは割と有名だったらしいが、知らなかった者がまだ過半数だった。そんな人達からユウシアに視線が集中する。何故ユウシアの姿を知っているのかは、まぁ、決闘を散々やっていたからだろう。ユウシアはそっと目を逸した。

『ユウシア君目を逸らす! やはり何かあるのか!? 説明を求めたいところですが、学園長の目が怖いのでこの辺で終わりましょう! ――では、出場者の皆さん、準備はいいですね!?』

 半ば無理矢理な流れだが、ようやく試合が始まるようでホッと息を吐くユウシア。ヴェルムナイス。

 各々の武器を構える出場者達を確認し、エルナが再び口を開く。

『それでは、予選第一試合、スタートですっ!!』

「出来るだけ早めにお願いしますね」

 分かりました。

 という訳で、結構すぐ予選終わります。最初のはあれです、あんま深い意味はない(ネタバレ)。

 本当は今回で第一試合終わらせちゃうつもりだったんですけどね、エルナさんが暴走しちゃって。おかげで最初のシーンまで行かなかった。

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