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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
王都ジルティス
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だから、しないって

 そういやこの小説、魔法出てきてなくね?

 その後、さて寝ようか、と解散してから、ユウシアはリルに付いて彼女の寝室に来た訳だが、ここで思っていたのと違うことがあった。

 それは、

「……ベッド、小さくない?」

 王女であるリルが使うベッドなのだ。どうせ無駄に大きな、キングサイズだとかそういうのだと高をくくって同じベッドで寝ることを了承していたのだが、その予想とは違い、ごく一般的な一人用ベッドのサイズだったのだ。

わたくし一人なら、そこまで大きな物は必要ありませんから。初めはもっと大きかったのですが、お父様に言って変えてもらったのですわ」

 リルもそんな想像が分かっていたのだろう、ユウシアの発言に特に疑問を抱くこともなくそう答える。

「それではユウシア様、わたくしは体を流して来ますので、ごゆっくり」

「あぁ、うん。……え? 風呂?」

「はい。部屋に備え付けてもらいましたの。王族用のお風呂ですと、どうしても使用人に手伝ってもらうことになってしまいますから……」

「なるほど、そういうの嫌いなタイプ?」

「嫌い、という訳でもありませんが……」

 とだけ答えて、遠回しにユウシアの質問を肯定するリル。そのまま、部屋の奥にある扉を開く。

「……ユウシア様、覗きは結婚してからですわよ?」

「しないよ! っていうか、許可するのか拒否するのかハッキリして!」

「それなら、許可しますわ」

「結局!?」

 クスクスと笑ったリルが風呂場へと引っ込んでいく。

「はぁっ……。リルってあんなキャラだったっけ……?」

 疲れたようにため息を吐いたユウシアが、困ったように苦笑する。

 シャァァアアアー……。

「この音……シャワー?」

 風呂場から聞こえる音に、ユウシアが首を傾げる。シャワーなどこの世界にはなかったはずだが……。

(いや、王女の部屋の風呂場だもんな。魔石か何か使ってるのか)

『さすが王女、豪華ですね』

「うぉわっ!?」

 いきなり脳内に響くラウラの声に、大声を上げてしまうユウシア。

「――ユウシア様ー? どうなされましたー?」

「あぁいや、なんでもないよ、気にしないで!」

 風呂場から聞こえる声にそう返したユウシア。そのまま、ラウラに意識を傾ける。

『何、神気とかいうの、溜まったの?』

『そういう訳ではありませんけど、ここも神気が元々溜まっていたんです。……そんなことよりもユウさん、どんどん王女様との関係進んでるじゃないですか』

『いや、進んでない進んでない。っていうか、余計なお世話だよ』

 若干不満げに言うラウラに、ユウシアも少し不満げに返す。

『……だってユウさん、正直、彼女のこと好きになってきてますよね?』

 ラウラの言葉に、ユウシアは一瞬うぐっ、と言葉に詰まってから、口を開く。

「……別に、そんなことは……」

 思わず声に出してしまった否定の言葉。しかしそれは、どこか歯切れの悪いものだった。

『……まぁ、いいです。そんなことより本題に入りましょう。あまり時間がないんです』

『じゃあ何で余計な話なんかしたんだよ……』

 ユウシアのそのツッコミに、頭の中でラウラが「てへっ」なんてやっていそうな気配が。

『こほんっ。……それで、この間の続きなんですが……』

『あぁ……あれ、結構気になってたんだけど』

 そんなユウシア軽く笑って、ラウラは続ける。

『実は、オーブの反応が移動していたんです』

『移動? どういう……』

『これはあくまで推測ですが、人間に憑依している可能性が……』

『人間に、憑依……? そんなことが……』

 呟きながら、ユウシアは考える。先程ハイドに対してオーブの反応を探ったのは、その可能性を考えてではなく、もし関係があるのなら“残滓”的なものもあるかな、と思ってのことだ。

 結局関係はなさそうだったし、あれは本当に念の為であり、元々疑ってはいなかったのだが。

 ともあれ、オーブが人間に憑依出来て、その状態の人間がユウシアに接触していたのであれば、候補は相当絞れる。と言うか、王城ここに来る前から一緒だったアヤ、リル、フィルを除くのなら、あとはもうガイルとセリック、そしてその他の騎士や兵士、使用人が数名程度だろう。

『オーブが人間に憑依すると、その力が数倍にも膨れ上がります。戦うことになったら、そのときは気をつけて下さい』

 誰だろうか、と考え込むユウシアに、ラウラが忠告する。

『分かった、気をつける。……そうだ。その憑依したオーブを取るには、どうすればいいんだ?』

『相手を気絶させて、その体に触れて下さい。後は私がやりますから』

『ん、りょーかい』

 ラウラの言葉に軽く答えるユウシア。例え相手が誰だろうと、特に問題にはしていない様子だ。さすがに楽観視がすぎるかもしれないが、あまり深刻に考えすぎてもよくないのだ。

『それではユウさん、神気が危ないので私はこの辺りで』

『そうか。じゃあまた……になるのかな?』

『はい、また。……ユウさん、エッチは結婚してからですよ?』

「だからしないっての!!」

「何がですか?」

「うぉうぇいっ!?」

 ラウラの発言に、またも声を出してしまうユウシア。そこに後ろからいきなりかけられた声に、飛び上がらんばかりに驚く。

「いきなり声をかけないでよ、リル……」

 少し恨みがましい目で振り返る。

 リルはキョトンとした顔で、

「気がついているかと思いましたので……」

 リルの言う通り、普段なら普通に気がついただろう。しかし今回気づけなかったのは、ラウラと会話していたから。つまりこれはラウラのせいだ。「ひどい責任転嫁です!」と抗議するラウラの様子が目に浮かぶ。

『ひどい責任転嫁です!』

 ……まだ残っていたようだ。

『むぅ、私がいないと思っ……ば……』

 今度こそ消えた。

「ユウシア様も、入られますか?」

「ん? あぁ、風呂か。……そうだな、頂こうかな」

「はい。しっかりと身を清めて来て下さいね」

「……なんか別の意図があるように思えるのは、気のせい?」

「ふふふ……わたくし、初めてはお互い綺麗になってから、とずっと決めてましたの」

「珍しいパターンだな! っていうか、さっきから何回もしないって言ってるよね!?」

 大丈夫です、してません。

 ユウシアの「うぉうぇいっ!?」は、一瞬「チョレイッ!?」にしてやろうか悩んだ。

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