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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
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曲芸の才能

 メイサの店を出たユウシアは、宿に戻る道すがら、衣服店や防具店を物色していた。黒竜戦で燃えてしまったマントの代わりを探しているのだ。

(やっぱり、体を隠してた方がなんか落ちくんだよなぁ……)

 職業病だろうか。

 そんなことを考えながら歩いていたユウシアは、何やらフリーマーケットのように露店が立ち並ぶエリアへとやって来る。

「ジャンルがチグハグだ……」

 そこを見たユウシアは、思わずそう呟く。

 何せこのエリア、食べ物を売る露店から始まり、ユウシアが今まで見てきたような衣服を売る露店、武具を売る露店、果ては飼いならした魔獣を売る露店まであるのだ。全く統一していない。

 しかしそこを歩いているうちに何故か楽しくなってきたユウシアは、一つの古ぼけたマントに目を止める。

 形は、黒竜に燃やされたマントとほとんど変わらない。色は暗めの紺色で、丁度夜の色に溶け込めそうな――

(いやいや、暗殺しごとがある訳でもないんだから……)

 変なところに向かった思考を切り替える。

 ユウシアがこのマントに目を止めたのは、それが理由ではない。いや、正確にはなんとなく止まったのであり理由自体ないのだが。

 しかし何故か惹かれるものを感じたユウシアは、【鑑定眼】を発動する。物のおおよその価値や情報が分かるスキルだ。

(価値……は、そこまで無さそう……だけど、魔導具アーティファクトだよな、これ……?)

 その効果は、

「魔力反射……?」

 ユウシアの呟きを拾ったのか、今まではマントを見つめるユウシアを気にも止めていなかった露店の店主が声をかけてくる。

「よく分かったね。兄ちゃん、【鑑定眼】のスキルでも持ってんのかい?」

「え? あぁ、はい」

 いきなりかけられた声に驚きつつユウシアが答えると、店主は珍しいね、と呟いてから続ける。

「兄ちゃんの言った通り、そのマントは魔力を反射出来るんだけどね、自分から出る魔力も反射しちまうんだよ」

「それって、魔法が効かない代わりに魔法が使えなくなるってことですか?」

「その通り。治癒魔法なんかは、マントを避けて手を当てでもすれば反射されないんだけどね。ともかく、それを欲しがるってことは戦いに身を置くような人達だろう? なのに魔法が使えなくなるんじゃ話にならないから、全然売れないのさ」

「へぇ……」

 魔法が使えない。確かに、魔法を主とする者には死活問題だし、前衛をするならこんなマントではなく鎧を着ればいい。それに、戦闘スタイル的に軽装になるとしたら、魔法剣士のような場合が多いだろう。

 しかし。しかし、だ。そもそもユウシアは、魔法が使えない。魔力が関係するようなスキルも、【毒生成】は自分の体や自分が触れている物に直接毒を生み出すスキルだからマントに遮られることはないし、【収納術】は魔力そのものではなく魔力量が関係するスキルだ。

 つまり、ユウシアにとってこのマントのデメリットはデメリットたり得ない。

「……これ、いくらです?」

「ん? 兄ちゃん、これ買うのかい?」

「はい。値段次第ではありますけど」

「そうか……どうせこのままじゃ売れないだろうから……よし、赤字覚悟で銀貨一枚だ!」

 銀貨一枚でもそこそこの価値はあるのだが、魔導具アーティファクトであることを考慮すると破格も破格だろう。

 よって。

「分かりました。これ、ください」

「毎度!」


++++++++++


 宿に戻ったユウシアが扉を開けると、

「……何やってんの?」

 アヤとハクが曲芸じみたポーズをとっていた。

 具体的には、どこから持ち出したのかすら定かではない巨大なボールの上にアヤが見事なバランス感覚で片手倒立をして、彼女の足の裏を使ってハクが同じくボールに片手倒立をしていた。

「ひゃっ!? ユウ君っ!? ――きゃあっ!!」

 いきなり現れたユウシアに驚いたアヤがバランスを崩し、ボールから落ちてしまう。が、

「危ないっ!」

【集中強化】を使ってまで飛び込んだユウシアによりキャッチされる。踏み込みのときに廊下の床板が割れたような気がしたが……気のせいだろう。

「ぴ!」

 パタパタとユウシアの頭に降り立ったハクが声を上げると、二人から思わず笑いが漏れる。

「あはは……おかえり、ユウ君」

「うん、ただいま、アヤ」

 とりあえずアヤを下ろしたユウシアは、それで、と言葉を続ける。

「何やってたの? サーカスの真似事?」

「えっと、何故かいきなりボールが降ってきたからチャレンジしてみたら……出来ちゃった」

「ごめん何一つとして分からなかった。何? いきなりボールが降ってきた?」

「そう。あ、ほら、丁度こんなふうに……」

 上を指差しながら言うアヤ。そんな自分の発言をおかしく思ったのか天井を見上げる。

 ユウシアも同じようにして、それ・・を見た。

「「……え?」」

 いつの間にか天井にポッカリと開いていた穴と、そこから落ちてくる大きなボール。そして、

「ボールは友達……くふふ」

 何やら危ない言葉を呟きながら危ない笑い方をする、ユウシア達の応対をしてくれていたこの宿屋の看板娘の姿を。

 どうしよう。思いつきで出した(安定)看板娘のキャラが濃そうで今後どう扱うべきなのか……。

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