人型
微妙に短いし、最後雑……。その内修正するかも?
それは、ハイドと出会った翌日、色々な人からのおせっかいによりユウシアとリルが二人きりで歩いているときだった。
「――リルッ!!」
「えっ? きゃあっ!」
そう叫ぶと同時、リルを抱き寄せて、全力で後ろに跳ぶ。
ダァンッ!!
つい今までリルが立っていた場所から、土煙と共にそんな音が。それはまるで、何かが着地したような、そんな音。
土煙はすぐに晴れ、その後には全身がくすんだ赤色の人――いや、“人型の何か”と呼ぶべきだろうものが立っていた。
身長は低めで、百五十五㎝程だろうか。全体的な体格も小柄だ。ここまでなら、普通に人と呼べただろう。
しかし、ユウシアが“人型の何か”と感じたのは、ここから先。まず、顔がない。仮面を着けているとか、そんなことではありえない自然さだ。そして、全身の輪郭が朧気になっている。存在が希薄とも言えるだろうか。
それだけではない。【鑑定眼】でも、ユウシアは「人間ではない」と感じた。あとは、暗殺者としての直感か。
「――――」
それから発せられた、聞き取れない音。声、なのだろうか。
耳障りなそれに、リルは思わず耳を塞ぐ。
しかしユウシアは何の反応も見せず、目を細めて呟く。
「……赤」
そう、赤。ラウラに聞いた、近くにあるというオーブの色。そして、ギールの殺害に使われた大剣の色。
そして、ユウシアの額の紋章が訴えてくる。目の前の人型は、オーブと深い関係があると、そう。
「――――ッ!!」
ユウシアが相手をしないことに腹を立てたか、またもや声にならない声を上げる人型。咎めるように叫んだ人型は、そのままユウシアに襲いかかる――の、ではなく。
ユウシアの直前で方向転換すると、そのまままっすぐにリルの方へ。
「リル狙いかっ!」
それに気が付いたユウシアは、慌てて人型の進行を遮るようにリルの前に出る。
「――――!」
邪魔をするな、と、そんな意味が込められていそうな奇声を発した人型に向け、ユウシアは短剣を振るう。
その短剣は吸い込まれるように人型に当たり、その首は呆気なく宙を舞う。
「……?」
しかしそれに、怪訝そうに眉を顰めるユウシア。
「ユウシア様……?」
そんなユウシアを見たリルが不思議そうな声を上げる。
ユウシアは、それに答えるために口を開く。
「……手応えがなかった――いや、そうじゃないな。手応えがおかしかった……?」
しかし、自分が感じた感覚が上手く説明出来ないようで、その言葉は尻すぼみになってしまう。
と、そこに。
「――――――――――――」
あの奇声。
「なっ!?」
それが聞こえた方向、先程飛ばした首が落ちたであろうあたりを振り返るユウシア。そこには、案の定人型の首と、いつの間に移動したのか残った体が。
その二つの断面からは、蛇のような、ミミズのような何かが無数に這い出している。そしてそれらが、互いと繋がり合い、互いの距離を少しずつ縮めていく。もしこれが漫画なら、確実に「ウゾゾゾゾッ」とか、そんな感じの擬音が使われているだろう光景である。
「何だあれ、気持ち悪い……」
嘘偽りない、ユウシアの本音である。リルも同意するように頷いている。何度も。
そんなことをしている間に、完全に頭と体が繋がった人型が立ち上がる。
「――――!!」
またも奇声を発した人型は、ついに怒りが頂点に達したのか今度こそ本気でユウシアへと向かってくる。
(さっきと同じじゃあ……多分、意味がない。となると……)
あとは、魔法だろうか。
魔法は使えないユウシアが、ただ一言短く言う。
「――炎よ」
それは、黒竜の角で出来た短剣の能力を発動するための起句。
黒かった短剣が赤みを帯びると同時に、周囲の温度が急激に上昇していく。
「――――!?」
人型が狼狽するような声を上げる。
ユウシアはそれにはお構い無く、人型の胸元に短剣を突き立てる。
そしてそのまま、能力を発動。
「燃え、ろぉぉぉおおお!」
叫ぶユウシア。
やがて人型の体は炎に包まれ、それが晴れた後には――
「なっ……無傷……?」
そう。傷一つない人型の姿が。
「どうやって倒せば……」
ユウシアはボヤきながら再び短剣を構える。
しかし人型は、呼ばれでもしたかのように顔を上げると、少し辺りをキョロキョロと見て、自分が入ってきた窓(破壊済み)から外へと出ていってしまう。
「え……?」
結局この日、人型が再び姿を現すことはなかった。
オーブそのものはどの辺で出そうか、結構悩んでます。




