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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
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職業、暗殺者

 “元”とは。

 結論から言おう。


「コカトリスの卵、結構美味しかったな……」

「私も、少し驚きました。一応食用として出回っているのは聞いていましたが、コカトリス自体が強い魔獣なので卵も高くて、その割にはそこまで美味しくないとのことでしたので。あくまで値段に見合わないというだけだったのでしょうね。……あれ? ユウさん、この出汁巻き卵をコカトリスの卵で作ったこと、何で知ってるんですか?」


 ユウシアの呟きを拾ったラウラが、不思議そうに問いかける。


「そんなことよりもさ」


 ユウシアは唐突に話を変えようとする。

 ラウラはそんなユウシアを不満気に見つつも、先を促す。


「なんでしょう?」

「スキルの確認、しようよ。ずっと気になってたんだ」


 と言いつつも若干目を逸らすユウシアをラウラがジト目で見る。ユウシアの頬を汗が伝う。ラウラがため息を吐き、どこからか水晶のようなものを取り出す。


「それは?」

「これが、スキルを……もとい、使用者の情報を見るのに必要なアイテムです。特に名前はなく、呼び方が色々ありますが、『覗き玉』という呼び名が最もポピュラーでしょうか」

「覗き玉……なんか、悪いことに使えそうな名前してるな……」

「そうですね。ですが、使用者の情報を“覗き見る”感じなので、あながち間違いでもないんです」

「へぇ、そうなんだ」


 この水晶――通称「覗き玉」は、触れた者の情報を、触れた者自身はもちろん、他に触れている者がいればそちらにも伝えるというものだ。その際は、情報を知られる本人にすら知りえないことも知ることが出来るので、ある意味その本人の全てを“覗き見る”に等しい行為なのである。もちろん、記憶や思考などを知れる訳ではないが。


「それでは、早速見ていきましょうか。ユウさん、これに触れて下さい」

「りょーかい」


 ラウラに言われた通り、彼女が差し出す覗き玉に触れるユウシア。


「せっかくですから、ユウさんには見られないようにして、私が読み上げましょうか。その方が楽しみが増えるでしょうし」

「うん、まぁそれはいいんだけど、出来るの? そんなこと」

「女神ですから」

「あぁ、それでいいんだ……」


 そんな適当な理由で、と気の抜けた声を漏らすユウシア。

 ラウラはそれを気にせず続ける。


「それではユウさん、準備はよろしいですか?」

「あぁ、うん。お願い」

「はい、それでは――」


 ラウラが、集中するように目を閉じる。

 その直後、ユウシアの頭の中に不快感が。無理矢理覗かれているような、何かを引っ張られているような……何とも形容しがたい感覚だ。

 それはすぐに治まった。すると今度は、目の前の水晶が光を放つ。


「っ」


 思わず目を塞ぐユウシア。

 そちらも収まると、ラウラがゆっくりと瞼を上げる。


「なるほど、さすがですね……」


 少し大きめの声で呟くラウラ。


「さすが?」

「あ、いえ。それでは、読み上げますね」

「うん」


 ラウラは、一度息を吸って口を開く。


「名前、ユウシア。年齢、十五歳。身長、百七十二.二㎝。体重、六十一.三㎏……少し痩せ型ですかね」

「待て待て待て待て。何いきなりプライバシー侵害してるのさ。ていうか、え? そこまで分かっちゃうの?」


 まさかそこまで分かるとは。ユウシア自身、あまり気にしていなかったので知らなかった情報である。


「もちろん、制限をかけることも出来ますよ。……それでは、続けましょう」

「いや制限かけてよ」

「続けましょう」

「あっはい」

「職業」

(職業……?)


 ユウシアはその単語を聞いて、そういえば今の職業ってどうなるんだろう、と考える。学校に行っている訳でもないし、働いてもいない。……まさか無職か。ニート的扱いをされてしまうのか。

 ラウラが若干溜める。

 溜めて、口を開く。

 ユウシアが、ゴクリ、と喉を鳴らす。


「――暗殺者」

「ちょっと待って!?」


 それを聞いたユウシアが、思わず叫ぶ。ラウラを見ると、彼女もどこか複雑そうな表情をしている。


「いや、俺、暗殺者やめたよ!? ファナリアこっち来てから暗殺とか一回もしてないよ!?」

「ですよねぇ……何ででしょう?」


 同時に首を傾げるユウシアとラウラ。


「ここに出る職業は、世界が認めたものだけですし……」

「俺、世界規模で暗殺者って認められてるのか……?」


 思わず頭を抱えるユウシア。そちらの道からは足を洗ったはずなのに、まさか世界に「お前暗殺者な」と言われるとは、完全に予想外である。


「うーん……あっ、あれじゃないですか?」


 何やら考えていたラウラが、思いついたように顔を上げる。


「あれって?」


 あまり期待せず聞き返すユウシア。


「ほら、魔獣専門の暗殺者、みたいな。ユウさん、戦闘スタイルが暗殺寄りじゃないですか」

「なるほど……」


 言われてみれば確かに、魔獣を狩る時は、気配を殺してこっそり近付いて倒す流れが多かったように思う。


「そういうことでいいのかなぁ?」

「いいんじゃないですか? どこの世界も時々気まぐれですから」

「ラウラが言うならそうなんだろうけど……なんだかなぁ」

「ほら、考えていても仕方がないですって。それよりも、次はお待ちかねのスキルですよ。中々凄いのが揃ってるみたいですから」


 ユウシアは、やっと本命が来たと、ラウラの言葉に集中し始めた。

 さぁ、次回はやっと、スキルが出てきますよ。

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