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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
22/217

……こう、ぷるんぷるんと

 やっぱり一章が終わった時点で隔日更新に変えようかな、なんて考えてたり。

 そういえば、本作が評価されてました。意外と高く。評価してくれた人、ありがとう!

 扉の先にある鍛冶場、そこの作業台に座ったメイサは、早速道具を取り出し、角から必要な部分を切り出し始める。

 この角は相当硬いはずだが、それ専用の道具でもあるのだろう、割とスムーズに作業が進んでいるように感じられる。

 大雑把にパーツを切り出したメイサは、より細かい造形作業に入る。余計な部分を切り落として、細かい部分は削って……、と、ユウシアの存在など忘れているかのように作業に集中している。

 さて、ユウシアは現在、作業を見学したいと言ったことを少し後悔していた。メイサが動くたびに揺れるのだ。たわわに実ったアレが、こう、ぷるんぷるんと。目をそらしてしまっているので、正直作業の様子など全く見れていない。

 そんなこんなで不毛な時間を大きく消費したユウシアであったが、加工の際に出ていた音がピタリと止んだことに気づき、そっと視線を戻す。

「……うん」

 完成したらしい黒い短剣をじっくりと検分したメイサは一つ頷くと立ち上がり、ユウシアの方へと近づいてくる。

 ところで。今まで全く触れなかったことだが、メイサは普通に美人である。更に、加工の邪魔になるからなのか個人の好みなのか、露出度が高い服を着ていて、その上、加工に集中していたためか少し汗をかいている。

 つまり、だ。

(エロい、何だろう、汗が谷間に入っていくところが特にエロ……いやいや、俺は何を……)

 そういうことである。その後、ユウシアは思った。アヤがいなくてよかったかもな、と。

 ……ちなみにこの瞬間、宿屋でハクと戯れていたアヤは、何やら不穏な気配を感じていたとか、いなかったとか……。

 いつの間にかすぐ目の前まで来ていたメイサは、そんなユウシアを不思議そうに見てから、手に持つ短剣を差し出す。

「とりあえず、これで完成だよ。あとは微調整をするから、何か違和感があったら教えてくれ」

「あぁ、うん、分かった」

 頷いたユウシアは受け取った短剣を軽く振ると、おもむろに道中になんとなく買っていたリンゴ(に似た果物)を取り出し、左手に乗せる。

 右手に持った短剣を、そのリンゴもどきめがけて一閃。

「……なるほど」

 ユウシアがそう呟いた直後、持っていたリンゴもどきが真ん中で綺麗に分断される。実はこのリンゴもどき、皮が結構硬い。それを綺麗に切れたので、切れ味には問題なし、ということだ。

 ユウシアは、短剣と一緒にリンゴもどきの半分をメイサに渡し、自分も残り半分を囓りながら要望を告げる。

「もう少し全体的に重くして欲しいのと、手元に重心が欲しい」

「削り出したものを重くしてとは、難しいことを言うね……金属でコーティングしてみようか……」

 ブツブツと呟きながら作業台に戻っていくメイサを見ながら、ユウシアはリンゴもどきの最後の一欠片を口の中に放り込んだ。


++++++++++


 微調整を繰り返すこと数回。

「……よし、完璧」

「よっし!」

 満足気に頷くユウシアを見て、メイサが思わずガッツポーズをする。何だかんだでユウシアは注文が多かったので、認められた達成感が大きかったのだ。

「ふぅ……さすがに疲れたから、投げナイフの方はまた後日でもいいかい?」

「もちろん。とりあえず、こいつの分の金は払うよ。いくら?」

 それにメイサは少し考えて答える。

「金貨二枚……かな」

「おぉ、さすがに結構取るな」

 メイサに告げられた金額に、ユウシアはそんなことを言いつつも、金貨を二枚普通に取り出す。

 ファナリアのほとんどの国の通貨は、石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、聖金貨の六種類に統一されている。それぞれ十枚で1つ上の硬貨に変化し、その価値は、国によって物価が違うので一概には言えないものの、とりあえず金貨が一枚あればふたり暮らしの夫婦が一年間、十分に暮らしていける程。聖金貨に至っては、平民では見ることすら難しいとされている。

 つまりこの短剣は、夫婦の生活二年分の価値があることになる。

「――でも!」

 そのまま金貨をメイサに渡そうとしたユウシアだったが、彼女の言葉に動きを止める。

「今回は素材が持ち込みだったし、こっちからはほとんどアタシの加工しかないからねぇ……アンタの注文に答えるために出した素材分を入れても、投げナイフの代金を含めて金貨一枚、ってところかね」

 それを聞いたユウシアは、少し考えるようにしたあと、結局そのまま金貨二枚をメイサの手に握らせる。

 不思議そうに首を傾げるメイサに、ユウシアは軽く笑って答える。

「俺も結構細かく注文しちゃったしな。チップ、ってことで」

「でもねぇ……」

 渋るメイサに苦笑しながら少し考えたユウシアは、いいことを思いついた、というように手を叩く。

「そうだ。メイサ、他人に魔力を譲渡出来るような魔石や魔導具アーティファクトを知らないか?」

「え? それなら、そんな魔導具アーティファクトの在庫があったと思うけど……」

「なら丁度いい。それ、いくら?」

「銀貨六枚だね」

 魔導具アーティファクトとしては安めだが、そこまで貴重な物でもないのだろう。

「決まりだな。それも含めて金貨二枚ってことでどうだ?」

 あの程度の働きは銀貨四枚には見合わないと思っているのか未だに不満気なメイサだったが、これ以上はユウシアも引かないと悟ったのか諦めたようにため息を吐いて金貨二枚を受け取る。

「それじゃあ、魔導具アーティファクトを取ってくるから少し待ってな」

「了解」

 思わぬところでアヤの魔力問題が解決し、ホクホク顔のユウシアであった。

 ……もうそろそろ事件が起きそうな予感(またしてもネタバレ)。

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