五年前、村にて
本編にちらっと出てきた村襲撃を簡単にまとめてみました。おまけだから、短い。
これの前にもう一話投稿してます。そちらも忘れずに。
――ユウシアが十歳の頃。
買い出しのために訪れた村は、魔獣の群れに襲われていた。
「なっ……」
目を見開き、絶句するユウシア。
どの魔獣も、あの森で暮らしているユウシアからすれば、大した相手ではない。しかし、碌に戦える者がいないこの村にこの量となると、壊滅も時間の問題――
「――って、呑気に考えてる場合じゃない!」
男達が農具を手になんとか抑えているようだが、そんなものは気休めでしかない。
だが、ユウシアなら、この状況を覆すことが出来る。これよりも強い魔獣を、これよりも多く相手にしたこともあるのだから。
近くの魔獣に音もなく近づいたユウシアは、持っていた短剣でその急所を一突きにする。
「グォッ……」
一瞬の内に絶命する魔獣。
「フレイムリザードか……火の範囲が狭いのがせめてもの救いだな」
フレイムリザード。名前の通り火を吹くことが出来る魔獣だが、その火の範囲はかなり狭い。村の建物は木造だが、近づけなければ燃え移ることはないだろう。
「となれば、村の近くから――」
「きゃぁぁあっ!」
「っ!?」
村の方へと行こうとしたところで聞こえた悲鳴。しかもこれは、聞き覚えのある声。
「カンナちゃんか!」
悲鳴のあった方へと走り出す。
彼女の姿はすぐに見つかった。
(マズイ……!)
カンナは、腰が抜けたのか座りこんでしまっている。その目の前にいるフレイムリザードは、自分よりも小さなその少女に今にも食らいつこうと――
「グゥッ……?」
不思議そうな声を上げるフレイムリザード。目の前にいたはずの少女がいない。
少しあたりを見てみると、すぐそこにカンナを抱きかかえるユウシアを発見した。
「グォォオッ!」
「煩い」
邪魔をするな! とでも言うように吼えるフレイムリザードだが、ユウシアに睨まれ、身がすくみ、その直後、首を落とされる。
「ユウシア、君……?」
「もう大丈夫だ。俺が皆助けるから」
不安げに名前を呼ぶカンナを安心されるように頭を撫で、笑いかけるユウシア。
「――っ、うん……」
頬を染め、俯くカンナ。
落ちた。
なんてこと意識すらしていないユウシアは、彼女をどうするか悩んだ結果、この場に放置するわけにもいかないし、とりあえず村の中まで送ることに決める。
村までそう遠くはないが、その間にもフレイムリザードはかなりの数がいる。
ユウシアはそれを、カンナを抱えたまま、返り血を浴びせないように注意しながら仕留めていく。
村に着くまでの間ずっと腕の中から視線を感じたが……気のせいということにしておいた。
カンナを村に送り届けたユウシアは再びフレイムリザードの処理を始めた。
その後、三十分もしない内にフレイムリザードは掃討され、ユウシアは村人達にとても感謝された。
村人全員が感謝の証として色々な物をくれた。
結果として、金が浮いた。
この頃はセージもユウシアと普通に接してたんですけどね。ある意味これがきっかけで嫌われてますからね。