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ユウシアVSノルト

 書きながら寝落ちしかけた……。

「――始めッ!」

 ヴェルムが上げた手を振り下ろす。

 それに合わせて両者――動かない。

(受けに回るタイプか……)

 ユウシアは本来、あまり自分から攻めていくようなタイプではない。相手の攻撃を避け、出来た隙を確実に突いていくというのが基本なのだ。

 しかし、だからといって、自ら攻められないという訳ではない。相手が防御主体だというのなら、攻めなければ隙だって生まれやしない。

 ユウシアが腰を落とすのを見て、ノルトが盾を構え直す。

 その直後、一気に駆け出すユウシア。

「速っ――!」

 キィンッ!

 ノルトが声を上げたのと同時に、金属音が鳴り響く。

 ユウシアの短剣を、ノルトがかろうじて盾で防いだのだ。

 しかし、ユウシアの攻撃は止まらない。

 左右上下、あらゆる方向から、あらゆる方法で攻撃を加える。

 斬り、突き、殴り、蹴り――自分の体の全てを武器とし、攻め続ける。

 ノルトは、盾だけでは全方向からの攻撃を補えず、剣も使って必死にユウシアの攻撃を防いでいく。だがそれでも、ノルトの体には次第に傷が増えていく。

 ユウシアは今回、毒は使わない気でいる。ルール上は問題はないが、ノルトは「ユウシアから学びたい」と、そう言っていた。であれば、ユウシアとしては、学ばせてやるのも吝かではないのだ。もちろん、毒を使う相手もいる、ということは教えられるだろうが、そんなもの少数派だろう。ユウシアが毒を使えば勝負はすぐに付いてしまう。

 いや、ユウシアなら、毒など使わずとも、とっくに決着は付けられていた。投げナイフで牽制してから【隠密】で背後に回り込む。『殲滅ノ大剣』を呼び出して、盾ごと吹き飛ばす。あるいは、繊細なコントロールが必要になるが、予めばら撒いておいた投げナイフの能力で風を操り、全方向から攻撃を仕掛けてもいいかもしれない。攻撃系属性を使える魔導具アーティファクトと言ってもそこまで大規模な魔法は使えないが、その程度であれば可能だ。

 しかしユウシアは、今回はそれはしない。あくまで、正面からの戦いをする。もし今後また頼まれたら、別のタイプの相手との戦い方を教えてやればいい。もっとも、ノルトはユウシアの本来の戦闘スタイルなど知らないだろうが。

「く、ぅっ……!」

 ノルトは、必死にユウシアの攻撃を防ぎながら呻き声を漏らす。集中力が切れ始め、傷が増えている。全方向からあり得ない程の速度で放たれる攻撃を防ぐのは、それほどに神経を使う作業だった。

「短剣使いを近付けさせてどうする!」

 ユウシアは、攻撃を続けながら声を上げる。

「そう言われたって……くそっ!」

 ユウシアとて、ずっと同じ速度で攻撃を続けられる訳ではない。ノルトは、攻撃が緩んだ一瞬を見て、ユウシアの短剣を無理に弾き、隙を作り出す。

「『繋ぐは炎、炎の精霊。汝、今ここにて力を開放せよ』〔フレイム・ボム〕! ――ぐぅっ!!」

「くっ!」

 自分が傷付くのも厭わずに放った火球は、ユウシアとノルトの間で炸裂し、二人を吹き飛ばす。魔力を遮るユウシアのマントも、魔法によって生まれた衝撃まではどうにも出来ない。

「魔法……使えたのか」

「これでも、魔法騎士を目指しててね……少し自信があるんだ!『繋ぐは炎、炎の精霊。汝、我が剣に宿りて、我が力となれ』〔フレイム・エンチャント〕」

 ノルトが詠唱を終えると、彼の持つ剣と盾が炎で覆われる。詠唱では「我が剣に」と言っていたが、実際は武具ならなんでも対象になるようだ。

「仕切り直し……もう、油断はしないよ」

 ノルトは、今度は剣を前に構えながら言う。攻めの構え、ということだろう。守りに回ってもどうせまた防戦一方になるだけだと悟ったのだ。

 ユウシアは小さく笑うと、短剣を顔の前に構える。今度は攻防交代、ユウシアが相手の攻撃をさばく――そして、本来のスタイルに戻る。

「『繋ぐは炎、炎の精霊。汝、我が脚と成り、翼と成りて、我等を運べ』〔フレイム・ブースト〕」

 かつてアヤが使った〔エアロ・ブースト〕は、風の抵抗をなくし、更にその風で体を後押しすることで加速する魔法だった。しかしこの〔フレイム・ブースト〕は、言わば瞬発力を高める魔法。イメージとしては、足の裏で〔フレイム・ボム〕あたりを発動する感覚だ。もちろん、本人にダメージはない。

「っ!」

 一瞬で距離を詰めてきたノルトに、ユウシアが思わず目を丸くする。

 しかし、だからといって防御が疎かになったりはしなかった。ノルトの剣をしっかり受け止める。魔法の効果か押されてしまうが、ノルトの腕を押し、剣を逸らす。

「まだッ!」

 ノルトは、すぐさま剣を戻すと先程のユウシアの猛攻の写しのごとく連撃を見舞う。それを短剣一本のみで凌ぐユウシア。

 ユウシアはまたも小さく笑って呟く。

「――それじゃあ、そろそろギアを一つ上げようか」

「!?」

 声は小さかったが、それでもノルトには聞こえた。

 ユウシアの悪魔のような呟きが。

 言葉通り、ユウシアの防御に余裕が見え始め、次第にユウシアからの攻撃も増えていく。

「本当に、速くなって……!」

 ノルトが思わず声を上げる。

 速くなる。ユウシアからの攻撃が増える。〔エンチャント〕した盾でもさばききれない。

 そしてついに、ノルトの防御が破られる。

「これで終わりだ」

 ユウシアは言いながら、ノルトの首元に短剣を突き付ける。

 ノルトは諦めたように息を吐いてから手を上げて、

「……降参だ」

 それと同時に、審判役のヴェルムが声を上げる。

「――勝者、フェルトリバークラス、ユウシア!!」

 観客達による歓声が、闘技場内に響きわたった。

 上手いかどうかは別として。

 やっぱり、戦闘シーン書くの楽しいです。もっと上手くなりたい……!

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