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ユウシアVSゼルト

 久しぶりに“アレ”が登場します。

 決闘は明日の午後、校内で最も大きい第一闘技場で行われることになった。

 そしてユウシアは、珍しくその決闘のため一人訓練をしていた。

「ユウシア様、ゼルトさんはそこまでしなければならない相手なのですか?」

 普段のユウシアは、ほぼ着の身着のままで決闘を行っていた。もちろん、訓練などしている時間がなかったというのもあるかもしれないが、それにしたって体を温めるようなこともしなかった。

 ユウシアは、リルの質問に仮想の敵を相手に行っていた組手を止める。

「……リルはさ、入試のとき、実技試験の方の結果って知ってる?」

「いえ……というより、公開されているものなのですか?」

「いや、公開してるようなものじゃない。でも、先生に聞いたんだ」

 ユウシアは、そこで言葉を切ると振り返る。

「まず、遠距離の方は一位がアヤ、二位がリルで、三位がリリアナ」

「あら、アヤさんに負けてしまいましたか。残念ですわ」

「今後頑張って。……それで近接は、一位は俺で、ニ位はフィル。そして三位が――」

「…………」

「――ゼルトだ」

「……ゼルトさんが」

 リルの呟きに頷きを返すユウシア。

「残念ながら、会場が違くて試合は見れなかったけどな。先生曰く、それだけじゃないらしい」

「それだけじゃない……ですか?」

「そう。意味はよく分からなかったけど……それでも、今までで一番の強敵なのは間違いないし。全力でやりたいんだ」

「そうでしたか……ならわたくしは、ユウシア様を全力で応援しますわ!」

 ユウシアは、張り切るリルを笑いながら撫でる。

「うん、よろしく」

「はい!」


++++++++++


 翌日。

 第一闘技場には、ユウシアとゼルトの決闘を見るため、大勢の人が集まっていた。

「うわ……凄い人」

「予想外だ」

 少し不満気に言うゼルトに、ユウシアは思わず苦笑する。

「いやぁ……ちょっと情報を公開しただけでここまで集まるとは。僕も予想外ですよ」

 悪びれずそう言うヴェルム。あんたが犯人か。

「……でもまぁ、俺達の決闘には」

「あぁ。関係ない」

「その通り。周りにどれだけ人がいようとも、君達の決闘には関係ありません。……では、始めましょうか」

 ユウシアとゼルトは頷いて少し距離を取る。

 ユウシアは、いつもの通り短剣を構える。

 それに対してゼルトは、懐から何やら棒を取り出すと――

「展開」

 そう呟いた直後、棒が光に包まれ、伸び、槍へと変化する。

魔導具アーティファクト……?」

「言っただろう。俺は護衛もしているんだ。常に邪魔な武器を持っている訳にもいかない」

「なるほど、確かに」

 納得するユウシアを見ながら、ゼルトは槍を構える。

「……でも、懐に入っちゃえばこっちのものだぞ?」

「お前が速いのは分かっている。それでも、入れさせなければいいだけのことだ」

 ゼルトの言葉にユウシアはニヤリと笑って、

「そうこなくっちゃな」

「……両者、準備はいいですね」

「「はい」」

「それでは――」

 ヴェルムは、上げた手を振り下ろす。

「――始めッ!」

「ふっ!」

 槍と短剣。一見槍が有利にも思えるが、ユウシアが言った通り懐にさえ入ってしまえば、短剣の方が圧倒的に有利だ。

 だからユウシアは、開始早々ゼルトへと突っ込む。

 その距離は一瞬で縮まり、すぐに槍の間合い、剣の間合い、短剣の間合いへと――

「甘いッ!」

「くっ!」

 ユウシアのこれまで見てきた以上の速度に一瞬目を丸くするゼルトだったが、短剣の間合いに入られる直前、槍の柄を使ってユウシアを弾き飛ばす。

 ユウシアは吹き飛ばされながら置き土産とばかりに投げナイフを投げるが、それも全て叩き落とされてしまう。

「まさか、今までのが最高速でなかったとはな……」

「まだまだ上がる、ぞっ!」

 今度は槍の間合いに入る直前で止まると、【隠密】で気配を消しつつ背後に回り込む。

 だが、

「『繋ぐは影、影の精霊。汝、今我が身とならん』〔シャドウ・アバター〕」

 ユウシアの振るった短剣が、ゼルトの体をすり抜ける。

「なっ!?」

「こっちだ!」

「くっ!」

 いつの間にか後ろにいたゼルトの攻撃を、ユウシアはかろうじて回避する。

「今のは……魔法、なのか?」

「あぁ、そうだ。俺は珍しい影属性を持っていてな。影と一体化出来る……さて、どう攻略する?」

(……先生が『それだけじゃない』って言ってたのはこのことか)

 厄介、どころではない能力だ。本来、気配を消しての不可避の一撃がユウシアの持ち味だ。だが、ゼルトの場合は見失ったらとりあえず魔法を使っておけばいいのだ。

「……面白い」

 ユウシアの顔に笑みが浮かぶ。奇襲が全く通用しない相手というのは初めてだった。 

「でもなゼルト。俺にタネを明かしてしまったのは、失敗だったな」

「……ほう? タネを知っただけで、俺の影魔法を攻略出来ると?」

「当然」

 ユウシアは、ニヤリと笑いながらそう答える。

「ふっ……さっきのお前ではないが……面白い。やってみろ」

「あぁ、やってやるさ。油断はするなよ?」

「お前との戦いで油断出来るなどとは思っていない。来い!」

「――言われなくても!」

 ユウシアは再び【隠密】を使用する。そして、先程のように後ろへと回り、先程のように短剣を振るう。まるで、意識してそうしたかのように、正確に。

 当然そうなれば、ゼルトが分身を作り出し、ユウシアがそれを攻撃してしまうのも同じ。また、そのユウシアの後ろに現れたゼルトが攻撃するのも、同じだった。

 そして、ゼルトが放った一撃は、ユウシアの背中に突き刺さり――ユウシアが、消えた。

「!?」

 目を丸くしつつも、嫌な予感がして前へと思い切り跳ぶゼルト。少し転がってから起き上がり、つい先程まで自分がいたところを見ると、彼の視界に入ったのは、いつの間にかそこに立っていたユウシアと、ゼルトに向かって飛んでくる数本のナイフ。

「くっ!」

 近過ぎる。が、ゼルトはギリギリのところで弾き返す。

 しかし投げナイフは、第二陣、第三陣と続く。

 それらを必死に叩き落とすゼルト。

 やっとナイフの弾幕が途絶えたと思えば、次に飛び込んでくるのはユウシア自身。

「近付けさせない!」

 ゼルトは叫びながら、槍を構える。

 ユウシアはそのまま飛び込んで――来なかった。

「なら、近付かないまでだ」

 次に飛んでくるのは、ユウシアの主装備である短剣。ゼルトは今までのようにそれも叩き落とす。

 武器を捨ててなんのつもりだ、と思うゼルトの耳に、ユウシアの声が届いた。

「〔殲滅ノ大剣〕」

 赤い光がユウシアの手元に集まり、凝縮し、形を成す。

 現れたのは、大剣。ゼルトの槍すら超える、長大な。

「――ふっ!」

 逆刃に持たれて振るわれたそれは、槍ごとゼルトの体を吹き飛ばした。

「――勝者、フェルトリバークラス、ユウシア!」

 ヴェルムのその声と同時に、闘技場内に歓声が響きわたった。

 はい、大剣さんですね。水晶武装オーブアームズ(笑)の。

 ちなみに、ユウシアは全力は出してません。具体的に言うと、【集中強化】と【第六感】、それと作中にある通り【毒生成】は使ってません。【五感強化】は一部使ってました。あと、途中で消えたユウシアは【偽装】による分身です。分身には分身で返してしまえ、という安直な考えです。

 ところで、〔シャドウ・アバター〕って直訳すると影分身なんですよね。あ、影○身にしとこうか(遅い)。

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