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入試開始

 最後の方なんかちょっとイジりました。具体的にはスゴートさんのキャラを微妙に変更。

 残念伯爵ラインリッヒが(逃げ)去ってから数分。

 ユウシア達受験者は、受験番号毎に決められた会場へと案内されていた。ちなみに、受付のタイミングが同じだったので、ユウシア、アヤ、リル、フィルの四人は受験番号が近く、同じ会場になっている。

 まず最初に行われるのは、筆記試験。教科は、日本で言うところの数学と世界史だ。とはいえこちらでも分かれている訳ではなく、両方同時にやるのだが。

 試験時間は一時間。ユウシアには、余裕があるように感じられた。

 ……だが、それも当然だろう。何せ、世界史の方はまだしも、数学で出てくる問題は四則計算程度。最早算数といって差し支えない程度だったのだ。せめて因数分解くらい出せとユウシアは言いたかった。

 隣の席で問題を解くアヤ(席が受験番号順)も、どこか拍子抜けしたような表情だ。もっと難しい問題が出ると思ったのだろう。

 それを見て少し安心したユウシアは、解き終えた問題を見直す。三回程。

(よし、多分大丈夫)

 満足気に頷いたユウシアは前の壁にかけられている時計をチラリと見る。すると、まだまだ時間が残っているではないか。

(……どうしよう、やることが何もない。全くない)

 試験中だというのにやることがないなど、一体何を考えているのやら。

(もういっそ、寝てしまおうか……でも、もしバレたら嫌だしなぁ。……ん? バレたら? ……そうか、バレなければいいんだ)

 ユウシアは革新的な考えをひらめいた。

(【偽装】)

 どこか考えているように頬杖をついたまま目を瞑り、それを開いているように見せかけてから、ユウシアは眠りについた。暇だったから仕方ない。


++++++++++


 時は過ぎ、実技試験。

 試験の方法は、近接型遠距離型問わず、教官との模擬戦であった。

「次、受験番号九百八番! 前へ!」

 実技試験の会場である闘技場の真ん中に立つ教官が、声を張り上げて次の受験者を呼ぶ。

 そしてその番号は、フィルのものであった。

「お、フィルの番か。頑張れ」

「うむ。行ってくる」

 結論から言うと、ほぼ引き分けだった。

 相手の教官は元騎士らしいが、そもそもフィルは現役の騎士なのだ。勝つまではいかなくともこれくらい当然だろう。と、そこまで思い出したところでユウシアは、何故フィルがこの学校に通うのか不思議に思った。だが、屈託なく笑うフィルを見て考えるのをやめた。嬉しそうだからいいのだ。

「次ー、受験番号九百九番の子、おいでー」

 続いて呼ばれたのは、リルの番号。教官が変わっているのは、一応リルが遠距離型だからか。受付時にそういったことも聞かれているのだ。

「ユウシア様、応援して下さいね」

「もちろん」

 リルの言葉に、ユウシアは微笑みながら答える。

 相手の教官は魔道士然としたローブを羽織った女性だ。見た目の通り、魔法主体の戦いをリルと繰り広げていた。

 残念ながらリルは負けてしまったが、どうやら実戦形式はあまり経験がないようで、終わった頃にはひどく息切れしていた。魔法そのものは規模も発動速度も素晴らしいものがあったので、自信があると言っていただけあって、魔法の腕は確かなようだった。

「えーっと、次は受験番号九百十番の子ねー」

 リルと戦った教官が、そのまま次の番号を呼ぶ。

「ん、あたしだね。じゃ、行ってきます!」

「うん、行ってらっしゃい」

 手を振るアヤに、ユウシアも手を振り返す。

 彼女もリルと同様負けてしまったが、リルより少しだけ善戦しているように見えた。この間の偽者との戦いが彼女を成長させたのだろうか。

 アヤが常時使っていた〔アクア・ブレイド・ダンス〕と〔アイス・ブレイド・ダンス〕には、教官も大分手を焼いているようだった。驚いたような表情もしていたので、それだけこの魔法は高度な魔法だったのだろう。

 さて、フィル、リル、アヤと来ればその次は、

「では続いて、受験番号九百十一番!」

 ユウシアだ。

 近接型と書いたので、相手となる教官はフィルのときと同じだ。

「それじゃあ皆、行ってくるよ」

 そう言って立ち上がるユウシアだが、誰からも返事がない。

「……あれ? 無視?」

 と、ユウシアが問いかけると、三人は顔を見合わせて、

「いや、だって」

「ユウシア様なら」

「勝つだろう?」

 当然のような顔でそう言い放った。

 ユウシアはもう、苦笑いを浮かべるしかなかった。


++++++++++


「俺は教官のスゴートだ」

 教官――スゴートの前に立つと、彼はそう自己紹介をしてくる。

「ユウシアです。よろしくお願いします」

 ユウシアもそう返すが、頭は下げない。

「……警戒を怠らないのはいいが、礼儀としてはどうかと思うぞ」

「あー……癖というか、なんというか」

 ユウシアが苦笑しながら言うと、スゴートはどこか呆れたように息を吐く。

「まぁ、いい。見た感じ、大分出来そうだしな。……さっきの姫殿下二人といい、お前の前の魔法使いといい、今年は優良株が多いようで、何よりだ」

 まさかの優良株全員知り合いである。

 なんてことはわざわざ言う必要はないので、ユウシアはそのまま短剣を抜く。

「……早速やる気か。いいだろう、かかってこい!」

「では、遠慮なく」

 そう言ってユウシアは、いつものように気配を消すのであった。

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